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SEMINAR REPORT ZDNet Japan Business Forum RISE with SAP on Azure (Powered by Intel)
次世代クラウドERPで”真のビジネス変革”を実現させる
ビジネス変革を推進するIT組織
~SAP ITのクラウドジャーニー

SAPが発表した新サービス「RISE with SAP」と、それを支える企業向けクラウド「Azure」を提供するマイクロソフト、強力プロセッサのXeonを持つインテルの3社が、長年のパートナーシップを基盤に、ERPを軸にしたビジネス変革に取り組んでいる。

3社の動きを伝えるオンラインセミナー「ZDNet Japan Business Forum RISE with SAP on Azure (Powered by Intel) --次世代クラウドERPで”真のビジネス変革”を実現させる」が8月27日に開催された。

ここでは、SAPジャパンのIT部門長を務める佐藤歩氏が登壇したセッション「ビジネス変革を推進するIT組織~SAP ITのクラウドジャーニー」をレポートする。SAPのIT部門は 25年以上にわたり、グローバルに集約されたコーポレート組織として、50カ国76国籍におよぶ、10万人以上の多様な「社内顧客」に対して、ITサービスを提供している。同社は、基幹業務をグローバルのシングルインスタンス運用している。

SAP ジャパン株式会社
IT部門長
佐藤 歩氏

SAPが目指す姿は「インテリジェントエンタープライズ」

SAPはクラウド変革に際して、組織名を「ITサービス」から、「インテリジェントエンタープライズソリューション(IES)」に変更した。SAPはそのパーパス(目的)としてDeliver & Run The Intelligent Enterpriseを掲げ、SAP自身のトランスフォーメーションを担い、新しいビジネスモデルへの変革を支援する役割を担っている。

佐藤氏はSAP自身が実現を目指す姿として「インテリジェントエンタープライズ」を挙げる。プロセスやプロダクトがシームレスに連携している状態を指す。SAP Business Technologyなど最新のITアーキテクチャを活用し、自動化やAIによるイノベーションを進めるものだ。アプリケーション上でのエンドツーエンドのプロセス、アナリティクスによるデータドリブン経営、従業員がデジタルワークプレイスにより、ITサービスを活用していく。

インテリジェントエンタープライズの概念図
インテリジェントエンタープライズの概念図

佐藤氏は、インテリジェントエンタープライズのアーキテクチャを図で説明する。自動化やAI、CI/CDを実現する開発ツールといった「モダンITアーキテクチャによるイノベーション」から始まり、その上の「アプリケーション」レイヤーではビジネスプロセスをエンドツーエンドで最適化する。リアルタイムデータを活用したデータドリブン経営も並行して進める。

その際に、従業員に利便性の高い環境を提供するために重要になるのが、このように充実させたIT環境を使いこなすためのフロントとなる「デジタルワークプレイスである。PCやモバイル端末を利用したミーティングルームなどを含めて、「私たちは全体を総称して本格的なインテリジェントエンタープライズと捉えている」と話している。

S/4HANAへの移行したSAP自身の経験から見えたこと

佐藤氏は、SAP自身が経験したエンタープライズアーキテクチャの移行について、詳しく解説した。20を超える異なるテクノロジー基板と個別対応というシステムを変えていくとう挑戦だった。

移行前のSAP社内システム
移行前のSAP社内システム

「SAPのITトランスフォーメーションは、アプリケーションのプロセスをエンドツーエンドで焼き直すことだった」と話す。2019年7月、社内のファイナンスシステムを「ERP ECC 6.0」から、クラウドベースのERPである「S4/HANA」へと移行した。

旧システムの課題は、マーケティング、セールス、サービス・サポート、支出管理、人事といった各部門のプロセスごとに別の対応アプリケーションが存在し、業務プロセスが最適化されていることだった。「複数のシステムがさまざまなプラットフォームで構成されており、データも個別に運用されていた。結果として、比較的“重い”システムを運用している状態だった」(佐藤氏)という。

S4/HANAへの移行後の図
S4/HANAへの移行後の図

新システムにおけるS4/HANAへの移行後は、プロセス全体を構成する箱の数(図の青い四角形)自体が減った。移行する際には、「以前のERP ECC 6.0のプロセスをそのまま移行させるのではなく、単純化するためにいかに発想を変えられるかに焦点を当ててもらった」と佐藤氏は振り返る。「いわゆるアウトオブボックスの考え方で臨んだ」という。プロセスを単純化することで、アプリケーションの構成自体を変更しやすくなる。複雑さを回避でき、さらに、新しいビジネスモデルに対する柔軟性、拡張性、俊敏性を高めることができる。

「このように、SAPでのトランスフォーメーションは、ビジネスとのアジャイル的協業が成功要因だった」(佐藤氏)

そして、佐藤氏は昨年から現在において取り組んでいる次のゴールとして目指している社内システム全体の俯瞰図を紹介した。かつて20以上のテクノロジー基盤、25以上のインフラ、異なるデータモデルとデータソースを、かつてはマルチクラウドで展開していた。

新システムでは、SAP Business Technology Platformを活用した新しいビジネスモデルへの対応を進める。さらに、SAPデータセンターとAzureへのハイブリットクラウドモデルへの移行も併せて進める考えだ。この2つの改革を推し進めると佐藤氏は述べている。

「かつてのマルチクラウド環境上では、SAPのデータセーターと複数のクラウドをまたいだデータ連係が必要になるといった複雑性が発生していた。新システムによる集約によってこれを解消し、より効率的な運用ができると考えている」(佐藤氏)

