このままだと日本企業は変革の流れから取り残される
ハリントン氏 スタンフォード大学や慶應義塾大学で研究に従事し、日本企業や外資系の企業で役員を務めてきました。2013年からアトラシアンで現職を務めています。アジャイルや多様性(ダイバシティ)の要素を取り入れ、働き方を変えていくことが次の変革につながると考えており、ソフトウェアを通じて実現しようとしています。
アトラシアンは2002年、オーストラリアのシドニーに設立され、現在は7カ国に10のオフィス、13万社の顧客を持ち、2500人以上の従業員がいます。われわれは「すべての偉業の陰には必ず優れたチームが存在する」と考えており、「あらゆるチームの可能性を解き放つ」ことがミッションです。NASDAQに上場しており、ティッカーシンボルを「TEAM」にしています。
松永氏 私はアクセンチュアや日本IBMなどでコンサルタントとしてのキャリアを積み、コンサルティングファームのメディアセクター統括するパートナーなどを経て、現在はメディア・デジタル事業のプロデューサーをしています。もともとは、プロのギターリストとして幅広く活動するなど、アーティスト出身であることが私の特徴です。来年からは、青山学院大学 地球社会共生学部の教授に就任しますので、教育やデジタルを軸に産官学が連携するようなプロジェクトを実践していく予定です。
松永氏 第4次産業革命やデジタルトランスフォーメーションなど、言葉はどうあれ、大きな変革期を迎えているのは間違いありません。残念ながら、多くの日本企業はその流れについていけていません。しかし、グローバルに目を向けるとイノベーションは珍しいものとしてではなく、ごく当たり前に求められるようになってきました。企業は、新たなものに投資しイノベーションを起こしていかなくてはなりません。
ここで重要なのは、特にITの位置付けの変化です。従来、ITはあくまでも「インフラ」であり、業務の効率化やバックオフィス的機能の補完的な要素が強かった。しかしながら、今やITが事業そのものであると言っても過言でないほど大きな存在になっています。イノベーティブなアイデアだけではなく、アイデアを元にITというツールを使ってすばやく「モノ」をつくらなくてはならなくなっています。これは、システムインテグレーションの名の下に、場合によっては数年の期間をかけてモノをつくってきた従来型の考え方と対局にあるのです。戦略から離れた情報システム部門管轄でシステムインテグレーターを選択しITを構築するような時代は終わっているのです。悪いことに、企業がその変化に気づいていません。一刻も早くITに投資しないと新しいサービス自体が立ち上がらないのに、テレビCMにお金をつぎ込んだりしている――これは危機的状況と言えますね。