物流、製造業界の先行事例に学ぶ「データ活用」への取り組みと実際の効果 ZDNet Japan エンタープライズデータ活用セミナー

2020-11-09 16:00

[PR]企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現していく上で「データの活用」は重要な要素です。既にデータ活用から具体的な価値を生み出すことに成功している企業では、どのように取り組みを進め、どのような変化が起こっているのでしょうか。

企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現していく上で「データの活用」は重要な要素です。多くの企業がそれを認識し、データ活用に向けた取り組みを進めている一方、現時点ではそれが具体的な成果につながっているケースは多くありません。では、既にデータ活用から具体的な価値を生み出すことに成功している企業では、どのように取り組みを進め、どのような変化が起こっているのでしょうか。

2020年10月に、ドーモと朝日インタラクティブの共催で開催された「ZDNet Japanエンタープライズデータ活用セミナー 実践から考える、データ活用とその先に広がるビジネスの未来」と題されたオンラインセミナーでは、「株式会社日立物流」と「敷島製パン株式会社」におけるデータ活用の取り組みが紹介されました。

「Start Small, Learn Fast」で蓄積した成果とノウハウを顧客にもシェア-日立物流

 3PL事業を軸に、ビジネスに必要不可欠な「物流インフラ」の一角をグローバルで支える日立物流。同社は、2018年に発表したビジネスコンセプト「LOGISTEED」のもと、業種・業界の垣根を越えた協創を通じて、従来の「物流」の枠にとどまらない、新たな領域でのイノベーション実現を目指しています。「データ活用を加速する仕組み作り」と題し、同社におけるデータ活用について講演を行ったのは、日立物流、IT戦略本部副本部長兼デジタルビジネス推進部長兼DX・イノベーション部担当部長の佐野直人氏です。

株式会社日立物流 IT戦略本部副本部長兼デジタルビジネス推進部長兼DX・イノベーション部担当部長 佐野直人氏
株式会社日立物流
IT戦略本部副本部長兼デジタルビジネス推進部長兼DX・イノベーション部担当部長
佐野直人氏

 ビジネスの外部要因、内部要因が特に目まぐるしく変化するロジスティクス業界において、どのような状況であっても、確実に荷物を届けられる体制を作ることは物流を担う企業にとって大きな課題です。サプライチェーンのデジタル化と可視化、そのデータ共有を通じて、変化への適応力と、不測の事態が起こった場合の回復力を高めていくことは懸案となっています。

 日立物流では、具体的な取り組みとして、2017年から「データ基盤トライアルプロジェクト」を実施。その取り組みの中で「データを自動的に収集・クレンジングして、常にデータを利用できる状態に維持するフレームワークやデータアーキテクトの必要性などを学んだ」(佐野氏)と言います。また、データ活用の進め方としては、企業としてのビジョンを核にしつつ、小さく始めて案件ごとに機能の改修・拡張やスキル向上を図る「Think Big, Start Small, Learn Fast」が適していると感じ、現在もそれを継続しています。

 同社におけるデータ活用の基盤は「デジタル事業基盤」と呼ばれており、複数の事業系システムとの連携、データ蓄積、分析・プレゼンテーションを行う機能と、基盤全体の管理を行う機能から構成されています。具体的なソリューションとしては、システム連携/データ抽出/クレンジング/データ管理を行う部分については、同社が基幹系システムに採用しているSAPとの連携に優れたインフォマティカを採用。集計や予測分析、プレゼンテーションを行う部分には「ノンプログラミングで高い生産性を発揮でき、プレゼンテーション機能が特に優秀」と評価したドーモを採用して構築されています。


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 また、データ活用を推進するための「人材育成」も並行して進めています。ビジネス視点でデータ活用の目標を明確にし、提案や要件定義を行う「ビジネスアナリスト」、技術面でそれを具体化していく「データアーキテクト」や「データアナリスト」、より高度な分析やAI(人工知能)のような技術の活用を支援する「データサイエンティスト」といった人材を、社内外のリソースを活用しながら拡充しています。

