掲載日時: 2009-11-25 11:06

「ビジネスチャンスではなく義務」--IFRS対応支援を拡充するディーバの取り組み

「ビジネスチャンスではなく義務」――。連結会計システムを開発、提供するディーバ代表取締役社長の森川徹治氏は、早ければ2015年にも適用が始まる見込みの国際会計基準(IFRS)対応支援に対する同社の姿勢をこう表現する。

著者 : 田中好伸(編集部)

URL : https://japan.zdnet.com/article/20404142/

 「国際会計基準(IFRS)対応支援はビジネスチャンスではなく、義務」――。連結会計システム「DivaSystem」を開発、提供するディーバ代表取締役社長の森川徹治氏は、早ければ2015年にも適用が始まる見込みのIFRSに対する同社の姿勢をこう表現する。

 IFRSは企業グループの連結会計に適用されるものだが、森川氏は同社が提供する連結会計システムの存在意義を統合基幹業務システム(ERP)との関係性から「ERPは社内の業務要件によって決められるが、連結会計システムは投資家がどう見たいかという開示要件によって決められる。連結会計システムはERPの延長にあるものでない」と説明。「むしろ連結会計システムとERPは補完関係にある」と強調する。

森川徹治氏 「連結会計システムとERPは補完関係にある」と話すディーバ代表取締役社長の森川徹治氏

 ERPやサプライチェーン管理システム(SCM)、顧客情報管理システム(CRM)といった基幹系システムは、個別各社の現場が業務をこなす上で、あるいは経営層がより効率的に経営を行う上で必要とされて発展してきた。いわば、社内の需要に対応して発展してきたものだ。

 対する会計システムは、会社法や税法などの法制度が要請するものであり、連結会計が義務化されたことで、連結会計システムは上場企業に必須なものになっている。

 かつて会計の制度変更はそれほど頻繁には行われていなかったが、1997年からその風景は一変する。「金融ビッグバン」とその一環としての「会計ビッグバン」の到来である。会計ビッグバン以降、毎年のように基準が変更されるようになっているからだ。近年の企業会計で一番大きな影響を与えることになったのが、金融商品取引法を中心とした日本版SOX法だ(日本版SOX法は会計ビッグバンとは別の流れだが)。

 そうした変遷を辿ってきた企業会計基準変更の“真打ち”とも表現できるのが、IFRSだ。IFRSは、日本だけで通用する会計基準から、グローバルなルールへの対応という意味で、これまでの会計基準の変更とは大きく異なるものだ。IFRS対応への支援をビジネスチャンスではなく、“義務”と森川氏が表現しても、連結会計システムを提供してきたことを考えると、それほどの違和感を感じることはないだろう。

 そうした同社は、会計ビッグバンの発端になった金融ビッグバンが本格的に動き始めた1997年にDivaSystemを開発。そのDivaSystemは、これまでに上場企業約600社に利用されている。日本の上場企業の数がおよそ3800社とすると、約16%が利用していることになる。また、日本経団連で9月から活動を開始したIFRS準備組織(IFRSタスクフォース)に参加する企業21社のうち11社がDivaSystemを利用していると、森川氏は説明する。

 そうしたディーバの今後の方向性として森川氏は(1)連結会計(2)グループ統一会計(3)開示/投資家向け情報提供(IR)(4)経営情報活用――という4つの領域に取り組むことを説明する。(1)の連結会計とは、DivaSystemを中心にユーザー企業のIFRS対応を支援していくという従来から進めている領域だ。

ロードマップ DivaSystemのIFRS対応ロードマップ
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「IFRSは公用語、母国語ではない」

 DivaSystemのIFRS対応ロードマップはすでに発表されており、その中で“コンバージェンス(収斂)版”とされていた「DivaSystem 9.3」はすでに提供が開始。続く“トライアル版”は2010年11月に、“アドプション版”が2011年11月に、それぞれリリースされる予定だ。

