人類にとって最大の課題の一つは、限りある化石燃料に取って代わるものを見つけることです。そのようなエネルギー源として最も顕著なのは太陽であり、地球のエネルギー資源はほぼすべてが太陽の恩恵を受けています。
受賞者であるローザンヌ工科大学(EPFL)のマイケル・グラッツェル化学科教授はこの課題に色素増感を利用した太陽電池を以て挑みました。
「太陽エネルギーの難点はこれまで高くついたこと。その点グラッツェル・セルは従来より安価に太陽エネルギーを人間の利用に供するものです。グラッツェル教授のイノベーションは再生可能なエネルギー源の活用と、それによる持続ある発展を推進するうえで大切な役割を果たすことでしょう」、とフィンランド技術賞財団のアイノマイヤ・ハールラ運営部長が最終選考の理由を述べています。
技術賞の受賞者はフィンランド技術アカデミーの理事会が国際選考委員会の推薦にもとづいて決定しました。
グラッツェル教授が開発した色素増感太陽電池はコスト・パフォーマンスが優れています。人工的光合成と形容されたこの技術は、現在主流であるシリコンベースの太陽電池に代わる有望な選択肢です。グラッツェル・セルは比較的安価な材料でつくられ、また製造に複雑な装置を要しません。セルはまだ開発の初期段階ですが、きわめて有望視されており、高価なシリコン・セルのライバル商品になると見込まれています。
グラッツエル教授の技術をもとに他にも多くの商品が生まれようとしています。太陽エネルギーを集める窓、従来よりずっと安価なソーラーパネルなどなど。グラッツェル・セルを使った消費者製品も既に幾つか市販されています。
プラスチック電子工学の研究とARMマイクロプロセッサーの開発にそれぞれ15万ユーロの賞金
ミレニアム賞の最終候補者となった他の二人の研究者にはそれぞれ賞金15万ユーロと最高を象徴する像が手渡されました。今年度表彰を受けたイノベーションは、どれも持続ある発展と省エネルギーの要求に応えるものです。
ケンブリッジ大学キャベンディッシュ・ラボラトリーの物理学教授リチャード・フレンド卿がなした最も重要なイノベーションである有機発光ダイオードは、プラスチック電子工学の発展に大きく寄与しました。電子ペーパー、印刷技術を応用した低価格の有機太陽電池、照明機能を持つ壁面などはフレンド卿の研究によって実現された新製品です。
マンチェスター大学情報学科のスティーブン・ファーバー教授はARM32ビットRISC型マイクロプロセッサーのチーフ設計者です。ファーバー教授のマイクロプロセッサーは安価で消費電流が小さく、しかも効率が良いため、携帯型電子機器に飛躍的な進歩をもたらしました。その生産量は25年間で約200億個にのぼります。
「これらイノベーションは、どれも我々が課した受賞クライテリアを完ぺきに満たしている、すなわち現在および将来において人類に広範な利益をもたらす技術であることだ」、と技術賞財団のスティグ・グスタフソン理事長は評しています。
ミレニアム技術賞について:
ミレニアム技術賞は、人々の生活の質を向上させる技術革新に隔年でフィンランドから与えられる賞です。 2010年ミレニアム賞の賞金総額は110万ユーロで、うち100万ユーロがフィンランド政府から、10万ユーロがフィンランド技術賞財団から拠出されました。技術賞受賞者には80万ユーロが、最終候補者となった他の二人にはそれぞれ15万ユーロが授与されます。詳細は www.milleniumprize.fi にて。
ミレニアム技術賞を授与するフィンランド技術賞財団は、人々の生活の質を高める応用技術を促進し、また人々の暮らしに好影響をもたらし、かつ人的価値に立脚する技術開発に結びつく学術研究を促進する団体です。自立団体であるこの財団の後ろ盾はフィンランドの諸団体、産業界およびフィンランド政府です。財団の組織はフィンランド技術アカデミー(TTA)、フィンランド・スウェーデン工学アカデミー(STV)、および大手企業の代表者からなるフィンランド産業評議会で構成されています。詳細は www.technologyacademy.fi にて。
詳細の問合せ先:
フィンランド技術賞財団 運営部長アイノマイヤ・ハールラ
e-mail: ainomaija.haarla@technologyacademy.fi
Tel. +358 40 716 0703
フィンランド技術賞財団 コミュニケーション担当ヤーナ・キュマライネン
e-mail: jaana.kymalainen@technologyacademy.fi
Tel. +358 40 352 7437
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