APC by Schneider Electric 「SOLUTIONS FORUM 2010」 エネルギー高効率化を実現するデータセンターとは

[PR]7月に都内で開催されたAPC by Schneider Electric 「SOLUTIONS FORUM 2010」では、TCO削減、グリーン化を実現する同社のデータセンター向けソリューションのすべてが紹介された。

  2010年8月6日 12時00分

データセンターのエネルギー高効率化はコストと環境の両面で必須

APC by Schneider Electric 「SOLUTIONS FORUM 2010」のオープニングでは、シュナイダーエレクトリックホールディングス株式会社カントリープレジデント兼、エーピーシー・ジャパン代表取締役社長の内藤眞氏は、Schneider Electricグループの今後のミッションは「エネルギーマネージメント」であると語る。170年前に創業したSchneider Electricは時代の変化とともに鉄鋼から電機へとその事業領域を移してきたが、現在では電力をはじめとするエネルギーを管理・最適化し、企業の生産性向上や社会のグリーン化を実現するための技術・製品やサービスをキービジネスに位置づけている。

内藤 眞 氏 内藤 眞 氏

Schneiderグループ内でAPCはITの事業を担ってている。内藤氏は「現在、日本の電力消費量は1年間に約1兆kWhだが、人口が増えるわけではないにもかかわらず2025年にはその2割増になり、増える部分のほとんどはIT周辺機器に起因していると言われている。また今後のIT周辺機器はユーザーの手元ではなく、データセンターに集約されていく」と話し、データセンターのエネルギー効率化はこれからの社会に不可欠であることを強調。定格250kWの従来型データセンターにAPCの冷却システムを導入することで、TCOは53%の削減、CO2排出量は39%の削減が可能という数字を挙げ、コストと環境の両面で同社のソリューションが極めて有効であることをアピールした。

エネルギー使用現場における改善をけん引する「IE企業」

内藤氏に続き、APC出身で現在はSchneider Electric社のCMO(Chief Marketing Officer)を務めるAaron Davis氏が登壇し、増大するエネルギー需要と迫られるCO2削減という相反する要求に対し、同社がどのような解決策を提示できるかを説明した。

Aaron Davis氏 Aaron Davis氏

地球温暖化が破滅的な災禍をもたらすのを回避するための、人類に残された時間は少ない。Davis氏はこの先10年の間にどれだけ有効な対策を打てるかによって我々の将来は大きく左右されると見ている。

電力が生み出されてから消費されるまでに目を向けると、さまざまなエネルギーを発電機で電力に変える発電、送電線や変電所を経由して必要なところまで電力を届ける送電、そして実際に電力を使用して目的を達成する使用現場と、大きくわけて3つのプロセスが挙げられるが、このうち発電と送電についてはこの先10年間で抜本的な改善を図るのは難しい。再生可能エネルギーが主流となるにはまだまだ時間がかかるし、世界中の送電網を新しいものに総入れ替えすることは現実には無理だ。10年の間に大きく改善できる可能性が残っているのは、電力の使用現場である工場やビル、データセンターなどである。ここでAPCのデータセンター向けソリューションが重要になってくる。

ITが消費するエネルギーのコストはエンドユーザーから見えにくいという問題もある。石油価格が上がれば、自動車の代わりに電車などでの移動を検討する人が出てくる。しかし、石油価格が上がったからといってWebサービスの利用を控える人はいない。Davis氏はこの状況を「データセンターはデジタル経済に対して責任がある」と表現する。

しかも、これまでのITが人対人、人対マシンのやりとりだったのに対し、今後マシン対マシンの通信が広がると、そこで消費されるエネルギーは指数関数的に増加すると考えられる。コンピューターの歴史を振り返るとわかるように、ITを使用するコストは時代を経るごとにますます安くなっているが、その基盤となっているエネルギー価格は上昇しており、しかも需要がこれから爆発的に増え、負担をエンドユーザーに転嫁することも難しいとなると、製造業に限らずあらゆる企業にとってエネルギー支出が大変な重荷となる可能性が高い。「一般的な企業にも、これからは『IT部門』と同様に『エネルギー部門』ができるかもしれない」(Davis氏)

ただし、スマートグリッドの考え方に見られるように、エネルギーの効率化・最適化を実現するのもまたITである。Davis氏は、ITとエネルギーに共に精通し、両技術を統合して新しい価値を提供できる「IE(インテリジェント・エネルギー)企業」がこれからの社会で重要な役割を果たすと主張。「そのリーダーが我々である」と述べた。「今日最も言いたいことは、我々の製品を買ってほしいということではない」と続け、宣伝のためにエネルギー問題を取り上げたのではなく「もっと若い人とこういう話をしてほしい」と訴える。エネルギーと地球の問題は世代を超えて共有すべき事実であり、我々の子供、孫の世代が努力を引き継いでいくことによって解決できると述べ、講演を締めくくった。

