他社の仮想化技術と比較すると、Solaris Container のパフォーマンスの良さが実感できる。SAPが公開しているSAP SD 2-tier ベンチマーク(以下 SDベンチマーク)によると、他社のサーバ仮想化技術を持ち込むと、ハードウェアのエミュレーションや仮想環境の管理などによる10%以上のオーバーヘッドが発生していることが分かる。
一方、Solaris Container を利用した場合と仮想化していない場合を、SD ベンチマークで比較したところ、それらの処理能力の差はわずか1〜2%の差であり、オーバーヘッドは無いに等しい。つまり、従来の仮想化ではどうしても避けられなかったリソースの浪費がないのである。Solaris Container を活用することにより、サーバの処理能力のすべてを、サービスのために利用できるのだ。
「オーバーヘッドがなくサーバのリソースを有効活用できるので、システム構築時にサーバのスペックを決めるための試算が容易になります。SAPのユーザー様はSDベンチマークデータに大きな関心を持っています。しかし、現在のところ、他社がリリースしている仮想化技術を利用したベンチマークデータは実用性に欠けており、実運用におけるオーバーヘッドを含めたサイジングは不可能な状態です。そのため実運用後にトラブルの発生するリスクが非常に高いと言えます。Solaris 10では必要なスペックを容易に推測できるのがメリットです」と国谷氏は語る。
また、Solaris 10 8/07では、ネットワークの仮想化を実現している。仮想化環境とネットワークインターフェースを結びつけることで、Global-Zoneから独立したネットワーク環境をnon-Global-Zoneで実現できる。これにより、1台のサーバに構築された仮想化環境を異なるネットワークセグメントに接続でき、より柔軟な仮想化の構成を取ることができるようになった。(本連載第3回を参照)
このように、従来であればメインフレーム規模の構築が必要とされていたSAPのシステムも、Solaris Container によってきわめて効率的に運用することができるのである。
もうひとつの大きなアドバンテージとして、Solarisが新ファイルシステムであるZFSを採用していることも挙げられる。これまでのUNIX系OS のファイルシステムは、初期のUNIXで採用されたUFSを元にシステムの進化に合わせてさまざまな機能を追加してきたため、「テラバイト級のディスクユニットの有効利用ができない」「ファイルシステム作成後のディスク追加で、容量の追加が難しい」などの問題点がある。
また、障害発生時のデータ破損に対して有効な防護策を持っていないなど、運用上の負担も多く、UFSは現在のビジネスには対応しきれていないとも言える。
一方、ファイルシステムの設計がゼロから行われたZFSは、UFSに劣らないパフォーマンスを発揮しつつ、従来のファイルシステムの欠点を補うよう設計されている。