あなたはこう思っていないだろうか。「自分はユーザーとのコミュニケーションをうまく図っている。ユーザーへの報告は欠かさないようにしているし、ユーザーの声にいつも耳を傾けている」と。しかし現実には、誰もあなたのメールを読んでいないようだし、あなたの指示に従ってもいない。一体どうしたわけだろうか。多くの場合、ユーザーはコンピュータに何か問題が発生してもサポートに助けを求めずそのまま放置している、と聞いたらあなたは驚くだろうか。これらはすべてユーザーとのコミュニケーションが破綻する前兆だ。しかし、われわれサポート技術者は、こうした事態になっても、ユーザーが無頓着なせいだとか、ユーザーのほうがおかしいのだというふうに勘違いしてしまうことが多い。そのままでは、事態はどんどん悪化し、遠からずユーザーとのコミュニケーションは完全に途絶えてしまうだろう。たとえ誠意をもってユーザーに対応しているつもりでも、次のような致命的な過ちを犯してしまうと、ユーザーとコミュニケーションを図るつもりがかえって逆効果になってしまうこともある。
#1 言葉は丁寧でも身振りや表情に本音が出てしまう
言葉では、「まったく、おっしゃるとおりです。では、トナーカートリッジをお取り替えしますね」などと言っていても、表情、声の調子、身振りなどに、次のような本音が出ていないだろうか。「この間抜け野郎。IQ 167のこの俺が、トナーカートリッジを交換するために、4年も大学で勉強して、IT関連の資格を53も取得したと本気で思ってんのかよ。『代わりに息もして差し上げましょうか』ってんだ」
表向きは丁寧な言葉を使っていても、舌打ちをしたり、目をぎょろつかせたり、うすら笑いをこらえたりしていれば、別に行動心理学者でなくとも、お高くとまったばかにした態度がユーザーに伝わってしまうものである。トナーカートリッジの交換などというつまらない仕事ばかりさせられることが多いなら、逆に、良い機会だと思って、そのユーザーを教育して力をつけてやればよい。
#2 知識をひけらかす
正しい技術用語や概念をすべて知っているからといって、何もユーザーとの会話にそうした専門用語を使う必要はない。手順の説明があまりに専門的だったり、ユーザーが知る必要もない余計なことがたくさん含まれていたりすると、肝心なことが相手に伝わらない。専門知識で相手に好印象を与えているつもりでも、実は相手を疎んじて小ばかにしているのであって、ユーザーから見ると横柄でもったいぶった態度に見えるだけである。例えば、ブラウザの動作がおかしいとき「キャッシュをクリアしてオブジェクトを削除してください」と言うのは、技術的には正しいかもしれない。しかし、そうした手順を実行する方法を知っているのなら、とっくに自分でやっているはずである。その作業の実行方法をひとつひとつ手順を追って、できれば、ユーザーにわかる言葉で簡単な説明をはさみながら示すことだ。知識ではなく態度で好印象を持ってもらうようにしよう。
#3 キレる
William Langland*が1377年に「忍耐は美徳なり」という言葉を遺していなかったら、20世紀後半、ちょうどオフィスにコンピュータが普及しはじめた時期に、サポート技術者が同じ言葉を残していたに違いない。以来、オフィスで働くひとたちのコンピュータ操作能力は着実に向上してきたとはいえ、相変わらず簡単な操作ができない人たちがどこのオフィスにも一人はいる。そうした人たちは同じことを何度もサポートに質問してくるのだが、そのあまりのしつこさに、こちらの忍耐も限界に達してしまう。「この間抜け野郎」と怒鳴りながらこのようなユーザーの頭をジェルリストレストでぶんなぐってやれば、一瞬スカッとするかもしれないが、ユーザーは激怒し、サポート担当者は解雇されるという結果は目に見えているので、それだけは何とか避けなければならない。それには、こうした事態を防ぐ方法を身につけることと、起こってしまった場合は適切に対処できるようにしておくことが大事だ。
編集部注:William Langlandは14世紀イギリスの人物で、当時の教会の腐敗を批判して新しい倫理体系を求めた『農夫ピアズの夢』を著したことで知られる。#4 そっけなくあしらう
