スマホで手のひらを撮影して認証--日立とKDDIが掌紋向けPBI技術を開発

NO BUDGET

2018-10-15 12:15

 日立製作所とKDDI総合研究所は10月11日、掌紋向けPBI(Public Biometrics Infrastructure:公開型生体認証基盤)技術を開発したと発表した。

 この技術は、スマートフォンやタブレットに付属の汎用カメラで撮影した掌紋(手のひらの皮膚紋理)から公開鍵認証(利用者の電子署名生成と署名検証)を行うもの。汎用カメラで取得した生体情報を用いて、電子署名に必要な秘密鍵を一時的に生成して利用できるため、秘密鍵の管理が不要となり、機密情報の漏えいやなりすましの防止効果を高めることができる。

掌紋向けPBI技術と顔認証の組み合わせによる本人認証の利用シーン例
掌紋向けPBI技術と顔認証の組み合わせによる本人認証の利用シーン例(出典:日立製作所とKDDI総合研究所)

 また、同技術は、生体認証用の専用装置も不要となるため、家庭や外出先など場所を選ばず、電子商取引やネットバンキングなど、さまざまなオンライン取引において本人認証が可能となる。さらに、既に確立した顔認証と掌紋向けPBIを1台のタブレットに組み込むことで、顔・指紋・掌紋・虹彩・静脈など、複数の生体情報を認証などの処理に使用する「マルチモーダル認証」を実現でき、店頭でのスムーズでセキュアな手ぶら決済も可能となる。マルチモーダル認証処理では、1台のカメラで顔や掌紋の情報を同時に取得して高精度な公開鍵認証を実現する。

汎用カメラで撮影した画像による公開鍵認証(電子署名生成と検証の仕組み)
汎用カメラで撮影した画像による公開鍵認証(電子署名生成と検証の仕組み)

 同技術には、新たに開発した掌紋画像の「位置ずれ補正処理」と「揺らぎ低減処理」が活用されている。

 掌紋向けPBI技術では掌紋画像をどこにも保存しないため、掌紋画像を使わずに位置ずれを補正する必要がある。位置ずれ補正処理では、手のひらの輪郭情報を補助情報として使用し、輝度の揺らぎに影響されにくい位相限定相関法による補正を行う。

 揺らぎ低減処理は、本人認証時に手の開きや照明環境の違いを反映した複数種の掌紋画像を生成するもの。これにより、手の開きや照明環境の違いなどによる揺らぎがあっても本人であることを正しく判定する確率を高め、認証の高精度化する。

 さらに本人の写真や動画によるなりすましのリスクに備え、ディープラーニングなどの機械学習を活用し、撮影画像が本物か偽物かを見分ける生体検知技術も合わせて開発している。

 日立では、今回開発したPBI技術に加え、汎用カメラ指静脈技術の開発に取り組み、生体認証のラインアップを拡充していく。

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