「イマーシブ」はコンピューティングのメインストリームとなり得るか?

コンピューティング環境にユーザーを没頭させようという「イマーシブ(没入型)コンピューティング」が提唱されている一方で、若者に限らず多くの人々は、ほかの作業をしながらパソコンを使う「ながら」的な使い方になじんでいる。

文:Gordon Haff(Special to CNET News.com)
翻訳校正:川村インターナショナル  2008年12月24日 08時00分

 2008年12月の第2週は東海岸での仕事が入っていたため、カリフォルニアで開かれたCiscoのC-Scape Global Forum 2008(12月9日〜10日)には参加できなかった。その代わりにTwitterで同イベントに関するチャットの一部を「のぞき見」することができた。驚くことではないが、動画や、動画を使って実現されるコラボレーションに関して、多くのことが語り合われていた。

 さほど驚くことではない、といったのは、動画の活用についてはこの数年間Ciscoが派手に宣伝してきたことだからだ。また、もっともな理由もある。Ciscoはネットワークインフラストラクチャを製造している。動画はネットワークのインフラストラクチャを消費する。つまり、Ciscoの最高経営責任者(CEO)であるJohn Chambers氏の立場でいえば、Ciscoは動画を素晴らしいものにできるというわけだ。

 動画の利用が増え、動画がより高品質になっていることは、現実と錯覚するほどの臨場感を実現し(没入)、よりリアルに、さらにマルチメディア化するコンピューティングに関する一般的なテーマの一部のようにも思える。結局のところ、室内アンテナで白黒テレビを見ていた世界から、リモート操作で数回クリックするだけで高画質の映画をフラットパネルテレビに映し出せる世界への変化に私たち皆が否応なくのみこまれてしまったことは疑う余地もないということなのだ。あるいは、ほとんどのゲームは言葉通り「現実的」ではないとしても、可能な限り感覚を刺激して、プレーヤーをゲーム空間に引き込もうとしているのは明らかだ。かつてInfocomの広告に「あなたの想像力の無限のイメージからのグラフィックス」とあったようにテキストアドベンチャーゲームは確かに想像力をかき立ててくれるかもしれないが、今どきのゲーマーは「Xbox 360」で「Halo 3(ヘイロー3)」をプレイするほうを好む。

 しかしこの筋書きには問題がある。根拠となる証拠はそれなりに十分あるが、説得力のある反例もある。コミュニケーションテクノロジを例に挙げてみる。

 Bell Systemが「PicturePhone」の最初の試作品を開発したのは1956年だ。それ以降、カメラの利用を電話をとることと同じぐらい日常的なものにすることを目指したさまざまな製品やテクノロジがでてきた。しかし、IntelのCEOだったAndy Grove氏が愛用していた自社の「ProShare」にしても、ウェブカメラや「PictureTel」のようなビデオ会議システムにしても、ビデオが音声電話が歩んだ道に続くメインストリームとして開発されることはなかった(プロフェッショナル向け放送機器はもちろん除く)。

「The Pervasive Datacenter」 のバックナンバー

http://japan.zdnet.com/extra/green-enterprise/datacenter/story/0,3800089561,20385618,00.htm
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IBMのGreen Enterpriseへの取り組み