SAPのクラウドジャーニーは2012年に開始

講演では、SAPのクラブジャーニーをさかのぼると2012年にたどり着くとの紹介があった。Success FactorsやConcurといったクラウドカンパニーの買収を機に、パブリッククラウド形式で社内外に展開することになったからだ。

2番目のステップは、SAPクラウドプラットフォームを利用し、既存のオンプレミス環境上のシステムと、クラウド上に新たに展開したプラットフォームを連携させるという取り組みを実施した。

従業員の視点からすれば、1つのビジネスプロセスを完結するために複数のログインがあるというのは不便である。そこで、SAP Cloud Platformを活用することで、複数のシステムをまたがる利便性の低さを解消し、アプリケーション全体を使いやすいものへと変革した。

そして、3つ目となる現在のステップはAzureというIaaSへの移行である。2017年、初めてPoC(概念実証)を実施し、実際には2018年から移行している。

「過去3年間のAzure利用の経験から言うと自身のデータセンターを利用している場合とクラウドを活用する場合、システムの可用性という面では特に遜色はない」と佐藤氏。SAPでは顧客との契約の関係上、一部のデータを外部に預けられないという事情もあるが、それ以外の環境については、Azureが有力な選択肢だと感じているという。

以前は、4社のハイパースケーラーと自社のデータセンターをつないだマルチクラウド環境で運用を実施していたSAP。システム移行により、パブリッククラウドインフラをAzureに統一することで、さまざまなインフラを簡素化できた。

講演で佐藤氏は、移行についてさらに詳細に踏み込んだ。実ビジネスにおいて、ビジネスが拡大するに連れてサーバーの数も増えるのが実情であり、そのためIaaSが占める割合が大きくなってきているという。

既存のシステムをクラウドに移行させる場合の注意点として、初めから新しい環境を意識することが大事であること、クラウド化を機に従来運用していたアプリケーションやフレームワークを整理することを挙げる。

「IT部門はグランドルールを策定し、重複機能の削減を図った」(佐藤氏)

最後のポイントとして、佐藤氏はエンドユーザー向けにエンドツーエンドのモニタリングツールを構築したことにも触れた。それまで機能ごとにアプリケーションを監視していたが、「ユーザーにとって重要なのはサービスが使えるかどうか」であることを重視。ユーザー用に作成したサービスの可用性を、包括的に監視する仕組みも構築した。「例えるなら信号機のように、直感的でわかりやすい指標をイントラネット上に開示する」という。IT部門として、ユーザー目線のコミュニケーションを重視する動きとなった。

現在のところ、50%の社内システムがAzureベースになった。これらの一連の作業に関して、マイクロソフトのエンジニアなど関係者と効果的な話し合いを段階的に進めてきた。

なぜAzureが優れているのか

マルチクラウド環境からハイブリッド環境への移行を実施しているSAPが、インフラとしてAzureを選んだ理由について「SAPではもともとOffice 365、Active Directory、OneDrive、SharePointを活用してきた。そういったエンタープライズ環境との親和性を評価した」と指定している。

また、IaaSならではの俊敏性と柔軟性を、例を交えて説明する。2018年10月、第4半期クリスマスのちょうど2日前に、ドイツで顧客サポート用に使用するS4/HANAのランドスケープを用意する必要が生じたという。

「正月を挟んで6週間というタイトなスケジュールで、自社のデータセンター向けにハードウエアを購入するやり方では、発注、納品、キッティング、ネットワーク構成といった作業が絡むため、時間的に間に合わないことが分かった。そこで、Azure環境に実装する選択をした」(佐藤氏)

それにより、仮想マシンを中2日で構築し、その上で必要な設定をすることで、想定されたよりも早く必要な部門に環境を引き渡せた。「このように、クラウドはビジネスのアジリティ自体を向上できると考えている」。

コストについても効率化が期待できる。自社でデータセンターを用意すれば、初期の設備投資が大きくなってしまう。不確実性が高い将来に向けて、最初から大きな投資をしてしまうことがリスクにもなってくる。またAzureにはセキュリティーの確保やレポート作成の手間の軽減など解決策もあらかじめ提供されている。クラウドに移行することで、こうしたリスクを避けるというメリットを享受できるわけだ。

SAPのIT部門によるクラウド活用におけるメッセージ

最後に、佐藤氏は今後の予定を共有した。現在44のランドスケープがAzureに移行済みであり、24が移行プロセス中だ。さらに、13のランドスケープがパイプライン上に控えている。まとめとして、SAPのIT部門の取り組みとして、佐藤氏は以下の提言を残した。「カスタマーサクセスにフォーカスし、そのためにクラウドが重要になる」ことを、一貫したコンセプトだとしている。

  • ITトランスフォーメーションはビジネスの変革と並走するものであり、ビジネスとの連携がカギ
  • インテリジェントエンタープライズはプロセスやプロダクトがシームレスに統合している状態を目指す
  • エンドツーエンドのプロセスに対し、各プロセスがどう変革できるかを考える。システムの視線ではなく利用者である社内顧客の視点が重要
  • エンドツーエンドでサービスの可用性が可視化されることが、顧客体験の向上に寄与する
  • クラウドを有効活用することによって柔軟性収益性が増す。IT部門が新たなビジネス価値の創造に貢献できる
提供:日本マイクロソフト株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2021年12月31日
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