企業のクラウド活用 第2回:クラウドで攻めと守りの融合も。企業のIT投資意識にも変化

ZDNet Japan Ad Special 2018年09月19日 12時00分

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[PR]企業のクラウド活用は次なるステージへ“攻めのIT経営”でクラウドはいかなる武器となるか?

 クラウドを利用したコスト削減や効率化の取り組みが国内企業でも広がる一方、イノベーションによって新たな付加価値の創出を目指す攻めのITの領域でもクラウドの活用が進もうとしている。それに挑む経営者やIT部門は、クラウドの価値をどう捉え、どのようなアプローチで企業経営やIT戦略に取り込んでいくべきか。ITアナリストとしてさまざまな業界の企業にIT活用やIT投資に関する助言を行う一方、「攻めのIT経営銘柄」の選定委員を務めるなど、企業のIT活用やIT投資の動向に詳しいアイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリストの内山悟志氏に聞く。

クラウドはコスト削減、生産性向上だけの道具ではない

──前回、日本企業でも基幹系システムのクラウドシフトが進みつつあると伺いました。クラウドは、もはや企業にとっては使うのが当たり前、必須のビジネスインフラになったと言えるでしょうか?

アイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリストの内山悟志氏
アイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリストの内山悟志氏

内山氏 クラウドを全社アーキテクチャの第一の選択肢とする企業も出てきていますが、どの企業にとっても最優先の選択肢になったという段階ではなく、その点では日本企業は欧米企業に遅れをとっているかもしれません。クラウドを最優先にしつつも、それが難しい事情がある場合にはやむなくオンプレミスを選択するという方針を掲げている企業は多いと思います。

 これに関して気になるのは、実際の案件では何とでも理由を付けられるため、結果としてオンプレミスを選択するケースが少なからずあるのではないかということです。これについては意識啓発を続けなければいけないと思っています。

──どのような意識啓発でしょうか?

内山氏 クラウドに対して、コスト削減や生産性向上の道具という認識を持つだけではダメだということです。

 我が国では、ほんの数年前まで、ITはコスト削減や生産性向上の道具であるという認識が主流でした。そのため、クラウドシフトを掲げる際にも、その理由として「クラウドなら、より多くのコストを削減できる、生産性や効率性を高められる」と言わなければ通りませんでした。

 しかし、経済産業省が進める「イノベーション100」などの取り組みの効果もあり、ITはコスト削減や生産性向上だけの道具ではないという認識が経営層の間にもようやく広まりつつあります。また最近、人工知能(AI)やRPA(Robotic Process Automation)、IoT(Internet of Things)といった新たなIT活用に注目が集まり始めたことで、「ITをうまく使えば、ビジネスそのものを変えられる」という認識も芽生えつつあります。それらと合わせて、クラウドについても「コスト削減や生産性向上の手段としてだけでなく、もっと積極的に使えるものだ」という意識が広がりつつある段階です。この認識をもっと浸透させていかなければなりません。

「ROIでは見ない」──企業のIT投資管理も変わろうとしている

──先ほど、「理由を付けてオンプレミスを選択するケースが少なくない」と指摘されましたが、その背景にはどのような事情があるのでしょうか?

内山氏 大きく2つあると思います。1つは、IT部門が慣れ親しんだやり方を踏襲したいと考え、保守的な態度をとっていること。もう1つは、事業部門のユーザーが非常に細かなカスタム要件を出してくるため、クラウドでは対応しきれず、結果的に作り込むというケースです。

──そうした選択が、後になって企業の足かせとなってしまうこともありそうです。

内山氏 確かに、5年間のスパンで費用対効果を評価したら、クラウドがオンプレミスに負けるケースもあります。本来なら、そこで判断すべきではないのですが、これまでのIT投資ではコスト削減が優先されてきたため、保守的な選択をせざるをえないこともあるのでしょう。

 そのような状況を変えていくために、いくつかの企業ではIT投資管理のあり方を見直すプロジェクトが動き始めています。従来の判断基準や判断プロセスではイノベーションへの投資がやりづらいことに気づき、いわゆるROI(Return On Investment:投資対効果)の考え方を捨てるというか、振り分けていますね。従来型のIT投資に関してはこれまでどおりROIでしっかり見ていこう、ただしイノベーションへの投資は成功するかどうかが未知数であり、最初のひと転がりをやってみないことには何もわからないので、ROIでは見ないという管理をしなければいけない。

 そのことに気付いた企業が、IT投資の評価ルールを変え始めました。そんな取り組みが一部の企業でようやく始まったという段階であり、まだ多くの経営者は十分に理解できていないのです。ほとんどの企業では、この案件はどちらでやればよいのか、従来のROIで見るべきか、それともリスクを取った投資と見るべきかを判断する振り分けの方法も確立されていない状況だと思います。

クラウドが攻めと守りの融合を可能にする

──従来型のIT投資を守りだとすれば、攻めと守りが重なるようなIT領域もありますね。


内山氏 例えば、ERPに蓄積したデータをSoE(Systems of Engagement)のシステムに取り込み、ビジネスアナリティクやデジタルマーケティングなどで活用してビジネスを拡大するといったケースですね。クラウドは、まさにそうしたSoR(Systems of Record)とSoEの融合を進めやすいテクノロジの1つだと思います。今後、ERPをはじめとする業務システムは、各機能をマイクロサービス化してAPIを介して連携させるアーキテクチャに変わっていくでしょうし、ERPそのものをIaaS上に置いたり、あるいはSaaSに移行したりといったかたちでクラウド上に移っていくでしょう。

 このようにクラウドシフトが進むと、これまで自社内で閉じていたデータを、クラウド上のさまざまなサービスで活用したり、クラウドを介してグループ企業や取引先と連携させてサプライチェーンを強化・拡大したり、サプライチェーンを超えた企業間連携で活用したりすることが容易になります。

 いずれにせよ、これからは1社で完結したビジネスモデルは成り立ちにくくなり、他社といかに柔軟かつ迅速に連携・協業していくかが経営課題の1つになるはずです。従来のSoRのシステムが支えてきた既存事業の領域に関しても、他社とつながることによる優位性がより重要になるでしょう。そうなったときには、オンプレミスのシステムにしかデータがないことが大きな足かせになる可能性がありますし、逆に頑張ってクラウドシフトを果たした企業は、「あのとき、勇気を出して進めておいてよかったね」となるかもしれません。

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