今年10月に東京都品川区で開催されたOpenStack Summit 2015は、ITスタックの中心的な位置をOpenStackが獲得したことを印象づけるものであった。ITベンダー各社は、以前からOpenStackへの取り組みを強化しているが、単なる対応だけではなく、よりOpenStackの価値を高めるようなソリューションが求められる段階に入ったと言えよう。本稿では、今回のOpenStack Summitでデルが展示していた3つのソリューションについてご紹介しよう。
デル+レッドハットの協業で実現した
高信頼のリファレンス・アーキテクチャー
まず最初に紹介するのは、デルがレッドハットとの協業により開発したOpenStackのリファレンス・アーキテクチャー「Dell Red Hat Cloud Solution」だ。デルとレッドハットは以前からOpenStackのリファレンス・アーキテクチャーを共同開発しており、今回発表されたバージョン4は、OpenStack Kiloに対応している。
Dell Corporation, Director of Software Development
Arkady Kanevsky氏
デルでOpenStackソリューションの開発をリードするArkady Kanevsky氏は、「エンタープライズ・レベルの耐障害性と高可用性を実現することを重視した」と今回のバージョンについて説明する。
基本的には、クラウドシステム用途に最適なインテル® Xeon® プロセッサーを搭載したDell PowerEdge R630などのデルのハードウェアとRed Hat Enterprise Linuxなどレッドハットのソフトウェアを組み合わせたものだが、ネットワークは外部接続と内部接続をそれぞれ二重化し、ストレージには分散ファイルシステムのCephを採用してデータを冗長化するなど、障害発生時の信頼性を大きく向上させている。また、バージョン4ではインスタンスのHA構成にも対応したほか、ストレージのオプションとして従来からのDell Storage PSシリーズ(EqualLogic)に加えてDell Storage SCシリーズ(Compellent)にも対応した。
ご存知のように、OpenStackでは各コンポーネントがAPIを通じて連携を取るアーキテクチャーを採用している。APIに準拠したコンポーネントを開発すれば、自由にOpenStackの機能を拡張することができるわけで、この自由度の高さはOpenStackの活発な開発を促進し、ユーザーの選択肢を広げる原動力になっている。
ただし、自由度の高さは検証の困難さにも繋がる。理論上は連携できるはずのコンポーネントが、組み合わせによっては動作しなかったり、うまくスケールしなかったりする。OpenStackでプライベート・クラウドを構築する企業にとって、検証の困難さは高い障壁と言えるだろう。
Dell Red Hat Cloud Solutionは、まさしくこの検証の困難さを取り除くためのソリューションだ。
「このリファレンス・アーキテクチャーは、10ノードから3ラック(約100ノード)のシステムを想定して開発したものであり、この規模であれば一切のカスタマイズやチューニングなしで、信頼性の高いクラウド基盤を迅速に構築することが可能だ」(Kanevsky氏)
なお、今回のバージョン4は発表されたばかりなので企業による採用事例はまだないとのことだが、同等のアーキテクチャーのシステムは、すでにケンブリッジ大学やイェール大学で稼働しているそうだ。
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