PCは、ほとんどの企業にとって、経理担当者が言うところの「会社資産」である。企業はPCを購入し、ソフトウェアをインストールし、小さな資産ラベルをはりつけて、業務ツールとして社員に使用させている。IT部門によっては、より多くのプロセスを必要とする場合や、少ないプロセスで済ませることもあるだろうが、程度の差はあれ自分たちのコントロール下にPCをおいておきたいと考えているのであろう。たとえ、社員が自分の好きなPCモデルを選択できるようになっているとしても、IT部門が「未承認」アプリケーションが実行されることを許す方向に向かったとしても、PCが会社の所有物であることに変わりはない。
このような一般的な考え方には多くの歴史的な理由がある。かつて、オフィスやパーティションで区切られた個室におかれていたデスクトップPCは、明らかに企業の物理的な設備の一部であった。そして重要な点として、そのようなPCの管理(セキュリティを含む)にあたっては、PCソフトウェアイメージ全体のコントロールに主眼が置かれていたことが挙げられる。このような方法での管理は特段に効果的であったとか簡単であったというわけではないが、細かいレベルでアプリケーションを取り扱えるツールがほとんど存在していなかった。最終的にPCは会社のデスク上の標準的な備品となったが、その時点で、すべての家庭にPCがあったわけでもないし、全員が本当の意味で「コンピュータに詳しい」わけでもなかった。
そのような歴史すべてが過ぎ去った思い出の一部になってしまった、などとばかげたことを言うつもりはもちろんない。それでも、社員に対してPCサプライヤーとしての役割を担っていたIT部門が、その役割を部分的に放棄せざるを得なくなった大きな変化に我々は直面することになった。代わりに、社員に個人所有のシステムを使わせようというアイディアが生まれてきたのである。会社が支給する場合もあるかもしれない。あるいはディスカウント価格で買える一括購入を社員に提示する場合もあるかもしれない。いずれにせよIT的には企業としてのアプリケーションサポートが必要だろう。細かいことはともかく、PCのとらえ方を大きく変えるものであることは確かである。
(以下の論旨はモバイルのプロフェッショナルたち、つまり、経営者、セールス担当者、開発者などを対象とした文脈の中で考えてほしい。)
価格設定、ノートPC、ユビキタス
製品の価格が下がった結果、多くのPCユーザーがモバイル型製品を購入するようになったほか、(私がここで述べている集団の)「誰もが」PCを所有して快適に利用するようになった。もちろん、大まかな傾向としてだが。しかし重要な点は、PCを仕事用に使用しているかどうかに関係なく、PCやさらにはノートPCを日常的に所有し利用しているということだ。このことは携帯電話に似ている。車載電話だった頃に始まって携帯可能な製品が当たり前になった時点でも、会社が社員に端末を貸与していた。今では、特に基本的な音声電話だけを考えたら、ほとんどの社員が個人所有の携帯電話機を使っている。
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