政府は、DX推進を積極的に後押しするべく「DX投資促進税制」を創設した。税額控除などを行うこの税制の適用期限は2023年3月までとなっており、早期にDX実現を求めていることがわかる。このような背景の中、組織の部署ごとにサイロ化し、また構造化されていない文書をデジタル化して活用すべきだと提唱するのが、ECMソリューションを提供するオープンテキストだ。同社のソリューションコンサルティング本部 リードソリューションコンサルタント 西野 寛史 氏に、DXを成功に導く文書管理のポイントについて聞いた。
DX投資促進税制の創設により、DX促進を国が強く後押し
オープンテキスト株式会社
ソリューションコンサルティング本部
リードソリューションコンサルタント
西野 寛史 氏
経産省が2020年12月に公表した「DXレポート2」では、95%の企業がDXに全く取り組んでいないか、取り組み始めた段階であることが示された。日本企業のDXの状況について西野氏は、別の調査結果を挙げ「デジタル活用の優先度は高いですが、あるリサーチ会社で行ったアンケート調査では、およそ半数はまだ実施されていないという実態が分かりました。また、実施されている企業の6割近くが全社規模で展開されていますので、DXは全社最適に向けて経営層のコミットメントはもちろん、全体的に取り組むべきものという共通認識はあるようです。そしてもう一つDXのトピックスとして令和3年度の税制改正と、その中で創設されたDX投資促進税制があります」と切り出した。
西野氏が上記で触れた「DX投資促進税制」は、DXの実現に必要なデジタル関連投資に対して、税額控除または特別償却30%を措置するもの。データ連携やクラウド技術の活用、情報処理推進機構が審査する「DX認定」の取得に加え、全社の意思決定に基づくもので、一定以上の生産性向上が見込めることなどが認定の条件となるが、一番のポイントは期限だ。適用終了は2023年3月とごく短期間の制度となっており、政府がDXを強く後押ししたい意思が表れていると言えるだろう。西野氏は、今年から日本のDXは確実に優先度がアップすると予測した。
直ちに行うべきDXは、文書(非構造化データ)のデジタル活用
経産省が掲げるDXの定義には、手段として「データとデジタル技術を活用」することと、目的として「競争上の優位性を確立」することが定義されていると西野氏は語る。そして、データといえば、基幹システムや会計システムなどのデータベースにある情報が思い浮かぶが、これらの情報は構造化され、整理されているデータであり、企業が持つデータはこれだけではないと続けた。
「企業全体が有する構造化データは、全体のわずか2割にすぎません。では残りの8割は何かというと、Excel、Word、PowerPoint、PDF、メールといった『文書』です。構造化されていない文書はまさに情報の宝庫です。文書のDXによって得られるものが多いと思っています」(西野氏)
各部門で作成、保存されている構造化されていない文書の管理は非効率で、データ連携なども難しい
文書は構造化されておらず、しかも組織内の各所に散在しているため管理や連携が非常に難しい。そこで、文書を有効活用するために活用したいのが、ECM(エンタープライズコンテンツ管理)分野のソリューションで、オープンテキストが提供している「OpenText Content Suite Platform(CSP)」はその代表格だ。
組織には、人事・財務・法務・販売・生産・サービスなどさまざまな部門がある。法務であれば、契約書、財務であれば財務帳票、人事なら従業員の個人情報、生産部門なら品質管理、サービスなら顧客対応など全く顔ぶれの違う文書がたくさん存在する。これを有効活用するために一元管理をしていこうというアプローチだ。西野氏は、文書の一元管理には、3つのハードルがあると指摘した。
1つ目のハードルは「遵法」。企業が扱う文書には各種法令や規則に則った保全・管理が求められる。国が決めた要件や、業界や自社のコンプライアンス要件によって保管する必要もある。最近では個人情報の取り扱いも厳しくなっており、単純にデジタル化するだけでなく、保管方法や廃棄までの期間など、正しく管理する必要がある。2つ目のハードルは「安全」。改ざんの防止や閲覧権限の設定、情報漏洩リスクの管理などの安全性を確保しなければならない。そして3つ目のハードルは「統制」だ。保管場所や運用ルールが確立されていないと、組織内での共有など有効活用がなされない。文書の取り扱いの標準化が求められる。
これらのハードルをクリアしながら一元管理していくには、それ相応の仕組みが必要になる。西野氏は「遵法・安全・統制を実現するには、一般的なファイルサーバーやクラウドストレージでは荷が重いと思います。そこで、ECMソリューションの活用につながります。オープンテキストは、この分野では老舗と言ってもよく、『Magic Quadrant for Content Services Platforms』にて14年連続リーダーに位置付けられています」と話す。
例えば、OpenText ECMソリューションには記録管理機能がある。GDPR(EU一般データ保護規則)には、個人情報の保管期限に加え、確かに廃棄したことを証明する義務もある。誰が閲覧し、手を加えたかなど監査ログを保管し、削除したことを証明できる必要がある。OpenText ECMソリューションは米国国防総省の記録管理の規格にも準拠しており、法的に情報を利用する際の情報保全のための改ざん防止機能や、文書へのアクセス制御もある。アクセスできる人の設定や、ダウンロードや印刷の制限のほか、スクリーンショットや画面撮影時にログイン者のIDの透かしが入るなど、極めて厳格な制限が可能だ。
文書の取り扱いの標準化という面でも抜かりはない。組織内で統制を効かせるため、文書の属性や構成、権限などを設定できるテンプレート機能がある。テンプレートから文書を生成した時点で統制された環境で作業ができる機能を備えている。