専用設備を導入せずにデータセンター構築
――データセンターでは、IT機器が出す排熱を解消するための冷却装置や空調設備の電力消費量も問題となっています。
高木 REAL IT COOLプラザの広さは25平方メートルですが、もともと執務フロアとして使われていた場所でして、従来のデータセンターに必要とされる専用の床下設備や空調設備を構築せずに開設しました。そうしたことから、IT機器を結ぶケーブリングはラックの上に置き、ラック型分電盤を設置するなどの工夫を行っています。
また、サーバを冷却するための一手段として、ビルの空調に使われている冷水を活用した水冷システムを導入しています。データセンター内に水冷システムを持ち込むことに抵抗感がまだまだあるようですが、米国のデータセンターの多くが水冷を活用しています。そちらの方が設備として安いですし、効率が高いからです。この水冷システムを活用して、局所冷却装置「InRow RC」(米APC製)や、サーバなどから排出された熱い空気が集まる場所“ホットアイル”の上に天井を設置して、熱い空気を閉じこめることで冷却効率を高める仕組みである「Hot Aisle Containment System」(HACS)も導入しています。
また、REAL IT COOLプラザ内には、ラックや壁に100個以上のセンサーを設置して、電力と温度をリアルタイムに監視することでデータセンターの状態を一目で把握できるようになっています。更に統合運用管理ソフトウェア「WebSAM SigmaSystemCenter」と「WebSAM MCOperations」により、運用面における省電力化が実現できます。例えば、負荷の高い業務の片寄せを行い余剰サーバの電源を自動的に切ったり、業務負荷に応じたサーバリソース変更をポリシーベースで自律運用し、低負荷のサーバリソースを有効活用するなど、省電力運用が可能となります。
現在のPUEは“1.58”
――データセンターのエネルギー効率を把握する指標として「PUE」(Power Usage Effectiveness)が注目されています。REAL IT COOLプラザのPUE値は?
高木 REAL IT COOLプラザのPUE値は“1.58”程度ですが、今後ハードウェア機器を増設強化していくと“1.4“程度まで効率を上げることができると考えています。将来的には“1.0”にまで持っていきたいと思っています。PUEが“1.0”というのは、理論上の最高値になるわけですが、外気で冷却したり、排熱を有効利用したりすることで、空調や冷却などの設備を一切使わない究極のクーリングを実現したいと思っています。こうしたさまざまな点から、REAL IT COOLプラザは次世代データセンターのリファレンスモデル、つまり“お手本”になるものだと思っています。