 デジタル事業基盤によるDXプロジェクトの具体的な成果としては「物流センター運用の改革」と「お客様のサプライチェーン可視化」が紹介されました。「物流センター運用」においては、KPI項目を可視化した「ダッシュボード」を展開し、物流センターにおける「倉庫管理業務」の改善を実現しています。また、各物流センター間、現場と経営層の間でリアルタイムに同じ情報を共有することで、問題の早期発見と解決、戦略策定などにも活用しています。

 「様々な業種のお客様の製品を管理している倉庫管理システム等から得られたデータを、1つのデータモデルに標準化し、業種ごとに7つのパターンで可視化・分析することで、現場における業務改善のPDCAサイクルの実施を支援しています。同時にデータの収集や集計は全て自動化して事務作業を削減しています。このダッシュボードに基づき、作業員の投入過多の抑制、ピッキング工数の削減、補充工数の削減、事務の効率化、意思決定支援などを通じ、1つの物流センター当たり、年間で数千万円のコスト削減効果が見込まれています。将来的には、管理会計、事業系、労働環境、CO2排出量などの環境に関するデータなどを全て連携していくことで、高度な社会ニーズに適応した生産性の高いセンター運営の支援を目指したいと考えています」(佐野氏)


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 もう一つの事例である「お客様のサプライチェーン可視化」は、日立物流が構築したデジタル事業基盤や、物流領域におけるデータ活用のノウハウを、同社の顧客が利用しているサプライチェーン全体に適用する取り組みで、「SCDOS」(Supply Chain Design & Optimization Services)と呼ばれています。顧客が利用している物流インフラは、日立物流が提供しているものだけに限りません。顧客企業が構築しているサプライチェーン全体にサブスクリプション型でデジタル事業基盤を提供し、データの可視化、分析、シミュレーションのサービスを適応することで、顧客により高い価値を提供するという試みになっています。


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生産管理領域からスタートしたデータ活用を段階的に拡大-敷島製パン

 愛知県名古屋市に本社を置き、「Pasco」のブランドで広く知られる敷島製パンは、2020年に創業100周年を迎えたパン・和洋菓子製造販売の老舗です。中部・西日本地区に6カ所、東日本地区に4カ所の工場を持つ同社では「生産管理」の領域をはじめとして、全社規模でのデータ活用を推進しています。

 敷島製パンで原価低減・革新部のマネージャーを務める安井慎二氏は「私も所属していた労務改善プロジェクトチームの中で、これまで手間がかかっていた、生産現場での作業時間分析資料を簡単に作成する仕組みができないかを検討したのが、データ活用への取り組みを本格的に進めるきっかけでした」と話します。その当時、システム部門においても、次世代を見据えた新たなBI(ビジネスインテリジェンス)環境の構築を模索しており、同社では新たなデータ活用基盤の本格的な検討を始めます。

 「ツールの検討を進める中で、われわれが普段、Excelで集計分析していたデータをドーモの担当者に渡したところ、目当ての資料が簡単に出力されました。まずは、作業時間分析資料の作成について、DomoでPoC(概念実証)を実施することにしました」(安井氏)

敷島製パン株式会社 生産本部 原価低減・革新部のマネージャー 安井慎二氏
敷島製パン株式会社
生産本部 原価低減・革新部のマネージャー
安井慎二氏

 このPoCは生産部門で2018年に実施されました。結果が良好だったことから、同社ではDomoの本格導入を決定します。翌年の2019年には、Domo上で「作業時間分析資料作成」「工場生産日報ダッシュボード」を作成。2020年には、展開範囲を営業部門にも拡大し「売上管理ダッシュボード」を作成するなど、現在も段階的に活用領域を広げています。

