新規事業の取り組み方 〜 戦略的“不真面目”のススメ

プライマル株式会社

2015-06-16

なぜ新規事業のほとんどが失敗するのか?
日本の企業からイノベーションが生まれないのは何故か?
最近ではこういった議論も珍しくなくなってきました。
イノベーションや新たな事業という文字をメディアで見ない日はないといっても過言ではないでしょう。
どの議論も意見も間違っているとは思いません。
ではなぜ、正しい解にたどり着いた実感を誰もが持てないのか?

我々プライマル (»リンク) は400以上の新規事業プロジェクトに関わってまいりました。
新規事業に特化し、これだけ多くのプロジェクトに関わってきた経験を持つ会社は稀有なのではないかという自負があります。
そして、今度はあまり胸を張ってできる話ではないのですが、同時に多くの失敗プロジェクトに関わることにもなりました。
正直に申し上げると、失敗したプロジェクトの方が多いのです。
なので、なぜ失敗するのかについて考える機会も多くありました。
なぜイノベーション、新規事業がうまくいかないのか?
もちろん、失敗の原因はプロジェクトによって様々で、一つのプロジェクトにおいても複数存在します。
しかし、一つだけ、どのプロジェクトにも共通している原因があります。

それは、

既存事業での成功体験、やり方を
新規事業に当てはめてしまう。

というものです。

書いてみると極めてシンプルで、すぐにでも克服できそうな課題に思えませんか?

私もそう思います。

けれど、この失敗原因を認識することは難しく、頭で理解できても実際に現場において実行するのは至難の業なのです。
なぜなら、ほとんどの会社において仕事≒既存事業だからです。
そして会社が一生懸命になればなるほど、成功させようとエース人材や大金を投入すればするほど、この失敗原因を強化してしまうというパラドックスが存在します。
なんだかせつない話です。

真面目に一生懸命とりくんでいることが仇になるなんて。。。
真面目に一生懸命は日本企業の美点であるはずです。
でも実はそれこそが、名だたる大企業からパッとした新規事業が出てこない原因でもあるのです。

これから当ブログにおいて、“不真面目”について真面目に検討していきたいと考えております。
真面目に真面目を追求するのが既存事業であるなら、真面目に“不真面目”を追求するのが新規事業の秘訣だと考えているからです。
分かったような、分からないような、禅問答のようになってきてしまいました。
従ってここからは、真面目な不真面目、言いかえれば、“戦略的不真面目”についてより具体的に検討していきたいと思います。

その前に一つ。
読んで頂けている方々の意見も頂戴しながら、双方向で進めていければと思っています。
よろしければ、コメントを是非よろしくお願いいたします。

まず、新規事業と既存事業はどのように違うものなのでしょうか?
一覧に整理してみました。
(元記事参照: (»リンク) )

●既存事業と新規事業の特性比較

図表 (»リンク) では、ビジネス要素別に既存事業と新規事業の特性の違いに触れていますが、共通して言えることは、

 既存事業=過去の経験・知見(成功モデルのベンチマーク含む)が活きる
新規事業=経験・知見が参考程度・あるいは想定のレベルで、つまるところ全てが不確実、

に集約されていると考えています。

既存事業は、経験曲線効果が語られるように、長い年月を経てビジネスシステムが洗練化され、且つグローバルに同業種での成功企業が存在していることから、過去あるいは成功モデル等の知識・経験を活かした、成功確度の高い企画、計画をたてることができます。
既存事業はその計画による経済効果が大きいことから、グローバルな戦略系コンサルティングファームを利用して(企画段階で大きな予算を投じる)、既存事業の事業戦略・計画をたてることは、とても経済合理性があると思います。

一方、新規事業は、世の中にない新しい事業、世の中にはあるが当該企業にとっての新規事業どちらにしても、未経験であり、企画/計画は想定の範囲で終わってしまいます。こちらは、単純なベンチマークなどでは潰しきれない要素を残しており、どうしても「やってみないと分からない」類のものになります。

新規事業は、「やってみないと分からない」、不確実な要素が多いものであり、実行の中で試行錯誤や創意工夫を経て最適化されていく、また収益化まで一定の時間がかかる(あるいは収益規模も大概は既存事業よりも小さい)ものなので、企画段階に膨大な時間とお金を費やすことはあまり賢明な選択ではないと想定します。

●新規事業取り組みの実際は?

新規事業企画で戦略系のコンサルティング会社に発注する、あるいは十全な市場調査を行う、議論に議論を重ね、内部調整し(何度も事業計画書を書き直し)、1年近く企画・計画に時間とお金を費やすといったケースを見かけます。
最終的に承認されればよいものの、結局経営資産を活用できない形で展開する(強みを活かすことができない、成功確度が低い)、企画検討中に多くの会社が参入してしまい面白みが薄れてしまう、あるいは、新規事業企画検討が最終的には通らない/意志決定されない場合もよくある話かと思います。
または、計画を全て鵜呑みにして膨大な事業開発投資を初期段階から行い、市場環境は変化したにも関わらず修正がきかず失敗に終わる。あるいは初期段階の開発投資はあるが、その後のプロモーション投資予算が枯渇してしまい、結局ユーザーが集まらず失敗に終わる。こうした、立ち上げた後の柔軟な対応ができずに失敗してしまうケースも見かけます。