 すでに「ユーザー企業との共同開発が始まっている」(森川氏)というトライアル版は、IFRSで大きなインパクトと考えられている財務諸表の変更の影響を把握するために、トライアルでIFRSの財務諸表作成を志向するユーザー企業に必要な機能を提供することがメインだ。IFRSでは、損益計算書(P/L)は「包括利益計算書」に、貸借対照表(B/S)は「財政状態計算書」になり、それぞれフォーマットも盛り込まれる内容も従来の日本基準(J-GAAP)とは大きく異なる。トライアル版では、それらの形式で連結財務諸表が出力できるようになる。

 IFRSでは、企業グループ本社が連結財務諸表を当局に提出する一方で、各国の拠点では、税法や(日本で言う)会社法といった現地当局が必要とする書類を提出する必要がある。各拠点の国の会計基準(GAAP)での会計報告が必要だ。  つまり「“二重帳簿”を前提とするIFRSは“公用語”であって“母国語”になりえない」(森川氏)のである。トライアル版は、こうした対応のために各国拠点でのGAAP調整と親会社でのGAAP調整といった機能も盛り込まれる予定だ。

IFRS講座 IFRS対応講座の開設予定
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 続くアドプション版では、現在のDivaSystemでのJ-GAAPと同等以上の水準での精度や効率でIFRSベースの連結決算を実施できるものになるという。トライアル版での対応項目に加えて、資本連結や税効果、未実現といった各種連結処理でIFRSに則った処理が可能になる予定だ。加えて、過年度遡及を支援する機能も搭載されるという。

 連結会計でのIFRS対応では、人材への教育研修が重要として実務講座を充実させていくとしている。入門講座では、IFRSとJ-GAAPとの大きな違いやIFRSの財務諸表体系などのIFRSの概要を説明。入門講座より実務的な対応講座では、資本連結に関する部分を説明していくという。

これまでとは異なるIFRSへの“アドプション”

 ユーザー企業のIFRS対応支援という点では、会計や税務などの実務担当者向けに法令検索サービス「eRules」を提供する。eRulesは、ディーバが先日買収して完全子会社になるインターネットディスクロージャーが主体となって提供している。

 eRulesは、会計や監査、税務に関して約900以上の法規や通達、委員会報告などを収録したもので、それらの高速検査が可能だ。現在eRulesにDivaSystemのマニュアルや手順書を収録して、法令とともに検索可能になる予定。加えて、IFRSの全文を収録すべく交渉をしているという。

 IFRS対応は、さまざまな点でJ-GAAPと異なるが、その中でも大きいのが「原則主義」だ。原則主義は、共通の基本方針は定めるが、細則は企業が自ら判断して決定していいというものだ(J-GAAPは、細則が細かく決められた「細則主義」)。たとえば、固定資産償却で、企業が自ら個々の資産の対応年数を決めることができる(J-GAAPは業種や業態、種類ごとに対応年数が決められている)。

 つまり原則主義は、経営情報の「開示を戦略的に自分たちで決めることができる」(森川氏)ということだ。その本質は、経営判断に使っている情報を開示しやすくなると言え、企業の経営層が自らの意思次第で経営判断を投資家に示す情報として相当に反映できるということにある。日本企業での会計の問題として、制度的に開示しなくてはいけない「制度会計」(「財務会計」ともいう)と、企業の経営層が自分たちの経営管理に活用する「管理会計」との乖離が指摘されてきたが、IFRSの原則主義で“財管一致”“制管一致”が実現できるようになる。

 日本の会計基準は、この数年IFRSへのコンバージェンスとして、さまざまな基準の変更がなされてきているが、早ければ2015年から実行されるIFRSの強制適用、つまりIFRSへの“アドプション(適用)”は、「これまでのコンバージェンスとは全く意味が異なる」(森川氏)。それは原則主義で会計基準の原理そのものが変わってしまうからだ。

ガバナンスを効かせる

 ディーバのIFRS対応支援の主要なポイントは以上になるが、課題と考えられるのが本社以外の子会社などのグループ企業の会計システムをどう取り込むかという点だ。そうした課題に対応するのが(2)のグループ統一会計である。