 生産部門におけるDomoでのデータ活用は、主に工場において「原料出庫、開梱、清掃、事務作業、会議といった、ライン業務以外の時間管理や配置人員が適正かを確認することが難しい」という課題の解決に寄与しています。同社では以前、生産管理、勤怠管理のシステムから個別に抽出したデータを、担当者がExcelに取り込んで加工集計していました。手間や時間がかかり、可視化される結果は静的なものでした。このプロセスとダッシュボードの生成までをDomoで自動化することにより、曜日や時間帯といった時系列や、ライン単位や工場単位といった、個々のユーザーにとって必要な切り口で、実績を集計、比較することが容易になりました。これにより、当初の想定と実績との差異や、その原因となっている課題が、以前よりも分かりやすくなったと言います。

 「例を挙げると、残業時間の削減が想定通りに進んでいない現場では、翌日の準備に当たる間接作業を、ライン業務の終了後にまとめてやる傾向があることが分かりました。作業時間実績を可視化することで、直接作業の各工程間にある空き時間を見つけ、そこで可能な間接作業を行うことで、状況を改善することができるようになりました」(安井氏)


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 もう一つの「工場生産日報ダッシュボード」は、それぞれの工場におけるタイムリーな課題解決や意思決定を支援するものになっています。同社において、生産管理システムの集計結果は生産日翌日の締め後に確定していますが、従来、実績レポートはその2日後に配信される体制になっていました。タイムラグが出てしまう背景には、国内10カ所にある工場で、それぞれに生産システム内のデータを加工し、メールで配信するプロセスを、担当者が手作業で行っていたことがありました。この取り組みでは、全工場でのデータ集計と加工、レポートの配信をDomoによって自動化しました。工場単位で作成された最新のダッシュボードは、各工場の役職者に定時配信されます。このダッシュボードの作成に当たっては「算出する指標は全社で統一した上で重要なもののみに絞り、担当者が見るべき数値を必ずチェックできるような可視化方法を工夫した」(安井氏)と言います。


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 これらの取り組みは、生産管理の領域に良い変化を起こしています。利用者からは「工場ごとの工数削減状況や異常値が分かりやすくなった」「レポートで問題のある数値が出ている場合には、その内容を事前に調査し、ミーティングで指摘される前に報告できる体制が作れた」「取り組むべき内容の優先順位が明確になった」といったポジティブなフィードバックが得られていると言います。

 同社では今後、Domoによるデータ活用基盤の適用領域を、生産部門から営業部門、さらにはマーケティングへと拡大していく意向です。

 「生産領域では、労務管理、作業者スキルの管理といった分野にデータを活用することに加え、営業部門での売上状況の可視化、ソーシャルデータから消費者の評価やニーズを製品に反映するマーケティング領域での活用なども検討しています。Domoをさらに深く使い込むことで、データ活用からより多くの効果を得られる状況を作っていきたいですね」(安井氏)

先進2社が感じた「数字からは分かりにくいデータ活用の価値」とは?

 セミナーの最後には、事例セッションに登壇した日立物流の佐野氏、敷島製パンの安井氏に、ドーモでマーケティングディレクターを務める田尻美和子氏を交えて「データ活用の本当の価値とは何か? 数字だけでは見えないビジネスへの影響」と題した鼎談セッションが行われました。

 社会状況やビジネス環境の変化が早い時代において、IT活用による「業務のデジタル化」の推進は必須とされてきました。また、2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大が、企業に対してさらに大きな状況変化への適応を迫りました。こうした状況下で、従業員の安全を守りながら、競争力を維持していくために「AI、ロボット、IoTといった最新のテクノロジーを活用していくこと」「デジタル化によって得られたデータを可視化、共有し、現在の状況把握と将来を見据えた対応を的確に行う体制を作ること」が今後ますます重要になっていく点について、佐野氏と安井氏の見解は共通しています。

 データ活用基盤のソリューションを提供する立場から、ドーモの田尻氏は「今回のコロナ禍のような事態の中でも、以前からデータ活用を進めていたお客様は、従来と違う視点でデータを使い、従業員のリモートワークをサポートしたり、仕入れ状況の変化に対応する方法を検討したりといった取り組みを即座に進められている点に驚きました。社会的に大きな変化があったことで、お客様の『データを使って何をしたいのか』という視点も少なからず変わったように感じています」と話しました。

