海外に逆襲するソフトウェア企業--サイボウズ「情報共有ソフトなら米国勢に勝てる」

インタビュー:西田隆一(編集部)文:長野弘子 2005年07月28日 20時18分

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 日本から海外進出を目指したソフトウェア企業は複数あるが、そのほとんどが失敗に終わっている。サイボウズ株式会社もそのうちの1社だ。

 だが失敗を糧に、同社は再び海外市場への進出を異なる方法で試みている。100%子会社として研究開発を専門に行う子会社「サイボウズ・ラボ」を8月に設立し、世界標準となるソフトウェアの開発を目指すことを7月25日に発表している。成果物はフリーソフトウェア・オープンソースソフトウェア(FLOSS)として提供する計画も立てている。

 海外に進出した際に学んだこと、また失敗の要因は何だったのか、ラボを中心とした新たな海外戦略とは何なのか。同社代表取締役社長の青野慶久氏、グループウェアソフト「サイボウズ Office」などの開発を担当し、ラボの代表取締役社長に就任する畑慎也氏(サイボウズ最高技術責任者)に聞いた。

--米国法人を設立した時の状況を教えてください。

青野:現地法人を設立したのは4年前の2001年5月でした。事業内容は日本で成功したビジネスモデルを踏襲し、米国に限定してグループウェアをダウンロード販売するというものです。売り上げの伸び悩みが続いたため、2年前から次第に日本への業務移管を進め、今年7月に正式に会社を清算することになったのです。

「日本と米国では情報共有の考え方が違う」青野慶久社長

 売り上げが伸びなかった原因としては、日本ではグループウェアが注目された時期に我々の製品が登場しましたが、米国ではグループウェアサーバ「Microsoft Exchange」が普及してしまった段階であり、市場に“向かい風”が吹いていたことが挙げられます。また、日本では“反ロータス”や“反マイクロソフト”という風潮があり、「高くて使いにくいでしょう?」と切り出すことで、ユーザーの潜在的な不満を聞き出すことができました。しかし、米国ではマイクロソフトはむしろ自国を代表する企業として応援されており、潜在的な不満があまりなかったことも大きかったですね。

 さらに、米国では個人主義が強いので製品仕様が個人を前提に作られているものが多いという、情報共有に対する考えの相違点がありました。

--2005年1月に、英語、日本語、中国語、スペイン語、ドイツ語など10言語に対応した国際版グループウェア「Cybozu share360」を発売されています。これは海外ユーザーの要望を取り入れて海外で開発されたものですよね。多言語対応ソフトはやはり海外市場を強く意識したものですか。

青野:そうです。ほぼ毎月米国法人へ行き、新たな挑戦をやろうということで現地で開発したのが、Officeシリーズの国際版となるshare360です。日本でのグループウェアは中小企業はもちろん、大企業の部門でも多く使われ、平均ユーザー数が60人前後です。それに対してShare360の場合、海外ではほとんど中小企業で使われていて、平均ユーザー数は30人前後なのです。日本よりも小規模な組織向けにニーズがあるのを確信しました。

 share360の広告は、発売されてから最初の3カ月、中国語やドイツ語でアドワーズ広告を出しました。予算的にはテストマーケティング程度でしたが、それでも反応は結構ありました。海外での新規顧客のほとんどは、アドワーズでshare360を知ったんです。

 share360の成果を通して、新たに2つの点を考えさせられました。まず、質の高い製品であれば世界中で製品が売れるので、昔ながらの方法、つまり米国に法人を置く必要がないのではないかという点です。また“向かい風”が吹いている製品を無理に売る必要はないので、グループウェアに特化する必要もないのではないかという点です。

 こうした観点から、米国法人のオペレーションは閉鎖して、日本から発信していく方向へシフトしたのです。また、share360の販売だけでは世界シェア拡大へのペースは遅いので、もっと違う方法、もっと面白い道は何かを考えました。

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