先日、iPhoneビジネス活用に関してリアルコムとソフトバンク社との提携を発表したところ多くの方からお問い合わせをいただいた。社内のキーマンの方がiPhoneを個人的に使っている事が多く、ビジネス活用の可能性を既に感じていたのだと思われる。ファーストりテーリングで1200台導入も決まりiPhoneビジネス活用の波が来ていることは間違いないが、企業にとってiPhoneは手段であっって目的ではない。iPhoneを活用してどんな経営課題を解決するのか、その本質について考えてみたい。
■1)真のワークスタイル変革
1つ目の企業にとっての目的は真のワークスタイル変革である。
外出が多いエグゼクティブや営業スタッフにとって隙間時間の活用は永遠のテーマであった。これまでも、モバイルPC、PDA、携帯電話等、さまざまなモバイルツールが試行されてきたが、想定した効果が出なかったケースが多い。
しかしiPhoneは本当にワークスタイルを変える可能性を秘めている。私個人も携帯電話をiPhoneにしてからめっきりパソコンを開かなくなった。パソコン上
でやっていた主な業務はメール処理とインターネットによる情報収集であり、この2つはPCを立ち上げるよりiPhoneで処理した方が圧倒的に早い。移動中等のちょっとした隙間時間でメールとネットを処理し、PCは腰を落ち着けた資料作成の場に変わった。結果としてトータルでの業務効率は格段に上がった。
メールとネットというナレッジワーカーがPCで行っている業務に特化し、PCよりも容易で軽快に利用できるというところがiPhoneが真のワークスタイル変革をもたらしているのだろう。
(また、これは恐ろしいことであるが、あまりにも簡単にメールが見れるので 深夜・休日でもついメールを見てしまい、24時間365日仕事をしている気がする。これだけでも、社員にiPhoneを配るROIは十分かもしれない。)
■2)PC非利用ユーザーの情報武装
もう一つの目的はPC非利用ユーザーの情報武装だ。
営業店・販売店現場は場所やリテラシの問題がありPC利用が進んでいない。結果、紙管理や手作業が依然として多い。そこで営業店・販売店に配布している携帯電話をiPhone化することで、PCによる電子化を通り越して一気にモバイル情報武装を実現する。
これは中国での携帯電話の普及に似ている。通常の先進国では、固定電話→携帯電話という流れをとったが、固定電話が普及していない状況で携帯電話という技術ができたため、固定電話をすっ飛ばして携帯電話が普及、今では世界一の携帯電話国家となった。
今、PCを利用していない職種がiPhoneによって一気に高度情報武装され、PCユーザーを追い抜くというシナリオは十分現実味がある。
■3)通信コスト最適化
しかし残念ながら、このご時世ワークスタイル変革だけでは投資決裁は通らない。
企業として目に見えるROIがない限り、IT投資は進みにくい。しかし実はiPhoneはコスト最適化のツールにもなりえる。
例えば、ある会社では営業スタッフに携帯電話とモバイルPC持たせていたが携帯電話代に加えてモバイルPCカード代がかかり、毎月1人2万円近いコストが発生していた。そこで携帯電話をiPhoneに切り替えると同時にモバイルPCカードを廃止、毎月の通信費は1人1万円近くまで低下した。また、携帯電話代を分析してみると、社内での通話が多くを占めていたため、iPhone同士の通話が無料ということもコストダウンに寄与した。
もう一度、モバイル通信費のムリ・ムダ・ムラをチェックしてみると、iPhoneがコストダウンのきっかけになることは十分あり得る。
■4)パソコンからの脱却
そして最後の本質はパソコンからの脱却である。
企業で配布・管理しているPCはデスクトップ・モバイルPCを含めかなりの数にのぼる。個々のPC毎にソフトウェアライセンス、ソフトウェアのアップデート、ハードウェア保守、ヘルプデスクのコストが発生しており、そのコストは年間1台あたり30万〜50万ともいわれている。またコストに加え常にセキュリティのリスクにもさらされている。
しかしながら、企業内PCの活用度を見ると必ずしも有効に活用しているとは言い難い。外出しがちなエグゼクティブや営業スタッフは、メールとネットくらいしかPCを使っていない。この程度の利用に見合う投資かどうかは甚だ疑問である。シンクライアントはこうした問題の解決策の一つではあるが、結局クライアント・サーバー双方に莫大な投資が必要なことには変わりない。
PCをあまり利用していない職種にはPCを配布せずiPhoneのみを配布する。オフィスには共用PCや持ち出し用モバイルPCを用意しておけば大抵の業務を済ませることはできる。
まず現在のPCがどの程度活用されているのか、投資に見合うROIを実現できているのかを確認することでiPhoneによる投資効率化の糸口が見えてくるに違いない。
以上、企業にとってiPhoneがなしうる4つの経営課題解決を挙げた。くれぐれもiPhone導入が自己目的化しないよう、自社の経営課題が何か、それはiPhoneでどう解決するのかを検討することをお勧めする。
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