Solarisでは「投資保護」というポリシーの下、バイナリ・ソースコード共にバージョン間の互換性をトッププライオリティで維持している。そのため前バージョンまで使えていたはずの機能が、新しいバージョンへの切り替えにより、使えなくなることはない状態であるという。
新機能の導入には慎重にならざるを得ないのは否めないが、増月氏よるとバージョン問わず使えるものを提供するというリリース体制によるものであり、結果として、アプリケーションの有効活用、バージョンアップに伴うリスク低減に繋げているとのことである。
バイナリ互換が保証されることで、アプリケーションはそのままの状態でプラットフォームのみを更新することが可能になる。また、パッチ更新や設定ファイル変更の際に毎回システムをリブートさせる必要が無い。Live Upgrade 機能を使用して稼働中のシステムをアップグレードすることも可能である。業務を継続させたままでプラットフォームを更新できるのは既存ユーザーにとって大きなメリットとなるだろう。
Solaris上で稼動するソフトウェアを開発・販売するISV各社にとっても大きなメリットとなる。 「Solarisのバージョンアップに伴い、自動的にそのバージョンで稼動できるソフトウェアの開発・販売に繋げるようにしています」(増月氏)。 バージョンアップごとの自社製品の稼動確認が容易になるのもバイナリ互換がもたらすメリットといえるだろう。
また、ソースコード互換の保証により、たとえばSolarisを稼動させるハードウェアをx86からSPARCのマシンに切り替えるとしてもアプリケーションのソースコードをリコンパイルさせるだけで済む。さらにSolarisではSPARC、x86(EM64T含む)、AMDといった多様なCPUに対応するため、ユーザーにとって最適なハードウェアを選択できる。「ラップトップからスーパーコンピュータまで一貫してSolarisは稼動します。スーパーコンピュータで開発を行うのは難しいかと思いますが、Solarisであれば開発用マシンでアプリケーションを開発しておき、それをスーパーコンピュータに移すことができます」(増月氏)。ISV各社にとってみても、Solarisに対応した製品であれば、多様なハードウェア上での稼動をサポートすることになり、ハードウェアごとに製品を移植するコストを低減させることにつながる。
2005年6月に公開されたオープンコミュニティ OpenSolaris(英語版 / 日本語版)は、登録コミュニティメンバー数が6万人に近づいており、ディスカッショングループのポスティング総数は12万件に達する。「一般的なコミュニティよりも速いペースで成長している」(高松氏)という活動の盛り上がりを覗わせる。高松氏によると日本からの訪問者比率は国別で米、英、独についで4位とのことだ。「日本からの訪問者は多いものの、活動へ積極的に参加し、発言する参加者は欧米に比べて少ないかもしれませんが、徐々に増えてきています」(高松氏)。
コミュニティの活性化が、ひいてはSolarisの更なる機能・精度向上に発展する点に今後も期待していきたい。