「いくつかの半導体メーカーの方と話をする機会がありましたが、半導体ビジネス全体の動向として、『ダイ(コアが搭載されている半導体の本体)は多少大きくなっても構わないから、周辺機能を取り込み、ワンチップでシステムの中核をまかなえるようにする』というSoC(System On a Chip)へのニーズは高まっています。T2プロセッサも、そのコンセプトで設計されています」と堀口氏はこの構成を採用した理由を語る。
仮想化テクノロジの実現に関しては、従来からSolaris ContainerなどSolaris 10上でサポートされてきた。「仮想化の機能に力を入れるようになったのはT1000サーバをリリースした頃からです。その後、Solaris Containerの機能充実を図ってきましたが、今回はそれに加え、LDoms(Logical Domains)という物理的にサーバを分割する機能を導入しました」(堀口氏)
LDomsは、OS上での仮想化ではなく、PCでいうBIOSにあたるOBP(Open Boot Program)のさらに下位にスーパーバイザ層を設け、スーパーバイザがUltraSPARC T1、T2プロセッサの各コア、スレッドごとに仮想的なハードウェアを構築するものだ。こうすることで、Solaris ContainerのようにSolaris 10以外のOSをUltraSPARC T1、T2プロセッサを搭載しているサーバ上で利用できるようになる。現時点では、Solaris 10の他、UbuntuとWind Riverが動作する。これによりSolaris以外のOSでもUltraSPARC T1、T2プロセッサの性能を活用できるのだ。
このようなドメイン分割は従来大型の汎用機やUNIXハイエンド機に実装されていたものだが、CMTの実現に伴い、エントリーレベルのサーバでも実現できるようになっているのである。なお、LDomsに関しては、従来のUltraSPARC T1搭載のサーバでもファームウェア(OBP)の更新で利用できる。
もちろん、サンではUltraSPARC T2の能力をフルに活かすための活動も継続して行っていくという。堀口氏はこの点について、「現在アプリケーションがマルチスレッド環境を十分活用できていないと感じています。したがって、まずはSolaris Containerの活用による仮想化でパフォーマンスを引き出すというソリューションを提供しています。それに加え、OpenSolarisやOpenSPARCというように、OSやプロセッサの設計情報を公開することで、アプリケーションのマルチスレッド環境への対応を促す活動にも力を入れていきます。そしてマルチスレッド環境のパフォーマンスを活用できるアプリケーションが登場する手助けを行っていきたいと考えています」(堀口氏)
現時点でも、Solaris 10とUltraSPARCのマルチスレッド性能はすでに十分な魅力を備えていると言える。しかしこれらの環境が本領を発揮でき、性能を最大限に活用できるアプリケーションが登場する日も近いだろう。