流行語に事欠かないのがIT業界の特徴の1つだ。新しい流行語が毎日のように誕生している。企業や社会にとってメリットがあるものも一部にはあるが、そうでもないのも多い。こうした状況の中で、大きな注目を集めているのが「グリーンIT」、つまり、地球環境に配慮した形でコンピューティングサービスを提供しようというコンセプトだ。
ITのグリーン化では、サーバやストレージといった企業内インフラストラクチャの大規模な再構築を伴うことが多く、さらにはデスクトップレベルの見直しにまで及ぶこともある。ただいずれの場合も、あらゆる対策を行わなければ効果が現れてこないというわけではない。ここではグリーン化の出発点について考察してみる。ウェストミンスター大学で筆者らが実施している、エネルギーコストと環境への影響を低減するための施策を紹介する。
エネルギーの利用状況の計測
いかなるプロジェクトであっても成否を判断するには測定基準が重要である。データセンターのエネルギーコスト削減に取り組んでいるのなら、現行のサーバが消費する電力の内訳を把握しておく必要がある。たとえば、簡単な方法の1つとして、電源コンセントとサーバあるいはデスクトップ機との間に測定器を設置して、一定期間実際の利用状況を測定することなどがあげられる。「Kill A Watt」のような検電器がそうした測定器の例だ。構造は単純だが機能は十分である。
測定結果は、エネルギー使用削減のプロジェクトで投資対効果(ROI)を判定する際に利用できるよう、記録しておこう。
グリーンプロジェクトの検討
何らかの測定基準が決まったら、大きなROIが得られる可能性のあるプロジェクトについての検討を始めることになる。とはいっても、ROIはエネルギー節減量だけで決まるわけではない。省エネルギーを目的としたプロジェクトを実施することで生じた節約分が、別の領域でならもっと容易に得られるかもしれない。つまり、結果としてエネルギーが節約されたが、単に副次的なものである可能性もあるということだ。以下に述べるのは、すべてを余すところなく網羅することを意図した方法ではないが、節減に関してどこに着眼すべきかについていくつかのアイデアをもたらすものである。
*サーバ統合。データセンター内のハードウェア量を減らせば、データセンター内で消費される電力は少なくなることは明らかだが、付随する節減についても考慮する必要がある。つまり、動作しているサーバの台数が減れば発熱量が減るので、空冷コストも抑えられることになる。また、効率よく統合できれば、必要な設置スペースは小さくなるから、限られた空間だけを冷却するだけで済むようになる。直接的な節減額を計算することは簡単ではないかもしれないが、冷却のニーズが減ることで、コストは減る。サーバ統合プロジェクトは、その規模にかかわらず、短期間でROIが得られる。つまり、サーバの更新サイクル内でROIが得られるということだ。