今回のSolaris 10 8/07ではさまざまな機能の追加が図られ、OSのアップデートと言える範疇を超えているとさえ感じられるものとなった。この点に関して、大曽根氏は「Solaris 10 8/07ではさまざまな機能が追加されています。今回の機能追加で、リリース当初に理想形として掲げていた本来のあるべきSolaris 10を提供できるようになったと考えています」と語る。
確かにSolaris 10の最初のリリース時にはSolaris ZFS (以下ZFSと略)や、x86プラットフォームでのLinuxバイナリの実行機能などSolaris 10の新機能として事前にアナウンスされていた機能の一部が実装されていなかったが、それらの機能が順次追加されてきている。
「今回追加した機能、特にZFSの管理コマンドの充実や、BrandZ(後述)によるLinuxバイナリの実行機能などによって、当初アナウンスしていた機能を実装しました。これらの機能が整った事で実際の運用において、より安定して使える環境を提供できるようになったと感じています」と大曽根氏は付け加える。
それでは、実際にどのような機能が追加・改良されたのかを見ていこう。
リリースノートに記された項目全体では72項目が追加・改良点として挙がっており、特筆すべき点としてはZFS Version 4、Solaris Containers for Linux Applications (OpenSolaris プロジェクトではBrandZのlx Zoneに相当)、Zone運用環境の改良といった項目が注目される。ZFSに関しては、さまざまなコマンドの機能拡張により、管理がスムーズに行えるようになっている。従来までは管理コマンド自体が基本的なものしかなく、構築後のメンテナンスなどの機能不足が懸念されていただけに、今回の機能追加により、実運用環境下での採用に対する障害が少なくなったと言えるだろう。
さらに、ZFSボリュームをiSCSIターゲットとして構成できるようになるなど、ZFSをSANの構築にも利用できる機能が付加されている。
大曽根氏はSolaris 10 8/07でのZFSに関して「実はNevada(Solaris次期バージョンのコードネームでOpenSolarisプロジェクトとして公開)の最新ビルドではZFSのバージョンはすでに8まで上がっています。その意味ではZFSも最新のものが導入されたわけではありません。ただし、Solaris 10では「安定稼働」が重視されますので、最新の機能をすぐにポーティングするのが必ずしも最良の道とは考えていません。より多くの機能を実装し、なおかつ安定運用できるバージョンを見極め、実装することを心がけています。そういった意味では、今後NevadaとSolaris 10で機能の乖離が大きくなることは考えられますね」と語る。
この点に関して、実際にSolaris 10 8/07の検証を行った梶野氏は「ZFSのパフォーマンスに関しては、Nevadaで実装された時と比較して向上しています。これは単純にNevadaから持ってきただけでなく、さまざまなチューニングを行っているからだと思います。また、安定性を重視してNevadaからSolaris 10に実装するということに関しては、大歓迎です。もちろん新しい機能を実装するのは良いことですが、私達のようにシステム構築から運用までを手がける立場にとって重要視しているのは、どれだけの安定稼動が実現できるかということです。そのようなニーズを踏まえた上で実装を行って頂けるのは心強いですね」と語る。また「iSCSIターゲット機能も私達にとっては有用な機能です。NEC情報システムズではSAN製品の取り扱いや構築も行っていますので、その選択の幅が広がる点は大きなメリットと言えるでしょうね」と続ける。