対談 TECH.ASCII.jp編集長 大谷イビサ氏×ZDNet Japan編集長 國谷武史:クラウド時代へマインドセットを変えよ(前編)

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デジタルトランスフォーメーションの時代で勝ち残るためには、クラウドをはじめとするテクノロジーを最大限に活用しなければならない。そうした時代において、CIOは、IT部門は、どうあるべきなのか。長らくIT業界で記者活動に携わってきた2人の編集長に、今日の企業ITを取りまく状況を俯瞰してもらう。

モバイルとクラウドへの流れ

大谷角川アスキー総合研究所の大谷です。紙媒体のアスキーのネットワークやセキュリティ関係を経て、現在はエンタープライズITを中心としたWeb媒体に携わっています。かつては読者を情報システム部、特に専任ではなく兼任の担当者を対象としていました。しかし今は、情報システム部よりも、クラウドを使うエンジニアや現場のユーザーにフォーカスしています。

 クラウド時代となり、インフラがコモディティとなり簡単に調達できるようになったことで、その上にあるアプリケーションをPaaSやSaaSできちんと作ろう、使おうというふうに着眼点が変わってきています。つまり、業務の現場がITを主導して導入するという流れがここ数年確実にきています。こうした中、ユーザーが何を考えているか? 今後は“働き方”にフォーカスしていくのではないでしょうか。経営層からは「労働時間を短くしろ。生産性や売上は落とすな」と無茶ぶりされるなか、クラウドを使わなければ対応できなくなります。

國谷ZDNet編集長の國谷です。かつてエレクトロニクスの業界紙で家電流通の分野を担当していたころ、販売の中心が個人経営の店から量販店へとシフトし、業界構造が大きく変わる様子を目の当たりにしました。今のIT業界に起きているデジタル破壊にも通じる現象だったと思います。その後、放送技術分野も担当し、同様にアナログ放送からデジタル放送へと変革する動きを追いました。

 オンライン媒体に軸足を移してからは、エンタープライズIT分野を中心に10年近く取材を担当しています。最初はスマートフォンの業務利用でした。まだ業務用のPDA端末で店舗の在庫確認や保守現場でのマニュアルの参照といったちょっとした用途でしたが、この頃から本格的に業務で使おうとドラスティックな変化が起きていました。当初のモバイルはPCの代替といった感覚でしたが、業務で本格的に使うとなると、基幹系システムとどうつなぐか、ガバナンスやセキュリティ、ユーザーインターフェース、データのコントロールなどが考慮されるようになり、エンタープライズシステムの一翼を担う変遷を見てきました。

大谷90年代を知る業界関係者は、よく「Windows 95とインターネットで、ITは新しい世界が開けた」と言います。でも、最近はそれはちょっと違うかなと思っています。アップルを持ち上げるつもりはないですが、ぼくはiPhoneだと思います。PCは業務端末として当たり前でしたが、スマホはPCよりも大きな市場となり、今では業務端末にも使われています。この10年、モバイルとクラウドへの流れはすごいなと思います。

國谷2007年ごろに始まったモバイル端末を企業で使おうという動きでは、例えば、社外から社内システムにつなぐためのゲートウェイをどうするかといった話題がありました。IPSec VPN接続か、SSL VPN接続かといった具合ですね。企業でのモバイル普及に懐疑的な人もいるなかで、この分野を追いかけることはチャレンジングでした。今ではモバイルが普及し、業務からプライベートまで1人1台が当たり前になりました。スマホはデジタルテレビや冷蔵庫と違って普及のスピードが違います。家電だと10年近くかかっていたことが、スマホでは数年といった具合です。

大谷最近あるセミナーで聞いたのですが、交通機関では車両の破損箇所を画像で報告するアプリがあるそうです。かつてはデジカメで撮影し、パソコンにデータを吸い上げて、ネットにつなぎ、ファイルをアップロードしていたのが、今ではスマホで撮影したらすぐアップロードできる時代になりました。

 これまでだと現場にいる年配の作業員に操作方法を教えるのに苦労していましたが、「これならLINEで友達に写真を見せるのと同じでしょ」と言えば、「あ、そうだね」とすんなり受け入れてくれます。スマホとクラウドで業務システムが簡単、安く、早くできるようになっています。

マインドセットを変えられるか

國谷かつてIT部門でテクノロジーを生業としている人たちは、いわば職人でした。先に挙げた放送業界だと、カメラマンや映像編集者といった人たちですね。というのも、かつての映像制作はテープベースでしたが、デジタル化の中でファイルベースに変わり、ワークフローが大きく変わりました。テープの巻き戻しや早送りといった時系列の動作に慣れた人にとって、ファイルを操作する「感覚が分からない」と言っていたのが、今も印象に残っています。

大谷今はデジタルに対応した制作ツールを使いこなすのが必須ですよね。

國谷2011年に地上波のテレビ放送がアナログからデジタルへ切り替わる前後では、ベテランの技術者が「この波に自分はどうしたらいいのか分からない」と話していたのも印象的でした。当時は、インターネットによる通信と放送の融合はどうあるべきか、ということも言われました。プロフェッショナルが新しい技術に適応するときの苦労が伝わってきます。IT業界におけるモバイル化やクラウド化への対応にも共通すると感じています。

大谷クラウドによるマインドセットのシフトですね。エンタープライズITだと、サーバーの調達や運用管理のコストや時間を減らし、その分、クリエイティブなものに向けようという流れがあります。クラウドに最初に反応したのはスタートアップでした。もともとお金も、時間も、人材もいないからクラウドを使うしかなかった。マインドセットをエンタープライズIT部門の担当者が納得し変えられるかです。最近だとクラウドで運用管理に役立つサービスやマネージドサービスも出てきています。どうすればマインドセットを変えられるのでしょうか。

國谷例えば放送業界だと、番組が何十秒も止まれば事故として扱われ、監督する総務省から指導が入りますから、そのような事態を絶対に避けなくてはなりません。こう見ると、製造や交通もそうした極めて高い可用性を当たり前とする世界観です。そういうマインドが文化のように定着している環境で、クラウドのようなテクノロジーの変化に対してマインドセットを変えるのは容易ではありません。

大谷40~50代が腹落ちするかどうかがすごく重要だと思います。分かってはいるが、自分のなかで納得感がないから一歩踏みだすことができない人たちです。ただ一方で、クラウドのユーザーコミュニティなどでは、クラウドに向き合う自らの腹落ちを共有し、他の人に影響を与える人たちが、大きな役割を果たしています。

対談
TECH.ASCII.jp編集長 大谷イビサ氏×ZDNet Japan編集長 國谷武史
クラウド時代へマインドセットを変えよ後編
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