シンクライアント:アピールポイントはROIの高さだけにあらず

管理コストの低減といったメリットを訴求してきたシンクライアントだが、最近になって、仮想化技術を導入して、デスクトップPCの使い勝手を踏襲しながら集中管理を実現する新たなアーキテクチャが提案されるようになってきた。

文:Gordon Haff(Special to CNET News.com)
翻訳校正:川村インターナショナル  2008年10月29日 08時00分

 私が従来型の「ファットクライアント」デスクトップの代わりになるものを追いかけていた間に、多くのベンダーが、主に投資対効果(ROI)が優れているということで、シンクライアントと関連テクノロジを喧伝してきた。

 シンクライアントの先行投資費用が高いことについてはベンダーも認めるだろう。ユーザーエクスペリエンスが(応答時間、独自アプリケーションの追加、などの点で)従来のPCに比べてよくないことも渋々と認めるだろう。ただ、管理コストが下がって費用を節約できるという話になると、彼らの売り込みには熱が入る。

 ユーザーにとってはどうだろう。シンクライアントはコールセンターなどに適したソリューションである、といった言われ方をされている限りは、ITを購入する側がユーザーのために優れたエクスペリエンスを求めようとすることなどないだろう。基本機能さえあればいいという考え方だ。

 このようなアプローチでビジネスを推し進めた結果は、特にCitrixにとってはそれなりのものだった。ただし基本的には隙間市場でしかない。広い範囲を対象としたものではなく、特定の用途と特定のユーザーのためのものだ。

 市場が広がらない理由の1つは、ストレートに書けば、ROIに関するベンダーの主張を多くの企業が信じていないからだ。先行投資としてお金を払う以上は、目に見える何かが必要となる。たとえば今後3年間分の経費の節約といったことだ。だがそこまでは望めないであろう。特に、節約については、管理コストの低減やユーザーの生産性の向上といったことを仮定する「ソフトコスト」として論じられることが多い。ベンダーはいくらROIを研究したとしても何も正当化することはできないだろう。もちろん試みることは自由だが。

 さらに、コストだけを基準にシンクライアントコンピューティングを正当化しようとしても、このようなソフトコストの節約に依存することになる。どのみち、典型的なシンクライアントアーキテクチャは、デスクトップデバイス(通常のPCに比べても特にスリムとはいえないハードウェア構成)だけでなく、アプリケーションを提供するバックエンドサーバーとソフトウェアを必要とする。

 その結果、シンクライアントソリューションをトータル(ハードウェア、ソフトウェア、サービス)で提供しているベンダーは、前述したこととは別に2つのメリットを訴求し始めるようになった。つまり、それは、コンプライアンスおよびセキュリティ面でのメリットと、ユーザーエクスペリエンスでのメリットである。

 コンプライアンスやセキュリティについては非常に明白だ。データやアプリケーションがユーザーのPCにローカルに保存されていなければ外部に「歩き」出ることはない。また一般的に、アプリケーションやデスクトップを集中管理型にした方が、ソフトウェアライセンスを考慮する場合や、データ保存に関するポリシーの適用を考慮する場合に管理がしやすいであろう。

「The Pervasive Datacenter」 のバックナンバー

http://japan.zdnet.com/extra/green-enterprise/datacenter/story/0,3800089561,20382674,00.htm
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