こうしたケースは、まさに既存事業のやり方を新規事業に当てはめてしまっているが故に発生している課題ではないか、と想定しております。
つまり新規事業の投資判断において、既存事業の経験、やり方、投資指標、承認プロセス等を前提としてしまう、また新規事業立ち上げ後も既存事業同様の計画を重視するやり方で進めてしまう、という理由が課題と認識しています。

しかし、新規事業は事前検討で全てが検証できる訳ではなく、むしろ、新規事業立ち上げ後、新規事業の成長努力・やりながらユーザーのニーズを掘りおこしたり、代替/競合との差別性を高める「継続的な事業成長努力」を通して始めてその事業を成功へ導くことができるものと理解しています。

充実した都市インフラがある先進国都市部を旅するのと、登山など、制御できない自然環境の中で旅行するのとの違いに等しいでしょう。
登山等は、当然入念な計画はするも、自然環境変化:雨天、雪、気温、メンバーの体調、想定外の事件が起きた時の場所など、あらゆる環境変化に合わせて、その計画をその場その時に応じ、登り切るのか、引き返すのか、避難するのか、計画変更をする能力が求められます。

それは、新規事業の取組みに通ずるものがあると思います。

●新規事業の特性を踏まえた取組み方針案

不確実性が高い新規事業の特性を考え、我々が考える新規事業の取組み方針は、以下の7つのポイントが重要になると考えています。
(図表:元記事参照: (»リンク) )

・新規事業企画フェーズに完璧さを求めない
 6割のfactと、面白み(他社にない)企画/計画で、新規事業に挑戦する
 (その新規事業企画内容/投資額によりますが)

・既存事業とのカニバリ/コンフリクトも、ある程度許容する
 ある程度既存事業とのコンフリクトを許容する寛容さがないと、どうしても関連部局からの「できない理由」が列挙され、物事が進まない、意志決定されないケースをよく見ます。結局既存事業の資産を生かし切れず(会社の強みを活用することができず)、ベンチャー同様のリソースで、しかも柔軟な意志決定ができない形で新規事業を展開する、袋小路にはまってしまうケースもよく見ます。

・既存事業とは異なる予算配分にする
 既存事業のように企画・戦略・計画フェーズにおけるコストを下げ、むしろ開始後の計画変更施策予算を大きくとる。それが次項の環境変化等への柔軟な対応の前提にあると思います。

・開始後も想定外の課題に柔軟に対応できるようにする
 新規事業を開始は始まりであり、環境変化に合わせて「修正施策」を柔軟に打てるように、予算を持ち、権限を与えスピーディーに対応できるようにする。新規事業開始後1年程度は、検証期間と捉えて、目標は設定するも、柔軟な対応を許容することが重要と想定しています。

・マイルストーン型の投資にする
 四半期等細かくKPIを設定し、そのKPIをクリアする度に投資を行うようなマイルストーン型にする。最初から十全な予算をとり余裕のある新規事業投資を図るはなく、リソースがない中で苦労しながら新規事業を推進する。
「最初からあれもないと、これもないと、始められない」というお強請り型は、新規事業担当を甘やかしてしまい、環境変化に柔軟に対応できる強い組織にならないと想定しています。
また、予算取りの手続きが面倒だから一気に承認を得たい、といった話しも耳にしますが、新規事業についてはKPIと予算執行の計画を踏まえ、その追加予算手続きを簡素に進められるという環境整備も重要と想定します。

・起案者にやりきらせる
 思いのある起案者を外さない、やりきらせる: 成功モデルが見えるまでは、何とかするという経験をつむ。よく、企画をする人と実行する人が別れてしまうケースをよく見ますが、不確実性の高い領域において、心が折れないのは、やりたい/やるべきという意志のはっきりした起案者がやりきることが重要だと想定しています。

・多様性のあるチーム作り
 起案者、新規事業経験者(不確実性への耐性がある、課題発見に長けた、何でもこなすジェネラリスト)、業界経験・知見のある専門家、自分マーケティングができるターゲットユーザーと同感できるメンバー、ベンチマークしている事業の経験者、国籍、年齢など多様なメンバーが意見を戦わせ、切磋琢磨しながら推進できる組織が望ましい。

結局、成功しているベンチャーの方々も、30−40%の確実性の中で意志決定し、あれこれ苦労しながらも、覚悟をもってやり抜いてきていると認識しています。
これは、ベンチャー、大手企業の新規事業という出生の違い関係なく、普遍的な新規事業の取り組み方であると認識しています。

弊社プライマル (»リンク) は、知識型の従来コンサルティング会社とは異なり、新規事業という不確実性に対応したビジネス傭兵を抱え、企画・計画だけでなく、泥臭い試行錯誤・創意工夫を繰り返す「実行力」を重視しています。
日々ビジネスの基本動作を大切にし、クライアントワークだけでなく、自社新規事業も推進し、新規事業「経験」を数多く行える環境にて、強いビジネスジェネラリストの育成、組織作りを愚直に行っております。


(元記事参照: (»リンク) )

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