前述の通り、Solaris 10 8/07ではx86版Solaris上でLinuxのバイナリを実行するSolaris Containers for Linux Applicationsも追加されている。これはZone機能を応用し、1つのZone上においてLinuxアプリケーションを実行する環境(lx zone)を生成する事が出来るようになった。
大曽根氏によると「この機能はSolaris 10発表時にアナウンスしたLinuxバイナリ実行環境であるJanusとは違う形で実装されています。しかし、ユーザーの意見を集約すると、このような形で実装するのが良いと判断しました」と語る。また、このlx zoneで構築されるLinux環境はRed Hat Enterprise Linux 3 Update 5〜Update 8またはCentOS 3.5〜3.8に相当する環境であるが、この環境を選択した理由も「ユーザーの意見としては、このあたりのLinuxを利用している方が多いことから選択しました」と語る。この理由については「私達としては、最終的にはSolaris 10上でお客様の全サーバを動作できるようにしたいと考えています。しかし、現在あるサーバを集約する際、すぐにSolaris 10に切り替えできないLinux環境が残っていることも事実です。まずはこのような環境をlx zone上に移行して動作させ、それと平行してサーバの機能をSolaris 10上で実行できるようにして頂く事をお奨めします」と語る。
lx zone機能を実際に検証した梶野氏は「lx zone自身は既にNevadaに搭載されていましたので、Solaris 10 8/07とNevadaにおいて機能やパフォーマンスにどのような差が出るかベンチマークを行ってみました。結果としては、Solaris 10 8/07のlx zoneではNevadaと比較してファイルアクセスで3倍以上のパフォーマンスを発揮しました。単純にNevadaからポーティングするだけでなく、さまざまなチューニングが行われ、これだけの性能向上が見られたということに驚いています」とlx zoneの能力を高く評価する。
以上のような大きな機能追加だけでなく、細かい部分でもさまざまな改良が行われている。x86環境においては、SATAのタグキューイングのサポートやX環境がX11R7.2ベースへのアップデート、従来は別途ビデオカードベンダーから提供されていたNVIDIAのグラフィックドライバが統合されるなど、デバイスサポートの拡充が行われている。
またウェブブラウザとしてFirefox 2.0、メールクライアントとしてThunderbird 2.0が採用、メニューの日本語化も行われている。更に日本語フォントに関してもJISX0213:2004に準拠したものになるなど、デスクトップ環境としての充実も図られている。
大曽根氏は「社内のクライアントとしてもSolaris 10は利用されていますので、クライアントとしての機能充実も行っていきます。ワークステーションとしてCADや設計分野での利用もありますし、デスクトップとして利用するユーザーを軽視することは決してありません。また、Solarisはx86からSPARCのハイエンドまでプラットフォームに依存する部分を除けば同じソースコードでアプリケーションが開発できます。その開発環境としてのデスクトップ利用も無視できません」とSolaris 10は決してサーバとして利用するだけのOSではないと語る。
取材の終わりに梶野氏はSolaris 10 8/07への期待を語ってくれた。「私達はSolaris 10登場時にx86環境下でLinuxとのパフォーマンス比較を行っています。この際、『安定性』『パフォーマンス』のどちらにおいてもSolaris 10が優位であるという結果が出ています。Linuxの登場でコストパフォーマンスを重視するユーザーにとってPCサーバというプラットフォームが台頭してきましたが、上位のRISCサーバで動作していたSolaris 10がPCプラットフォーム上でも利用でき、安定性・パフォーマンスでもLinuxを凌ぎ、さらに運用コストでもLinuxよりも低コストで済むようになっている現在、積極的にx86サーバ+Solarisを提案していきたいと思っています」
今回のSolaris 10 8/07によって、「あるべき姿」になったSolaris 10。これによって運用環境の充実などが図られ、機能も強化されたことにより、市場シェアを更に拡大していくことは間違いないだろう。