帝国データバンクは、2023年4がつまでに発生した「人手不足倒産」について調査・分析を行った。
<調査結果(要旨)>
4月の「人手不足倒産」は過去最多 『建設業』『サービス』で目立つ
アフターコロナに向けて倒産急増 今後も高水準で推移
集計期間:2023年4月1日~4月30日
発表日:2023年5月11日
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
集計機関:株式会社帝国データバンク
4月の「人手不足倒産」は過去最多 『建設業』『サービス』で目立つ
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従業員の離職や採用難等により人手を確保できず、業績が悪化したことが要因となって倒産した「人手不足倒産」は、2023年4月に30件判明した。2013年1月に集計を開始して以降で最も多くなった。コロナ禍直前の2020年1月以来3年2カ月ぶりに20件台となった先月(21件)に続き、アフターコロナに向けて需要が急回復するなかで急増している。
また、従業員や経営幹部などの退職・離職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」の人手不足倒産も、2023年1-4月で23件判明した。前年同期(14件)から大幅増となるなど、従業員の転退職による倒産が今年に入り存在感を増している。
業種別にみると、『建設業』『サービス業』がそれぞれ11件で最も多かった。『建設業』では、有資格者や営業マンなどの従業員の退職により事業の継続が困難となった「従業員退職型」の倒産が目立った。一方、『サービス業』では、システムエンジニア不足の「ソフトウェア業」や看護師資格を持った人材の確保ができずに行き詰まった「看護業」の「人材不足型」の事例がみられた。また、慢性的なドライバー不足に悩む「運輸業」も2件発生した。
アフターコロナに向けて倒産急増 今後も高水準で推移
行動制限の全面緩和に続き、5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に引き下げられ、アフターコロナへの動きが本格化するなか、足元の人手不足感は増している。帝国データバンクが2023年4月に実施した調査では、2023年4月時点で人手不足を感じている企業の割合が51.4%(正社員ベース)に達し、過去最高であったコロナ禍前の53.9%(2018年11月)に迫りつつある。
さらなる人流増加による需要増のほか、物価高に伴う賃上げ機運が高まっていくなかで、人材不足と人件費の高騰が、コロナ禍でダメージを受けた中小・零細企業にとって大きなリスクとなることが懸念される。こうしたコロナ禍では表面化しなかったリスクの高まりにより、人手不足に起因した倒産がさらに増える可能性が高い。
<主な人手不足倒産の事例>
(1)(有)進拓工業(東京都)
当社は、1986年(昭和61年)5月に設立された水道施設工事業者。地元密着型の営業を展開し、近年は排水管や給水衛生設備の改修案件を主体に運営を行っていた。官公庁の元請け工事も手がけ、受注が堅調に推移した2020年3月期には年売上高約7億3400万円を計上していた。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響による設備投資冷え込みで受注が落ち込んだほか、有資格者の退職も相次ぎ、2022年3月期の年売上高は約3億7000万円に減少。さらに、資材価格の高騰や同業者との価格競争もあって価格転嫁は進まず、先行きの見通しが立たなくなった。
負債は約5億8100万円。
(2)サンエー食品(株)(東京都)
当社は、1966年(昭和41年)5月に設立された業務用食料品の卸売業者。関東圏の給食事業者および飲食店向けに、肉・魚の切り身などの冷凍食材から、ハンバーグや餃子、とんかつなどの総菜まで3000種類、一般食料品では、タケノコやしらたきなど約4000種類と幅広い商材を扱い、2018年5月期には年売上高約7億1200万円を計上していた。
しかし、近年は主力先に依存した営業体制に加え、人材不足から新規取引先の開拓ができない状況が続いていた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦戦が強いられたなか、近時の仕入れ単価高騰を受けて資金繰りが急激に悪化し、先行きの見通しが立たなくなった。
負債は推定3億5000万円。
プレスリリース提供:PR TIMES (リンク »)
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