 「データ活用の取り組みを通じて、企業に起こった変化」について、日立物流の佐野氏は「営業や現場担当者の意識の変化」を挙げます。

 「一番大きく変わったのは営業部門です。われわれは3PLとして、お客様に物流のソリューションを提供していますが、これまで、お客様と同じデータを見ながら、効果的な改善を提案するということが、実は十分にはできていなかったのかもしれません。現在では、デジタルビジネス基盤を通じて、そうしたことが可能になっており、お客様からの担当者に対する信頼度も向上しています。また、改善のために行った施策の結果が、すぐにフィードバックされることで、現場でも改善の意欲が高まってきています。同じデータを見ているお客様側からの提案もあり、互いに協力して改善に取り組んでいくための有意義なディスカッションができるようになっています」(佐野氏)

 敷島製パンの安井氏は「データを見て考える風土が社内に作られ始めている」ことを挙げました。

 「仕事をしていく上で、それぞれの立場から『データ』を見て、そこから課題を発見したり、解決策を探ったりするという姿勢が、広く根付き始めているように感じます。身近にあるデータをどのように組み合わせると、どんなことが可能になるかを考えることも多くなっています。当社の場合、データを扱う側の人数は比較的絞って、その結果をアクションに生かしてほしいユーザーに対し、分かりやすい形で提供することに当初から注力しました。例えば、日報ダッシュボードについては、単に集計結果を見せるだけではなく、“この指標については、当日と今月の状況を見比べながら、こういう視点で見ると良いのではないか”というような、標準的なシナリオを合わせて提供するようにしました。こうすることで、担当者それぞれが、データから自分で考えを導き出すための筋道を与えることを意図しています。担当者からの問い合わせ内容も、日に日にレベルアップしていると感じます」(安井氏)

 最後に安井氏と佐野氏は、それぞれ今後の展望を語りました。

 「今は、生産領域の限られた部分でデータを活用していますが、事業全体としては、健全な工場運営、従業員の安全と健康、食品衛生、品質管理、納期など、課題となる重要な指標がまだ多くあります。身近にある多くのデータを、しっかり視覚化して、健全な企業と事業の運営に生かす取り組みを、今後も続けたいと考えています」(敷島製パン 安井氏)

 「物流業界では、サプライチェーン全体をデジタル化し、データを可視化していくことが悲願にもなっています。特にコロナ禍のような非常事態の中で、それぞれのプレイヤーが互いの状況を把握して協調しなければ、物流が立ち行かないという状況も目の当たりにしています。今後は、企業の垣根を越えたデータの標準化、サプライチェーン全体のデジタル化にも、業界全体の課題として取り組んでいく必要があると感じています」(日立物流 佐野氏)

 ドーモの田尻氏は「Domoを通じて社内での業務改善や、顧客への提案力向上といった、実際の成果を生み出している事例を伺えたことをうれしく思います。データは『本業に活用する』ためのものであり、データを扱うために本業に使われるべきリソースを費やしてはならないというのがドーモの考え方です。今後も、データ活用から企業がより多くの価値を生み出せるようなサービスを提供して参ります」と述べて、セッションを締めくくりました。

イベント開催のご案内

2020年12月1日(火)にドーモ主催のコーポレートカンファレンスをオンラインにて開催いたします。「ビジネスクラウドが支援する業務改革」をテーマとした本カンファレンスでは、リアルタイムデータ分析によって得られた知見を業務改革につなげた事例の紹介を通じて、データ活用の本当の価値や目的、データ活用を継続し、成果に結びつけていくことの重要性を改めて認識いただく機会ご提供します。みなさまのご参加をお待ちしております。

【Domo City Tour Online - Tokyo 2020】
日 程: 2020年12月1日(火)13:00 〜
会 場: オンライン
参加費: 無料(事前登録制)
主 催: ドーモ株式会社
ー イベントに関するお問い合わせ先 ー
Domo City Tour事務局:seminar-jp@domo.com Domo City Tour Online - Tokyo 2020 公式サイト

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