 これまで見てきたように、IFRSでは連結会計での財務報告を対象にしている。その際に、子会社から寄せられる会計結果をどのように財務報告にまとめ上げるかが大きな課題だ。そうした課題に対して、大手ERPパッケージベンダーは、本社が稼働させる大きなERPの個別会計システムをグループ企業全社で使えばいいという提案をしている。“グローバルシングルインスタンス”というものだ(グローバルシングルインスタンスは、その延長線上として企業グループ内に財務経理のサービスを提供する“シェアードサービス”という解決策も含んでいる)。

 それに対してディーバは、グローバルシングルインスタンスよりも低コストで容易に展開できるソリューションを現在開発中としている。具体的には、「グループで統一の会計基準を作成して、グループ会社の会計情報を仕訳単位で統合するソリューション」(森川氏)と説明する。このソリューションは以前「Global Group Management(GGM)」と紹介していたものだ

 このグループ会社の全会計情報を仕訳単位で統合するソリューション(グループ統合GL)は、グループ内で会計基準を統一して、グループ内でIFRS組み替えスキームを共有することで、子会社への業務負荷を軽減できると同社は説明する。また、子会社の個別会計仕訳帳レベルまでグループの統制を効かせることができるともしている。

 森川氏の説明によれば、ERPの現在のユーザー企業でもグループ統一会計基準がないために、ERPがグループの隅々にまで行き渡っていないという現実があるという。また、小さい規模の企業では、ERPを使えないことも指摘している。

 それよりも、グループ統一会計基準を作成して、グループ企業各社の会計システムから情報を収集した方がより低コストに済ませられるとしている。グループ統合GLであれば、子会社の個別会計システムを再構築するよりも、グループ全体のシステム投資を抑制できるという。グループ統合GLは、グループ企業のERPや個別会計システムの側で、IFRSと各GAAPに対応した二重帳簿を保持する形態と、引き続きGAAP対応で帳簿を作成する形態、個別会計システム自体が未整備な形態のいずれも広くカバーできると、そのメリットを説明する。

 IFRS適用とは別に、グループ企業ERPの全面展開を進めているグローバルシングルインスタンスを考慮したプロジェクトを進めているという企業は別として、もし企業グループ内で個別のERPや個別会計システムが別々に稼働しているとしたら、IFRS対応でそれらを個別に再構築するのではなく、既存のシステムを稼働させつつ、IFRSへの対応を済ませられる可能性があるからだ。システムの投資対効果(ROI)や総所有コスト(TCO)を効率的に計画できるということも可能になる。また、グループ企業各社の会計情報を仕訳単位で見られるというのも、グループ企業へのガバナンスをより一層効かすことが可能になるということであり、単なるIFRS対応以上の意味を帯びてくるだろう。

開示情報からIR資料作成

 企業のIFRS対応は、これまで見てきたように、さまざまな領域で大きな負荷がかかるであろうことが理解できるだろう。ただでさえ、日本企業はこの数年で連結開示や四半期報告などの義務化、決算情報の早期発表、加えて、日本版SOX法で財務諸表の“品質保証書”とでも言える「内部統制報告書」も要請されている。その上にIFRSとなると、情報システム部門はもちろん、財務や経理の各部門に対する負荷が今後ますます高くなる可能性があるのは、改めて指摘するまでもない。

 そうした事情から、証券取引所に上場し続けるのは「コストがかかる一方だ」という雰囲気があるのも事実。もちろん、開かれた市場に企業の株式が流通するのはメリットが多いが、それにかかる労働負荷も含めたコストが現場へのプレッシャーになっているとも指摘できる。そうした状況に対して、コスト削減や監査効率の向上を狙うために、ディーバは、開示/IRという分野にも今後注力していく方針だ。先に挙げた(3)がこのことだ。

