IBMの最高経営責任者(CEO)Sam Palmisanoはいま、拡大しつつあるセンサー市場で儲けることを考えているかもしれない。
IBM Researchは先頃、Palmisanoに最新の「Global Technology Outlook(GTO)」を報告した。Palmisanoは、基調講演もほとんど行わず、インタビューにも応じない人物だ。GTOは通常、IBMの研究部門で働く研究者が、今後3〜5年後から10年後までに主流となる技術トレンドの動向を7〜8時間かけて討議する形で発表される。IBMはこうしたトレンドから利益を得る方法を見つけ出したいと考えている。
IBM Researchの戦略担当バイスプレジデントMahesh Viswanathanは、「1つの話題について、約35〜50枚のスライドを使用した」と話している。
今年のGTOは、次の5つのトピックを網羅していた。
・シリコン製造
IBMの研究者らは、少なくとも今後10年間は「ムーアの法則」が有効であると予測している。チップ設計者は、新たな構造を採り入れなければなくなるが、10年以内に基盤をシリコンからもっと革新的な素材へ変更する必要はないという。
Viswanathanは、IBMは2年前にはシリコンの将来を現在のように楽観的に考えていなかったが、エンジニアがトランジスタのサイズ縮小に成功し続けていることに常に驚きを感じると話した。
・センサー
貨物および車両の移動や、場合によっては人間の動きまで追跡できるセンサーへの関心が、政府や大手企業、新興企業の間で高まっていた。だが、ここへ来て、そうしたセンサーで収集したさまざまなデータの用途が問題となっている。そこでIBMは、センサーネットワークに(IBMのRakesh Agrawalが最初に考案した)データマイニング技術を組み合わせることを検討しようとしている。複数のセンサーネットワークからデータを蓄積すれば、研究者が交通網の傾向をより正確に把握できたり、災害発生の徴候を把握できたりするようになると考えられる。
・アプリケーションプロセッサ
何億個ものチップを搭載するマルチコアプロセッサが登場している今日では、チップ上にチップもしくはコアを実装し、特定の働きをさせるためのコストが低下してきている。数年前までは、数学用プロセッサやその他の特殊なチップ向けの市場が確立されていたが、そうしたさまざまな機能は汎用マイクロプロセッサに吸収されてしまった。だが現在では、これとは反対の傾向が再び見え始めている。この背景には、計算処理作業の複雑化や、設計者が自由にできる予算の増大といった事情がある。
Azul Systemsや日本の理化学研究所などが提供しているサーバ高速化チップは、アプリケーションプロセッサの一種だ。
・ソフトウェア開発のオープン化
かつては企業内の数名の人間がソフトウェアを開発していた。だが、「今ではだれもがプログラミングをする可能性がある」と、Viswanathanは言う。したがって、IBMやその他の企業は、プログラムを簡単に記述するためのツールばかりでなく、そうしたアドホックなアプリケーションが既存の企業環境できちんと動作することを検証するツールも提供していかねばならない。
・サービス2.0
だれもがサービスを必要としており、IBMはこの点に自社の将来を見いだしている。同社が掲げている重要な目標の1つに、組織の行動パターンをより詳細に調査するというものがある。IBMの関係者は、こうした取り組みは科学的ではないように思えるかもしれないが、コンピュータサイエンスはもともと科学の一分野として誕生したわけではなく、実際にスタンフォード大学のエンジニアリング学部も、はじめはこれを科目として採用していなかったと説明している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