連立一次方程式計算は、流体解析、構造解析や電磁場解析等の機械系数値シミュレーション(解析)において、解析全体の計算時間や計算精度に大きな影響を与える中核的な計算処理である。様々な解析分野においては、解析モデルの大型化、詳細化に伴う計算時間の増大が問題になっており、計算時間を短縮するために、計算全体に大きな時間割合を占める連立一次方程式計算を高速化・安定化することが重要な課題になっている。ヴァイナスでは、これまでもAMG法をベースとした高速の連立一次方程式計算ライブラリ(マトリクスソルバ)を開発して来たが、この度、電磁場解析分野において、中心的な解法の位置を占めつつある辺要素有限要素法に対応したAMGソルバを、京都大学大学院情報学研究科助教授岩下武史と株式会社ミューテック(本社:東京都渋谷区、代表取締役:野島洋一)とともに開発した。
AMG法は1990年代に開発された最新のアルゴリズムに基づく高速の反復型連立一次方程式解法であるが、コーディングが困難であること、計算を実行する際のパラメータ設定が多数必要であること、適用できる問題が限定されることなどから、優れた高速計算性能を期待されながら、「SMS-AMG」がリリースされるまでは一般に普及していなかった。特に、電磁場解析の有限要素法辺要素解法においては、これらの問題に加え、辺が持つベクトル的な情報の取り扱いが必要となり、これまでAMG法の辺要素への対応版は商用としては実現されていなかった。辺要素対応AMG法の基本的な開発はヴァイナスと京都大学が行い、検証データの作成、電磁場解析パッケージに組み込んでの性能確認をミューテックが実施した。最終的な製品化はヴァイナスが行い、ヴァイナスが「Super Matrix Solver」ライブラリの製品ラインアップの1つとして販売及びサポートを行う。
開発した辺要素対応AMG法は、従来解法であるICCG法にくらべ、数倍~10倍程度の高速計算性能を持っている。辺要素法を使った電磁場解析コードにおいて、辺要素対応AMG法ソルバに切り替えることにより、解析全体の計算時間を、数分の1から数十分の1程度に短縮することができる。加えて、これまでは計算することが困難であった大規模なモデルを対象とすることが可能になった。
このプレスリリースの付帯情報
お問い合わせにつきましては発表元企業までお願いいたします。