最近、このようなOSSを利用した業務システムの構築は、ウェブ系サービスで見られるようにスモールスタートでサービスを開始できるものが増えている。このようなビジネス利用の場合、急激にサービスの利用が増加することでシステム増強のニーズが発生することがある。だがSolaris 10+PostgreSQLのスケーラビリティであれば、システム全体の組み直しをせずに、ハードウェアの増強で済むことも多い。
また、クラスタリングに関しても、サンのクラスタリングソフトウェアである「Sun Cluster」にPostgreSQLのエージェントがある。クラスタリングを行う際にも、すぐにHA(High Availability)構成のクラスタが作成できる。永安氏も「クラスタリングに関しては、本当に正しく切り替わってくれるのか不安なことがあります。特にOSSを利用するとなると、設定を含めてノウハウがまだ少ない部分がありますね。でもSolarisとPostgreSQLであれば、Sun Clusterにエージェントがあるということで、安心して設定して利用することができます」と評価する。
また、PostgreSQLが適しているのはウェブ系サービスの分野だけでない。データウェアハウスをはじめとする情報系サービスも低コストで構築できるという点で得意分野だ。特にSolaris 10はファイルシステムとして大量のディスクを管理できるZFSファイルシステムを採用しており、大量のデータを蓄積する必要のあるデータウェアハウスに適した環境だと言えるだろう。実際にSolaris 10+ZFS+PostgreSQLによるデータウェアハウスのアプライアンスも登場してきている。
それらサービスを提供するベンダーの代表例としてはGreenplum社が挙げられるであろう。このように業務システムの選択肢としてOSS、PostgreSQLが台頭している昨今、これからどのような展開がありうるのだろうか。
「性能が向上したとしても、PostgreSQLがすべての商用データベースを置き換えることはできないと思います。そこで、どれだけの能力と信頼性があるかを明確にして、使える領域を広げていければ良いと思います。また、DTraceなどのテクノロジーに関してもコミュニティーと連携することで、より有効な形で利用できるように改良していければと考えています」(田邉氏)
「やはりまず『多数の選択肢がある』というのは、良い状況だと思います。その上で、これまでのようにPostgreSQL単体での利用方法だけでなく、Greenplum社のように、各ベンダーと協力して、様々な利用方法を今後提案していく予定です」(永安氏)
サンがユーザーへのサポートを行うことにより、業務システム構築におけるOSS選択が現実味を帯びてきたと言える。そしてSolaris自身もオープンソース化されていることで、技術的な連携を行い、お互いに良いものを作っていくことが可能である。今後は商用ソフトウェアだけでなくOSSを活用した業務システム構築という選択肢を幅広く提供していこうというのが、サンおよびPostgreSQLコミュニティーの共通した目標である。