講演:プラスの組織と「文化カイゼン」のためのアプローチ ~「ウルトラ帳票文化」を乗り越えるには~

ZDNET Japan Ad Special

2019-11-26 16:00

[PR]ZDNet Japanにて開催されたAWSセミナー2019の全4回中、第1回目の講演レポート。「働き方改革」をテーマに登壇者が知見を語った。

文具、オフィス家具、流通、物流サービスを展開するプラスは、アマゾン ウェブ サービス(AWS)のさまざまな機能を活用して、情報共有、業務の効率化、自動化を推進している。4年前から取り組んできた業務改善活動では、仮想デスクトップサービス「Amazon WorkSpaces」にクラウドのツール、サービスを組み合わせて活用することで、作業時間の大幅な削減に成功した。同社はどのように業務改善活動を進めてきたのか。ここでは同社の取り組みをレポートする。

社内に存在するシステムの約97%でAWSを活用

 「新しい価値で、新しい満足を。」を企業理念に、文具、オフィス家具、流通、物流サービスなどを展開するプラス。組織は、文具事業を担うステーショナリーカンパニー、オフィス家具を担うファニチャーカンパニー、流通事業でBtoB市場を担うジョインテックスカンパニー、流通事業でBtoC市場を担うリテールサポートカンパニーで構成され、連結売上高は1,772億円、連結従業員数は5,558名(いずれも2018年12月)を数える。社内には約200のシステムが存在しており、そのうちの約97%がAWSで稼働している。コンタクトセンターのCTIに「Amazon Connect」を採用しているほか、ジョインテックスカンパニーの社員約500名のうち460名に「Amazon WorkSpaces」を展開するなど、AWSの新サービスも積極的に活用してきた。そんなプラスのインフラ構築・運用の取り組みをリードしているのがジョインテックスカンパニー デジタル・イノベーション推進部 副部長の山口善生氏だ。「現在は社内システムの内製化に取り組み、AWSの機能を活用しながら、サーバレス中心でシステム構築を推進しています。しかし4年前は、ドキュメントや業務データが部署・支社単位でバラバラに管理されていたり、業務システムが社外から利用できなかったりと多くの問題を抱えていました。定型的な帳票を手間暇かけて作成する『ウルトラ帳票文化』でもありました」(山口氏)。

 まずは働く場所と考え方を変える必要があると感じた山口氏は、無駄な業務の削減や自動化を進め、場所を問わずに働ける環境の整備に取り組んだ。そこで活用したのがAWSだった。

クラウドを活用した業務改善に取り組む

 大手SIerでインフラエンジニアとアプリケーションエンジニアとしてのキャリアのある山口氏は、プラスではテクノロジードリブンで新しい価値を生むことをミッションの1つにしている。山口氏がAWSを使って取り組んだ業務改善は大きく3つある。1つめは、社内SNSを使って情報と業務の共有が可能な「公開ファイルストレージ」の提供。2つめは社外からシステムを利用できるようにするAmazon WorkSpacesの採用。3つめは、クラウド環境でデータウェアハウスやRPA※ 1 を連動させた「帳票・データ作成の自動化」だ。

 1つめの公開ファイルストレージは、誰かがデータを共有したいと思ったら、ファイル公開用のWebサイトにデータをアップロードするだけで済むというものだ。アップロードされると社内のディレクトリサービス(LDAP)と連携して、必要な人に自動的にファイルが公開され、公開されたという情報はSNSを通じて自動的に通知される(情報通知にはAWS LambdaやAmazon API Gatewayを利用)。 

 2つめのAmazon WorkSpaces採用の最初の目的は、業務システムに社外からアクセスすることにあった。当時の業務システムは、社外のグローバルIPアドレスからのアクセスができなかったため、Amazon WorkSpacesとNATゲートウェイを経由させることで解決を図った。

 3つめの帳票・データ作成の自動化は、帳票作成の定型作業を自動化したものだ。当時は帳票や管理データを作成するために、データベースからデータをダウンロードするのに日々一定の負荷をかけていた。そこでデータベースから必要なデータをデータウェアハウスサービスの「Amazon Redshift」に格納し、RPAでETLツール※2 を操作することで、帳票作成を自動化し作業時間がゼロになった。

業務効率化だけでなく「働き方改革」も実現

 これら3つの取り組みは、業務のムダを削減するだけでなく、働き方を大きく改善することにつながった。まず、公開ファイルストレージによって、データや業務内容が簡単に関係者・働く場所が違う同業者と共有できるようになった。「本来やらなくていい仕事が減り、時間短縮とともに情報の共有が進みました。ファイルをアップロードするだけでいいので、業務のなかで自然にシステムが使われて、活用が進んでいます」(山口氏)。

 また、Amazon WorkSpacesの採用により、どこからでも自分のデスクトップ環境に接続できるため、場所を選ばずに業務ができるようになった。直行直帰が増えたことで、残業時間の大幅な削減に成功した。さらに、Amazon WorkSpacesが出力する詳細ログを使って人事部門が従業員の業務時間を把握することや、災害時に自宅やカフェで作業を行うことで事業継続性を高めることにもつながっている。「デスクトップ環境の動作が不安定になったときのために、ユーザーが自分で再起動できるようにセルフメンテナンスシステムを開発して提供しています」(山口氏)。

 帳票・データ作成を自動化した効果は、さまざまな面で現れている。これは、自動化が全社を巻き込んだ業務改善プロジェクトとして推進されたためだ。まず業務のムダを各自が認識できるよう「ムダ取りワークショップ」を実施。ワークショップ終了後も人事によるフォローアップ、部門長による進捗確認など、人の気持ちに沿った活動を展開した。こうした取り組みにより、帳票・データ作成にかかっていた時間は0時間に削減。すべての業務をシステム化することにより大幅な削減効果を得られた。「削減した時間を使ってAmazon Redshiftを使いこなすなど、これまでできなかった分析業務を回せるようになりました」(山口氏)。

大事なのは「人に寄り添う気持ちを持つこと」

 自動化を進める中で、RPAの活用も進んだ。定型作業は、帳票やデータ作成だけでなく、さまざまな部署に存在していた。ログからExcelへのデータ転記や、外部のWebサイトから情報をコピーしてリストを作成する作業、FAXの文字データ化などだ。これらについても各月大幅な業務量があったため、それらをRPAで処理できるようにした。さらにAmazon WorkSpaces上でRPAを動作させることで、リモートからメンテナンスができるようになるなど運用管理を効率化できる。また、起動させたままにしたり、クラッシュしたときにすぐにリブートしたりできることもメリットだ。さらに、ハードウェアの老朽化対応としても効果的だ。

 こうした業務改善はシステム導入だけでは進まず、企業文化にまで踏み込む必要がでてくる。山口氏は「文化を変えるのは大変です。そんななかカギになるのは人です。人に寄り添う気持ちを持つことで大きな成果が挙げられると思っています」と話す。今後も、AWSを活用しながら、さまざまな取り組みを進めていく構えだ。

Amazon WorkSpacesで動作させることによりRPAの運用管理を効率化 Amazon WorkSpacesで動作させることによりRPAの運用管理を効率化
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※1:Robotic Process Automationの略。定型業務をソフトウェア型のロボットが代行・自動化する概念。

※2:データベースからデータを抽出(Extract)、必要な形に変換(Transform)、データウェアハウスへ格納(Load)する一連のプロセスを実行するツール。

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