建設業界によるデータセンターの将来像の提案

「データセンターの高効率化」というとIT業界のみの取り組みとしてとらえられかねないが、実際にファシリティ(建物・施設)としてのデータセンターを形にするためには建設業界の力が欠かせない。スーパーゼネコンと呼ばれる最大手クラスの総合建設業者は、データセンターの建造に関しても高い技術と豊富な実績を有している。

picture1 パネルディスカッション:ITとファシリティの融合

今回のフォーラムでは「ITとファシリティの融合」と題されたパネルディスカッションを開催。大林組 設計本部 設備設計第一部 担当課長の相沢則夫氏、鹿島建設 iDCプロジェクト室 室長の市川孝誠氏、清水建設 技術ソリューション本部 IDCプロジェクト室 室長の郷正明氏、竹中工務店 エンジニアリング本部 データセンター推進担当副部長 後神洋介氏の4名を招待し、日本のデータセンター市場の特徴、ITベンダーへの要望、将来のインフラとしてどのようなデータセンターを提案するかといったテーマについて議論が交わされた。ファシリテーターは東京大学大学院 情報理工学系研究科教授の江? 浩氏が務めた。

(株)大林組 設計本部 設備設計第一部 担当課長 相沢 則夫 氏 (株)大林組
設計本部 設備設計第一部 担当課長
相沢 則夫 氏

大林組の相沢氏は、多くのデータセンターの空調で主流の床吹き出し方式に対し、同社の研究で有効性が確認された天井吹き出し方式「クールエアキャプチャ」を提案。床吹き出しでは風速によって冷気のロスが起きたり、ラック全体に冷気が行き渡らなかったりといった問題があったが、天井から下向きに冷気を吹き出すことで、コールドアイル内にまんべんなく冷気が保持され、同社の試算によれば25%の空調消費電力削減が可能になるという。また、ラック毎に設けたセンサーでIT機器の電力や温度を測定し、天井の空調ファンと連動した制御が可能になれば、さらなる効率化が可能となる。ITベンダーに対しては、IT機器の温湿度条件に関して「機器がどの程度まで大丈夫なのか、本当の数字を知りたい」と呼びかける。温度条件を1〜2℃緩和できるだけでも空調の消費エネルギーを削減でき、もう少し乾燥した環境が許されるならば、日本でも冬場の外気冷房をより柔軟に導入できる可能性があるという。

鹿島建設(株) iDCプロジェクト室 室長 市川 孝誠 氏 鹿島建設(株)
iDCプロジェクト室 室長
市川 孝誠 氏

鹿島建設の市川氏は、日本のデータセンターが世界市場で生き残っていくための課題を分析。データセンターの評価基準としては、Uptime Instituteの「Tier」がよく知られているが、日本の商用電源の信頼性や日本製品の故障率の低さを考慮すると、Tier基準をそのまま国内のデータセンターに適用するとオーバースペックになりかねないと指摘する。例えば、東京電力の停電回数・時間は、過去10年で最悪だった年を見てもTier 4基準より信頼性が高い。日本は地震国と呼ばれるが、建築基準が厳しいため、実際の地震リスクを評価するとカリフォルニアよりも低いという試算もある。市川氏は「日本のデータセンターは、運営する人にスキルや気持ちがある」とも話し、スペック表や米国基準には現れにくい本当の意味での高信頼性を海外に広めていく必要があると訴えた。

清水建設(株) 技術ソリューション本部 IDCプロジェクト室 室長 郷 正明 氏 清水建設(株)
技術ソリューション本部 IDCプロジェクト室 室長
郷 正明 氏

清水建設の郷氏は、データセンターの与条件はIT企業の事業形態、エンドユーザー、社会の動向などに常に左右され変化し続けるが、そうであっても「最先端であり続ける」ことが求められると話す。同社では、機器が設置されるサーバー室に、UPSと空調機を加えた構成を「1ユニット」とするユニット化によって将来の変化・拡張に対応する設計を検討している。データセンターに最低限必要な設備をユニット毎に完結させることで、稼働後に要求スペックが変化した場合もセンター全体を再設計することなくニーズに応え続けることができる。また「クラウド化が進んでいけば、データセンター間の連携も進む」と述べ、金融など特に高い信頼性が求められる業種を除き、単体のデータセンターの信頼性を高めるよりも、データセンター同士でバックアップするような仕組みによって信頼性を担保するといった考え方が今後広がるとの見方を示した。

(株)竹中工務店 エンジニアリング本部 データセンター推進担当副部長 後神 洋介 氏 (株)竹中工務店
エンジニアリング本部 データセンター推進担当副部長
後神 洋介 氏

