データサイエンティストを雇わず機械学習を運用するには?--ガートナー

NO BUDGET

2017-05-18 07:00

 ガートナー ジャパンは5月16日、企業が機械学習へ取り組む際に留意すべき点をまとめたレポートを発表した。

 機械学習などを駆使したデータ活用に踏み出すには、多くの場合でデータサイエンティストなど専門家の力が必要になる。しかし、そのためには本格的な運用の前に、機械学習を利用したパイロットプロジェクトを実施し、成功させることが必要。それをクリアできなければ、データサイエンティストを雇用することは難しくなる。

 こうした「ニワトリが先か、卵が先か」にようなジレンマに陥っている企業に向けてガートナーは、データサイエンティストの雇用が困難な要因や、新たにデータサイエンティストを雇用することなく機械学習などを駆使したデータサイエンスへ取り組む方法を解説している。

 ガートナーによると、高度なアナリティクスを実践している企業でも、その40%以上が「適切なスキルの不足」を課題に挙げているという。

 その背景には、そもそも候補となる人材の数が限られていることがある。また、経験豊富なデータサイエンティストは、自分がその企業で最初に雇用されるデータサイエンティストになることを避けようとする。これは、高度なアナリティクスを実施するための仕組みを最初に構築するには、単にデータにアクセスし、それらを統合して当初の機械学習モデルを社内展開するだけでも、膨大な労力を必要とするためだからだという。

 また、優秀なデータサイエンティストは職務経験を (理想的には業種の垣根を超えて) 積み重ねるために、自ら好んで転職を繰り返している傾向にあり、企業が引き留め続けるにも困難だという。

 こうした状況を踏まえてガートナーは、スキル確保の課題への対処法として、現有のスタッフをデータサイエンティストに育成することや、大学との提携、外部のプロフェッショナルの活用、パッケージアプリケーションの利用を挙げている。ガートナーでは、企業が大規模なデータサイエンスラボを持つ必要はないとし、小さく難易度の低い取り組みから始めて、必要なコンピテンシーを進化させていくことを推奨する。

 現有スタッフの育成では、いわゆる「市民データサイエンティスト」として教育することを目指すべきという。数学のスキルをある程度持ち、定量分析のスキルを他の業務で使用している意欲的な従業員を育成していく。

 大学との提携では、自社が属する業界のビジネスプロセスと利用可能な定量分析手法を熟知しているベテランの研究者の協力を仰ぐ。研究者側も企業と実務的なやりとりを経験でき、企業側は研究者や学生の知識からメリットを得られる。

 外部プロフェッショナルの活用では、コンサルティング企業などに依頼してデータサイエンスプログラムを成功させ、これに弾みをつけていく。その際、プロジェクトのアイデア出し、初期パイロットの支援、経験が浅いスタッフへのコーチングおよびティーチングから本格的なマネージドサービスまで一貫して行えることが望ましい。現在持ち合わせている自社のスキル、資金、処理能力を把握し、各サービスプロバイダーの契約および価格モデルから最適なものを選定することが重要となる。

 パッケージアプリケーションの利用では、特定のビジネス課題の解決にターゲットを絞ったもので、さらに機械学習の能力が組み込まれているソフトウェアを選定、活用する。現在、既に多くの開発済みソリューションを利用でき、その数は絶えず増加している。こうしたツールを導入することで、ゼロからの構築よりも非常に短い期間で利用できるようになる。ガートナーでは、例え大規模なデータサイエンスチームを擁している企業であっても、特に生産性向上の観点から、パッケージアプリケーションは検討すべき重要事項だとしている。

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