音声を使った物流業務システムを提供するヴォコレクトジャパンは10月25日、目黒雅叙園でイベント「Vocollect Voice World 2013」を開催した。同イベントでは、人と物の"流れ"に着目し、独特の視点で企業、社会に迫る「渋滞学」を研究する西成活裕東京大学教授の基調講演に始まり、同社のヴォコレクト音声ソリューションを導入、活用している企業が導入事例を紹介。 そして、同社の内田雅彦社長が、ロジスティクスの本質に迫り、"音声"がもたらす最も合理的かつ効率的な"流通"のあり方を提示した。
"音声"がもたらすメリット
ヴォコレクトジャパンが主催したイベント「Vocollect Voice World 2013」は、同社の主力製品である「ヴォコレクト音声ソリューション」の魅力を余すことなく紹介したイベントだ。物流倉庫や工場内の機械化は進んでいるが、未だにピッキング作業などは人の手で行われている。誤発送を含めたミスを起こさないためにも、作業員はハンディスキャナーなどを使い、管理に力を入れている。
ITの進歩は小売店に向かい風になっている一方、アマゾンをはじめとする"通販"やレンタル事業者の"ネットレンタルサービス"が盛り上がり、"流通"に関しては追い風になっている。同時にITの進歩は、"流通"の現場にも恩恵をもたらしているのである。
その一つが"音声"である。
従来、倉庫では「私語厳禁」のルールが課せられている。これは、作業への集中度を増し、効率を高めることを目的としている。ヴォコレクトはこの"声"に着目。従来のようにピッキング対象が書かれたリストを片手に持ち、ピックアップした"物"をハンドスキャナーで読み取る手間を、音声に集約したのだ。
具体的に、音声によりピッキング対象を指示し、作業員も"声"を使って作業の進捗を伝える。手を使うのは物をピックアップする時だけ、スキャンで読み取る手間も省け、作業効率を大幅に向上することに成功。
本イベントは、このヴォコレクト音声ソリューションが描く、流通の本質、そしてロジスティクスの確信に迫りながら、ITの隠れた"可能性"を感じさせる内容だった。
"流れ"がある限り"渋滞"は起きる
東京大学 西成活裕教授
基調講演で登壇したのは、東京大学で教鞭をとる西成活裕教授。同教授は、独特な視点で人や物の"流れ"を研究し、流通はもちろん、企業や社会の"在りかた"を柔らかい口調ながらも鋭い洞察を持って解説。
「渋滞を解消するために考えることは何でしょう？１に道を広げる、二つ目は混雑情報をネットなどを使って知らせる。そして、最後に人に渋滞を起こさないための概念、考えかたを教育する。インフラの整理、情報の提供、人の教育支援、つまりは"ハード"と"ソフト"、そして"人"なんです」（西成教授）
渋滞が起きることで有名な小仏トンネルは、トンネルにさしかかる直前までが下り坂であることが渋滞を引き起こす一番の原因だと指摘する。快調に飛ばしていたが、上り坂の小仏トンネル内で人は感覚的に車間距離を保とうとブレーキを踏む。この行動が、小さな渋滞を多発させ、大きな渋滞に連鎖していくと言う。
渋滞のメカニズムを語る上で、密度と流量についても触れた。自動車が一定の速度で走っていれば、自動車の密度が増えるほど、ある地点を通過する自動車の量（＝流量）も増える。しかし、一定の密度を超えると、流量が激減。つまりは、"渋滞"が起きているのである。実際にこの密度と流量の関係性について、人で実験を重ねたところ、人は１m2以内に1.8人以上が存在すると"渋滞"が起きたそうだ。裏を返せば、1.8m2以下ならば、人は自由に動け、渋滞しないとも言える。西成教授はここに着目。
「小さな渋滞は人間力で解消できる。例えば、渋滞が起きやすい高速道路の合流地点で渋滞を起こさないためにはどうすればよいのでしょうか。莫大な投資をして立体交差を作るのも良いでしょう。しかし、人の心理に"準備期間"を設ける黄色い線を敷くだけでも緩和できるのではないでしょうか？」
つまりは、お互いが"個"の視点、目的だけで行動をするのではなく、「あの車はこちらの車線に入りたいんだ」と気づかせ、お互いを尊重し合うきっかけを作り出す。先に出したように人の渋滞が1m2以内に1.8人が存在することで起きるのであれば、敢えて出入り口前に障害物を設けることで、渋滞も解消できるのではないか、とユニークな実験結果も発表した。実際に障害物がない出入り口より、障害物がある出入り口のほうが素早く人が抜けられているのだ。
「利他行動、他人のために行動すると、全体のためになる。流通には"ブルホイップ効果"がありますが、"流れ"があるところには渋滞も起きます。実は自動車と流通における"在庫数"も同じではないのでしょうか…」