竹中工務店の後神氏は、日本のデータセンター市場に特徴的な都心部需要に対応するために同社が開発した「2層フロア構造」を紹介。床下のフリーアクセス部分を広く取り、逆梁トラス架構形式をとることで、サーバー室の無柱化による増床、空調効率やメンテナンス性の向上などを図っている。一方で、都心一等地のデータセンターを好む日本の需要は特殊であることは同社も認識しており、地方への分散にも期待しているという。また、日本の商用電力は信頼性が極めて高く、「多くの非常用発電機はおそらく一生仕事をしないだろう。燃料も試験運転で燃やすだけで時期がきて捨ててしまう」と指摘。データセンターの環境対応では発電機や燃料をムダにしない仕組みも考えていく必要があるとした。そのほか「かつて“インテリジェントビル”を手掛けていた当時はかなりITベンダーと相談をしたが、今はベンダーの技術開発が急速なため、ベンダーからゼネコンへの要求は一方通行。初めから『耐荷重1トン、階高5m』で建てなくても、もっとライトスペックで、建築とITを一緒に納めていく最適解もあるのではないか」とコメントし、建設とITの相互提案によるさらなるデータセンターの高効率化・最適化を示唆した。

東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授 江? 浩 氏 東京大学大学院
情報理工学系研究科 教授
江? 浩 氏

進行役を務めた東京大学の江?氏は、ハードウェア等の構成要素は同じでも、設計次第で大きく効率が変わってくるのがインフラであると指摘。今回の議論を通じて、データセンター市場では「建築と電機と情報が融合する方向」にあり、建設業界側はIT業界と対話を深める用意があることが確認されたとした。多様化するニーズに対応し、グローバルで激化する競争に勝ち抜いていくためには、「ITとファシリティの融合」の流れは不可欠であるとの結論でこの日のフォーラムは幕を閉じた。

 

世界に先駆けて公開された冷却ソリューションの新製品「InRow® OA」

今回のフォーラム開催にあわせ、エーピーシー・ジャパンは局所冷却システムの新製品「InRow® OA」を発表し、会場に設けられた展示コーナーで実機を公開した。

picture1 局所冷却システムの新製品「InRow® OA」

従来の「InRow®」冷却システムはIT機器を搭載したラックの列内に置かれていたのに対し、「InRow® OA」はホットアイルの上部を覆うような形で設置されるのが特徴。IT機器から排出された熱気を本体の底面から直接吸い込むため、熱気が冷気と混じることなく効率的に冷却を行うことができる。しかも設置に際して、既存のラックシステムに変更を加える必要がない。また、装置が頭上に設置され、本来ラックを配置するためのスペースを冷却装置が占めてしまうことがないので、スペースコストの高い都市部のデータセンターでも場所を有効に活用できる。

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システムは大きく分けて本体と、RDU(Refrigerant Distribution Unit:冷媒分配装置)の2つの部分から構成される。InRow® OA本体とRDUとの間は冷媒配管で結ばれ、IT機器から発生した熱は冷媒によってRDUへと運ばれる。RDUでは温められた冷媒を冷水によって冷却する。RDUはサーバー室外に設置しても良い。このようなシステム構成を取ることで、サーバー室内に水配管を導入する必要がなくなり、室内への水の導入を禁止しているデータセンターにも設置が可能となることに加え、RDU自体には建物の既存冷水システムを利用できるため、導入コストを節約できる。ランニングコストに関しては、コンプレッサーを使用する冷媒直膨システムに比べ低消費電力で、最低負荷要求がなく0-100%の容量制御が可能な点などがアドバンテージとなる。

既存ラックシステムへの導入を容易にするため、マウントキットや天吊り用のロッド、熱気をホットアイル内に封じ込めるエアーコンテインメントカーテンなどのオプションも合わせて提供する。

picture1 「HACS(Hot Aisle Containment System)」

展示会場にはそのほかにもAPCのデータセンターソリューションがずらりと並び、電源や空調、管理システムを体系化した統合ソリューション「InfraStruxure」や、ホットアイルの出入口や天井をふさぎ、熱の再循環を防ぐことで冷却効率を向上させる「HACS(Hot Aisle Containment System)」をはじめとする製品群が展示された。

列単位での局所冷却、熱の封じ込め(「HACS」)といったAPCの取り組みは、年々実績を重ねてきたことでベンダーやユーザーへの認知が確実に広がっている様子。展示会場では、データセンターのグリーン化・高効率化や最適化を目の前の課題ととらえ、真剣な表情で製品の説明に耳を傾ける来場者の姿が印象的だった。

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ホワイトペーパー
http://japan.zdnet.com/extra/apc_sf2010_201008_02/story/0,3800107446,20417132,00.htm
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