全体最適化で進めるCTCのグリーンIT戦略
あるべき姿をベンダー側に提示しプロジェクトに巻き込む
先述のように、先進的な特徴を持つ目白坂データセンター。同データセンターの建設にあたっては、あらかじめ複数のベンダーに対して、CTCがデータセンターの各種要件をRFP(提案依頼書)に盛り込んで提出し、コンペが進められた。この経緯について、CTCの唐木氏は次のように述べる。
「CTCが20年来、データセンター事業者として培ってきた経験をもとに、データセンターのあるべき姿をTo-Beモデルにまとめ、やりたいことをビジョンとして積極的に打ち出しました。しかし、このビジョンを実現するには設計会社や、ゼネコンなど関係者の力を結集することが必要不可欠です。このプロジェクトに、多くのステークホルダーを巻き込み、それぞれが知恵と経験を持ち寄ることで、はじめて目白坂データセンターが形になったのです」(唐木氏)
国内ではほとんど例を見ない、生体認証に3D顔認証の採用したのも、CTCのアイデアだった。唐木氏には、犯罪抑止効果を優先した場合は顔認証が優れているという考えがあったが、RFPに対してベンダー各社は、掌形や指紋、虹彩などを提案し、顔認証はなかった。
顔認証は誤認率が高い、処理時間が長い、などが各社の不採用理由だったのである。しかし、唐木氏が調べてみると海外ではすでに導入事例があり、双子の識別も可能なまで認識技術は進んでいることが判明。データセンターでの利用を前提とした評価テストを実施し、最終的に3D顔認証を採用することにした。
実効性の高い共連れ防止対策を行ったのも、老舗のデータセンター事業者としてかねてより憂慮していた課題に対する回答だった。これについても各社が提案してきたのは、ひとりひとりがゲートを順番に通過するサークルゲート方式だった。しかしこの方式では、複数の作業員が同時に入室する際や機器の搬入時の対応が難しい。そのため別途、搬入用の扉を設けるなどしている場所もあるが、複数ルートの存在はセキュリティ上の脆弱性となってしまう。目白坂データセンターでは通路とサーバ室の間に前室を設け、センサーと顔認証を併用する独自仕様のシステムにより、共連れ防止を実現した。
また、目白坂データセンター内には、インドアガーデンがあり、そこでは植物が育てられ、リサイクル家具が並んでいる。ここは、文字通りGreen を体感できるリフレッシュスペースとして利用できる。このような細やかな気配りは、環境配慮型データセンターならではと言えるだろう。
加えて、近隣環境への配慮がなされているのも特長だ。稼働後に生じる各種騒音や排熱を事前にシミュレーションし、RFPに反映した。地域社会との調和のとれたデータセンター運営に向けた設計、施工を建設側に依頼したのである。
目白坂データセンターの能力は、まだフル・キャパシティではなく、直流/交流電源の比率も可変だ。ただし、データセンターは単純にハイスペック化すればよい、というものではない。メインフレームの時代は、ラック当たりの消費電力量は1KVAだったのが右肩上がりに増え続け、近い将来、高密度化されたサーバでは10KVA以上になるという予想もある。けれども、天井知らずの設備増強を行えば、そのコストはユーザーに価格転嫁せざるを得ない。しかし、ITリソースの全体最適化によって、電力消費量は下がる可能性もあるのだ。唐木氏は語る。「何が起こるか分からないという考えのもと、上下両方にニーズが振れる可能性を考慮しないと10年、20年先にも使えるデータセンターにはなりません。将来を見据え、変化を前提とした事業性とグリーンITのバランスが需要です」
堅牢なインフラを備え、環境配慮型の設計がなされた目白坂データセンターは、ビジネスとICTの新たな関係性の幕開けを告げたといえる。そして、その先進的なビジョンが、業界全体にどのようにインパクトを及ぼすのか、また未来の世代へどのように受け継がれていくのか、これからも注目していきたい。
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