IBMのSun買収に感じる違和感

飯田哲夫(電通国際情報サービス)

2009-03-24 19:30

 先週、IBMがSunと買収に関する交渉を行っていることが報じられた。IT業界での大型買収はもはや珍しいことではないし、Sunの業績不振を考えれば、その規模が非常に大きいものであるとはいえ、買収提案が行われることに不思議はない。しかし、IBMがSunを買収するというストーリーは、どうもしっくり来ない。

業界構造の変化

 市場シェアの観点でこの買収でどのような影響を与えるかについては、ITProで分析が行われている。記事によると、IBMとSunの売上を合計しても、EDSを昨年買収したHPには僅差で及ばない。しかし、サーバー市場のシェアでは、IBMとSunの合計が42%となり、29.5%のHPを大きく突き放す。業界の構図を大きく塗り替えるという点において、そのインパクトは非常に大きい。

 ここ最近のIBMは、ハードやインフラから、ソフトあるいはサービスへと軸足を移しつつあった。そうした中で、PC部門をLenovoへ売却したりHDD部門を日立へ売却する一方、PWCのコンサルティング部門の他、数々のソフトウェア企業を買収してきた。そうした中で、ハードウェアが占める比率の高いSunの買収は、最近のIBMの方向性と合わないのも事実である。

 HPは、DECやCompaqの買収を通してサーバー及びその運用回り強化する一方、PCを始めとするコンシューマービジネスも堅持してきた。EDSの買収も、ソフトウェアビジネスというよりは、アウトソーシング等の運用サービスの強化と見ることができる。

 Sunに関しては、大きく方向性を変えるような買収劇はあまり見られないが、2008年のMySQL買収はSunのオープンソース志向を象徴している。他社がM&Aによりコア・ビジネスをシフトさせたり、シェアの拡大を図ってきたのに対し、Sunは核としてのSPARCとSolarisを堅持しつつ、その周辺に展開するビジネスモデルの革新を試みてきたと言える。

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