マサチューセッツ州は、Microsoftなどの各社から出ているオフィススイート・アプリケーションの利用を段階的に縮小し、先ごろ承認されたOpenDocument標準などを含む「オープン」な標準に基づく製品に切り替えていくという計画を提案した。
同州は今週はじめ、公開レビュープロセスの一環として、ウェブサイトでこの計画の詳細を明らかにした。情報は9月9日まで公開される。この計画では、マサチューセッツ州の政府や関連機関は2007年1月1日の期限までに、OpenDocumentファイルフォーマットをサポートするアプリケーションをインストールし、ほかの製品を段階的に排除することになる。
同州の行政機関は、同フォーマットがデフォルトの書類保存形式であるアプリケーションを期限までに用意しなくてはならない。マサチューセッツ州はさらに、Adobe SystemsのPDF(Portable Document Format)フォーマットについて、「オープン性の基準を満たしており、現時点では条件に合致している」とし、その使用を認めていく。ただし、書類はXMLをサポートするバージョンのPDFにしなくてはならない。
同州のEnterprise Technical Reference Model(ETRM)によると、「現在、州の行政機関では大半がMS Office、Lotus Notes、WordPerfectなど独自フォーマットの書類を作成するアプリケーションを使っている点を考慮すると、オープン標準への移行は大変な作業になる」という。ETRMには、データや書類、記録に関する同州の標準ガイドラインが述べられている。
同州の動きは、「OASIS Open Document Format for Office Applications」という正式名称を持つこの比較的新しい標準を大きく後押しすることになると同時に、オフィスアプリケーション市場を独占するMicrosoftにとっては打撃となる。同社は、官公庁がオープンソースの代替製品を積極的に検討していることを認識している。
5月に標準として批准されたOpenDocumentフォーマットは、ワードプロセッサ、表計算、グラフといったオフィスアプリケーションをカバーしている。
同フォーマットは、オープンソースアプリケーションスイートのOpenOfficeでデフォルトとなっているフォーマットで、NovellやSun Microsystemsのスイート製品、そしてIBMのWorkplace製品でもサポートされている。
OpenDocumentは、XMLデータタグを使ってドキュメントのフォーマットと保存を行う。XMLフォーマット(スキーマ)は標準として公開されているため、マサチューセッツ州はこれらを「オープンフォーマット」と見なし、政府機関で関心が高まる公文書記録の保存に適していると考えている。
マサチューセッツ州のCIO(最高情報責任者)、Peter Quinnは米国時間29日に声明を出し、同州が今年はじめにオフィスアプリケーションと標準について業界関係者と協議したことを明らかにした。
「話し合いはオープンフォーマットに重点を置いて行われた。特に、同フォーマットのオフィス文書との関係、現状および今後の州政府の記録の使いやすさを考えた場合の重要性、提供されるフォーマットオプションの比較的『オープン』な部分などが話題になった」(Quinn)
Microsoftは、来年出荷予定の「Microsoft Office12」で、XMLのデフォルトサポートを目指している。しかし同社は、OpenDocumentフォーマットのネイティブサポートは今のところ考えておらず、代案として「フィルタ」を使ってXMLドキュメントフォーマットを変換する形を考えている。
MicrosoftのAlan Yates(Information Workerビジネス戦略担当ゼネラルマネジャー)は、マサチューセッツ州の提案について「混乱する内容」だとして、これを非難した。同氏によると、同州はオフィス文書、データ、そしてAdobe PDFなど、異なる基準を採用しながら、オープン性を謳っているという。
「オープン性実現へのアプローチを狭めていることに驚かされた。マサチューセッツ州には、ほかの多くの国や自治体が取り組んでいるものなど、選択肢が他にいくらでもあるはずだ」(Yates)
Yatesは、OpenDocumentフォーマットをネイティブでサポートする意向がMicrosoftにないことを重ねて強調した。同氏によると、同フォーマットはOpenOffice 2.0スイートに限定されるものだという。
同氏は、MicrosoftがOfficeアプリケーションのXMLスキーマを公開し、これを無償ライセンスで利用可能にしているため、同社にはマサチューセッツ州が求めるものと同等のデータ互換性と保存性を実現できると説明した。
Initiative for Software Choice(ISC)によると、マサチューセッツ州の提案は「厄介」であり、同州の調達手続きをめぐる競争を制限するものだという。ISCは、Computing Technology Industry Association(CompTIA)の関連団体で、300人の会員が所属する業界団体。
ISCの事務局長Melanie Wyneは、「現実問題として、この提案は行政機関にOpenOfficeソフトウェアの使用を義務づけている。だが、1種類のライセンスモデルを義務づけなくても同じ目標は達成できる」と語っている。
RedMonkのアナリスト、Stephen O'Gradyは、OpenDocumentを採用するというマサチューセッツ州の動きに、他州の政府組織が追従すれば大きな意味を持つことになる、とブログに書き込んでいる。
「もちろん、ここでは象徴的な意味が重要になってくる。マサチューセッツ州がMicrosoftにとってかなり大きな取引先であることは疑いのないところだが、大局的にみると金額は重要ではない。重要なのは、ODF(OpenDocument Format)が米国で大きな勝利を収めるという点だ」(O'Grady)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