海上忍の戦略
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社内回覧を例にBranchCacheを説明してみる
社内回覧の良かったところ、悪かったところ
かつて会社勤めをしているとき、1人1台のPCなど「とんでもない!」というアナログ全開の時代ですが、部内での連絡事項は「回覧」が基本でした。部員の名前が(もちろんヒエラルキー順に)書かれた紙片を回覧物の右上にホッチキスで留めて、認印を押すことで「目を通したよ」という意思表示を示すものです。
職場にグループウェアは当たり前のいま、回覧が一巡するまで時間がかかる、エコじゃない、若い人に至ってはなにそれ?という声も聞こえてきそうですが、回覧なりの利点もあると思うのですよね。
それは「リソースの使い回し」です。回覧は1枚の印刷物を使い回すので、必要な紙は1枚のみ、印刷/コピーも1度きり。誰が見たか/見ていないかの確認も視線を移すだけで終わりますから、この点ではどのグループウェアより有利かもしれません。もっとも、機密情報を扱いにくいという紙ゆえの特性がありますし、廃棄に要する人的/時間的コストもありますから、デジタルから逆戻りすることは現実的ではありません。それに、ちょっとルーズな人のところで滞留してしまうという、大いなる欠点もあります。
「滞留」がメリットになるBrancCache
デジタルの世界では、データを使い回す方法の1つに「キャッシュ」がありますね。ウェブの場合、キャッシュサーバやプロキシサーバがこの機能を提供します。もう1つは「複製」で、Windows Serverでは分散ファイルシステム(Distributed File System、DFS)が知られています。
Windows Server 2008 R2とWindows 7の新機能「BranchCache」は、そのウェブキャッシュとDFSのいいところを合わせ持つと理解しています。広範囲に支店や営業所を持つ企業の場合、本部から配布される資料が大量にあるはずで、それを支店メンバー各人がダウンロードするのは非効率(帯域のムダ)ですが、BranchChacheの「分散キャッシュモード」は、自動的にダウンロードの有無を確認し、すでにダウンロードされている場合はキャッシュされたデータを使用します。
BranchCacheには、キャッシュ専用のサーバを設置する「ホスト型キャッシュモード」もありますが、支店メンバーがそれとは知らずリソースを使い回す分散キャッシュモードのほうが私には興味深いですね。紙の回覧物とは180度異なり、「滞留」が効率性と生産性アップに貢献しているところも、おもしろいと思います。
海上忍(フリーランス ITジャーナリスト)
おもにUNIX系OSを対象として機能解説やレビュー、コラムなどを執筆。近年はbuilder by ZDNet JapanやSoftware Re:Sourceなど、ウェブメディアを中心に活動を展開。
著書は「Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(技術評論社刊)など30冊以上。マイクロソフト社製品との付き合いはN-BASICにはじまり、MS-DOSやWindows NTなどのOS、ExcelやWordといったアプリケーションソフトまで広範囲に及ぶ。
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