Delphiに込められた魂は、エンバカデロとの融合でさらに輝く
エンバカデロが考える開発ツール統合のカタチ
藤井氏によれば、CodeGearと合併したエンバカデロは大きく分けて以下の3つのチャレンジを行ってきたという。
- 開発ツール技術に対する再投資
- ツール同士のカップリング
- ソフトウェア開発に対してツールベンダーとして何ができるかの再考
これらの取り組み成果として、現在はWindows 7やタッチジェスチャ機能などに対応したDelphi 2010やC++ Builder 2010、エンバカデロのデータベース設計ツール「Embarcadero ER/Studio」などが、これらの開発ツールとともに提供されている。
それに加えて、昨年リリースされた「Embarcadero All-Access」は同社によるツール統合に対する取り組みの集大成とも言えるものとなった。All-Accessは、エンバカデロが提供するアプリケーション開発ツールおよびデータベースツールを、単一のアクセスパスでオンデマンドに利用することができる新ソリューション。ツールのインストールを簡略化するだけでなく、「InstantOn」機能によりインストールせずにワンクリックでツールを起動することも可能。これによって開発者はそれぞれ必要なツールを必要に応じてニーズに利用できるようになる。
開発ツールの統合というと、ひとつのアプリケーションで複数の機能を提供するというのが一般的な考え方だ。しかしエンバカデロではそのようなアプローチは取らなかった。その理由を藤井氏は次のように説明している。
「開発ツールの中にも、常に使うツールと、ときどきしか使わないツールが存在します。ときどきしか使わないツールをわざわざ買って面倒なインストール作業をしたり、ハードディスクやメモリを圧迫することはユーザに優しいとは言えません。私たちが目指したのは『全部使ってください』ではなく、『必要なものを必要に応じて使ってください』ということです。弊社ではツール統合の成功パターンと失敗パターンを分析した結果からこのアプローチが最適だと判断しました」(藤井氏)
また、All-Accessはマネージャの立場から見たメリットも大きい。藤井氏によれば、複数の開発ツールを使う顧客からはライセンス管理を容易にしたい、各ツールの社内での利用状況を把握したい、プロジェクト単位でバージョン管理を行いたいなどといったリクエストが多く寄せられていたという。All-Accessでは一元化されたライセンス管理機能が提供され、同一ライセンスで過去のバージョンにもアクセスすることができる。企業内でのプロジェクト横断的な利用を可能にする"統合ツール"がAll-Accessというわけだ。
さらにエンバカデロでは、今年2月このツール統合の考え方を推し進めた新しいソリューションを発表した。それが「Embarcadero ToolCloud」である。ToolCloudは、クラウド環境を活用してエンバカデロのツールにさらに効率的にアクセスできるようにするサーバ用ソフトウェア。All-Accessと同様に、開発者がオンデマンドで開発ツールにアクセスできる環境を提供するが、各ツールの供給元としてクラウドを利用している点が大きな特徴だ。
各ツールのライセンス管理やバージョン管理などは、社内のサーバに展開されたToolCloudで一元管理される。ツールのアップデートなどはインターネット経由でエンバカデロより提供されるため、開発者が特別に意識する必要は無い。開発者の環境からはクラウド上にある自分の利用可能なツールが見られる。そこで、必要に応じてローカルにインストールしたり、InstantOnで実行すればいいわけだ。
一般的なSaaSモデルと異なる点は、ToolCloudはあくまでもツールの供給方法をクラウド化するものであって、ツール本体はローカルのマシンで実行されるという点である。ツールそのものをクラウドではなくローカルで動作させる理由は、エンバカデロの大きなターゲットがネイティブアプリケーションであるからだと藤井氏は言う。
「ネイティブアプリの開発者というのは、アセンブリに近い非常にコアな部分でチューニングを行っていることがよくあります。そういったテクノロジを使い倒すためには、開発ツールがローカルにあることが非常に大事なのです。またパフォーマンス面も重要で、CPUをフル活用した快適なコーディング環境を失いたくないという理由もありました。そういう制限の中で常用しないツールを効率良く提供できる手段として作られたのがToolCloudです」(藤井氏)
ToolCloudはAll-Accessで使える全てのツールに対応しているが、将来的にはそれ以外のツールもToolCloud上での管理対象に入れられるよう検討中だという。またその他の製品展開について、今後はDelphiにクロスプラットフォーム対応のコンパイル技術を取り入れる予定とのこと。対応プラットフォームは徐々に増やしていく計画だそうなので、将来はモバイル機器などがサポートされるという展開も考えられる。合併によって新たな力を得たエンバカデロは、今後もツール技術によって業界のトレンドを支えていく。
![藤井氏](/extra/embarcadero_201003/images/d677647db086fa3375ca0ca36f54b248_photo02.jpg)
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