今年のテーマは、「IBM z Systems」「ネットワーク」「マルチベンダー」
T1グランプリの試験テーマは、その年々で特に重要と思われるテーマが選ばれる。渡邉氏の話にもあったように、今年は、「IBM z Systems」「ネットワーク」「マルチベンダー」の3つの部門が設定された。以下、それぞれの部門を概観してみる。
IBM z Systems 部門
IBM z Systemsは24時間365日“絶対に止められないミッション・クリティカル・システム”を代表するシステムであり、このサポートを通じて長年培われた実績と経験が今日のTSSのさまざまなサポート・サービスに応用・展開されている、いわばTSSのサポート・サービスの原点だ。今回のT1グランプリにおいては、ラボ試験を取り入れ、特殊な状況でのトラブルを想定して異常を発見し、正常な状態に補正していく能力が問われる。課題の4問はいずれも見極めが難しい設問で、システム全体の知識が必要とされる。これを短時間で解決することが評価の基準となる。
ネットワーク部門
今日の複雑なマルチベンダー環境を前提に、シスコシステムズのネットワーク機器を複数台使ってネットワークを構築するラボ試験と、複数のネットワークベンダー製品の情報を盛り込んだ筆記試験が行われた。IBMは2000年からシスコシステムズのネットワーク機器の保守を開始、1999年にはゴールドパートナーに認定されている。さらにIBMとシスコシステムズは2014年12月に、仮想化ストレージシステム「IBM Storwize V7000」とIAサーバー「Cisco Unified Computing System」(Cisco UCS)を組み合わせた統合インフラ「VersaStack」の提供を開始したことから、関連するネットワーク機器とサーバー製品をシームレスに保守できるかがポイントとなる。
マルチベンダー部門
マルチベンダー部門を新設し、エンタープライズ・ハイブリッドIT環境におけるさまざまなマルチベンダーの技術能力を高めるための筆記試験が行われた。IBM製品以外のCisco、Lenovo、Apple、Oracleなどの製品をオールマイティにサポートできる知識を競った。
IBMで最近特に重視している顧客とのコミュニケーション能力を問う「報告」は、IBM z Systems部門とネットワーク部門で競われた。競技者はラボ試験の終了後に報告書を作成し、別室に待機している“顧客役”を演じる技術担当とIT部長の2名の試験官に対して、問題が完全に解決したかどうかをロールプレイング方式で伝達する。挨拶・報告のしかたや、報告書の書き方、説明・提案のしかた(原因の特定は正しく行われたか、原因の理由・根拠や未然防止には何が必要であるか正しく説明できたか)などが減点法で評価される。報告が甘い場合には、試験官はあえて質問を投げかけるケースもある。顧客に不安感を抱かせることなく、納得してもらえる説明ができるかが重要なのだ。
IBM z Systems部門のラボ試験風景
顧客役の試験官(右の2人)に報告をする
"フォロー・ザ・サン" ――24時間365日、世界中から知見を集め問題解決にあたるIBM
今年のT1グランプリでは、竹之内雄悟氏(IBM z Systems部門)、天野義大氏(ネットワーク部門)、遠藤俊氏(マルチベンダー部門)が各部門の1位に輝いた。
竹之内氏は「障害対応は人と人との関係が大きく影響してきますので、お客様と良好な関係を築けるように普段からコミュニケーションを重視しています。IBM z Systemsは基幹系の中でも最重要なシステムであり、大きな影響のない障害であっても即座の対応が求められます。そのため、常に新しい情報をキャッチアップするように心掛けています」と、自身の業務ポリシーを語ってくれた。
また、天野氏は、「クラウド化の大きな流れの中で、ネットワークは重要な要素になっています。自分自身が各種の資格を取得していく過程で身につけた知識が、今回は非常に役に立ちました。また、T1グランプリに参加したことで、お客様の問題を解決するために世界中のIBMの知見を集め、組織一丸となって協力する企業だということを再認識できました」
こうした一人ひとりの技術員の自己研鑽こそが、TSS全体のパワーとなり、信頼感につながっているといっても過言ではないだろう。
最後に、渡邉氏にこれからの抱負をうかがった。
「私どもでは、いわば『フォロー・ザ・サン(太陽をおいかけるように)』という体制で、24時間365日、世界中の拠点にあるサービス・センターやサポート・チームを活用し、世界中の実績と経験を活かしてお客様にサポート・サービスを提供しています。」
「実は、T1グランプリをメディアで公開するのは、今回初めてのことです。TSSが、お客様のニーズにより、IBM製品だけでなく他社製品もサポート・サービスの対象範囲に広げ、お客様本位のサービスをご提供していることを、広く知っていただければと思っています。今後もT1グランプリのような取り組みを実施することで日々の研鑽に力を注ぎ、お客様のシステム全体に24時間365日、安心・安全をお届けできるよう務めてまいります」
――日本全国に展開する拠点網、マルチベンダー対応の保守サービス、世界中の知見を結集したグローバル・ケイパビリティ、これらすべてが、TSSの強みだと言えそうだ。