 この分野で活きてくるのが、完全子会社となるインターネットディスクロージャーの情報提供サービス「開示Net」だ。「監査法人を中心に3万ユーザーがいる」(森川氏)という開示Netは、電子開示システム「EDINET」(Electronic Disclosure for Investors' NETwork)や東京証券取引所が運営する「適時開示情報伝達システム(TDnet)」に収録されている開示情報を検索できるというものだ。収録された全文書に対して高速な検索ができるとともに、たとえば粗利益率といった財務指標も自動生成されて収録されている。また、IFRSが適用された英文の年間報告書も収録されている。

 この開示Netについて森川氏は、今後IFRS適用で「他社はどのようにIFRSを適用されているのかを知りたがっている」というニーズを満たすことができると説明する。具体的には、会計方針としてどのようなものを打ち出しているのか、注記情報はどのようなものがあるのかといった連結財務諸表の作成時に必要となる課題に対応した情報を提供できる。また、同業他社や市場の把握、自社との比較といった使われ方もあるだろうとしている。

 開示/IRの分野では、開示済みデータからIR資料を作成するソリューションを現在開発していると森川氏は説明。これは、TDnetに収録後、自動的にXBRLデータを取り込んで、企業のIRサイトにハイライト情報を即時に反映するものだという。IR情報では、日本語と英語のレポートを同時に自動的に生成することもできるようにするとしている。

連結経営の高度化も推進

 ここまで見てくると、ディーバの(1)〜(3)の取り組みが企業のIFRSという制度対応なものになっていることが分かるだろう。だが、同社の取り組みとしては、制度的対応への支援という側面がある一方で、企業グループ全体の成長を促す対策、企業グループ全体での「連結経営」を高度化させる対策も取っている。それが(4)の経営情報活用だ。具体的には、提供が始まっているデータウェアハウス(DWH)/ビジネスインテリジェンス(BI)製品の「DivaSystem MIPS」である。

 MIPSは、DivaSystemのモジュールとして提供されるものだが、既存のDWおよびBI製品とはやや異なるアプローチをとっている。DWおよびBIでは、ERPやSCM、CRMなどの基幹系システムにあるトランザクションデータをDWに貯め込み、蓄積されたデータをBIアプリケーションで分析するといったものだが、あくまでも個別企業内部で使われることが基本だ。

 これに対してMIPSは、本社の単体会計や連結会計などの各種財務情報はもちろん、子会社や支店、工場などまでを含めた企業グループ全体の販売や生産、在庫などのデータを統合して、その統合されたデータから顧客単位や製品単位などにドリルダウンして分析を行うという。MIPSは、リアルタイムにデータを参照、修正、収集するモジュールの「DivaSystem EIGS」とともに活用することで、その能力をより活かすことができる。MIPSでは、多種多様なユーザーインターフェースの分析ツールを準備することで、経営層や経理担当、経営企画担当、グループ会社など、さまざまなエンドユーザーの経営情報活用を実現できると説明している。

「動き始めているのは1%」

 IFRS対応支援と連結会計システムを中心にいくつかの領域でビジネスを展開しているディーバだが、実際のユーザー企業のIFRSへの反応は森川氏にどう見えるのか。森川氏は企業の現在のIFRS対応について「実際に動きを見せているのは1%ぐらい」と話す。

 そうしたユーザー企業では現在、「IFRSでの会計方針をどうすべきかを検討している」(森川氏)段階だという。会計の方針を巡る問題としてはたとえば、実務上の問題として「本社が会計処理を一括すべきか、グループ企業にやってもらうのか」(森川氏)という議論も交わされているという。

 また、そうした実務上の問題とは別の問題も存在する。たとえば「特別目的会社(SPC)の取り扱い」(森川氏)に関する議論だ。

 従来のJ-GAAPを含めた会計基準では、SPCは連結対象から外して、処理することが許されていた。しかし、IFRSではSPCを連結対象とすることが決められている。これまで簿外で大きな損失を出していたSPCが連結対象になると、SPCの取り扱いが極めて重要な問題になってくる可能性があるからだ。

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