腕に奇妙な緑のこぶのようなものができたので医者に行ったとする。ところが、医者は元気づけるようにあなたの背中をポンとたたいて、「心配はいりません。1、2カ月しても直らなかったらまた来なさい」と言うだけだった。あなたはどう感じるだろうか。その医者が患部を診ることさえしなかったらどうだろう。ユーザーが抱えている問題を真剣に受け止めず、「問題ありませんよ」などと陳腐な形だけの言葉で済ませるのは、そっけない医者の診察と同じで、ユーザーを不安な気持ちにさせてしまう。起動時に普段の2倍も時間がかかるなんてあり得ないとか、そら耳で例のかん高いマシンのうなり音を聞いたのだろうと思っていても、「心配いりませんよ。症状が続くようでしたら連絡ください」などとユーザーを軽くあしらってはいけない。そんなことをしても、ユーザーは、小ばかにされまともに取り合ってくれなかったと感じるだけで何の解決にもならない。
コンピュータのトラブルは、本当であれ、思い違いであれ、ユーザーにとっては同じことである。彼らは、とにかく解決しなければならない問題が起こっている、としか認識していない。単なるユーザーの思い違いであったとしても、思いやりを持って柔軟に対応することで、その思い込みを解消してあげることができる。どんなささいな問題であっても、真剣に取り組み、丁重に対応すれば、ユーザーの我々に対する信頼感が増し、うまくコミュニケーションを図れるようになる。
#5 報告しない
固定観念にとらわれているかもしれないが、一般に、ギークと呼ばれるIT部門の人間はあまりコミュニケーションが得意ではない。少なくとも、普通の人たちとまともにコミュニケーションをとれないことが多い。しかし、残念ながら、その普通の人たちときちんとコミュニケーションを図れることこそ、サポート技術者として良い仕事をするための前提条件である。多くの組織では、サポート技術者は、ユーザーがIT部門とやり取りするための窓口的な存在となっている。サポート技術者はギークと普通の人たちとの通訳の役割を果たし、ユーザーと絶えず連絡をとって最新情報を知らせる責任を負っている。
どのような依頼であれ、ユーザーとの連絡を欠かさないことは、その仕事をやり遂げるために必要不可欠である。ユーザーに満足してもらうためには、依頼を受け付けたという確認の返事から始まって、実際の処置、そして処置を終えた後のフォローアップの電話まで、きちんと行う必要がある。対応が遅れる場合でも、そのことを事前に知らされており、それに応じて日程を調整できれば、たいていはユーザーも了承してくれる。
筆者Becky Roberts氏について
哲学博士号の取得を目指す途中で、コンピュータサイエンスに目覚め、方向転換する。コンピュータサイエンスの理学修士を取得した後は英航空業界のデータベース開発者、陶器製造業者のメインフレームプログラマ、人材紹介会社のアプリケーション開発者、国際経営コンサルタント会社のシステム管理者を経験し、現在はテキサス州にある化学製品工場のネットワークエンジニアを務める。趣味はマウンテンバイク乗りとロッククライミング。ヒューストンで10代の子供2人の母親業をこなしながら、猫4匹、フェレット3匹とともに暮らしている。
「ベッキー・ロバーツの「あるある」トップ10」 のバックナンバー
-
いくつ当てはまりますか?ITサポート技術者のための不向き度チェックテスト
ITサポートエンジニアに求められる資質は何か。こんな話を今サポートで忙殺されている人としても仕方がない。そこで、ITサポートに向かない要素を考えてみよう。キャリアプランの確認に役立ててほしい。 -
同僚を裏切るか、会社を法的なリスクにさらすか--あなたならどうする?
-
重役と社外コンサルタントとの板挟みになったIT担当者--あなたならどうする?
-
勤務時間中に社内リソースから転職活動--これってアリ?
-
男性の説明しか聞こうとしないカスタマーからの電話--あなたならどうする?
- ベッキー・ロバーツの「あるある」トップ10 一覧へ »
-
日本モバイルインターネット端末市場分析 〜2008〜2012年のMID及びスマートフォン...
- BIベンダーの選び方 −BIベンダー選定のための評価フレームワーク
- 【導入事例集】多業種から評価されているWeb会議システム、24社の導入事例をご紹介
- POSデータを活用し、売上アップを導く「分析力」とは?
- ストレージ問題の課題に対する解決方法
- 【日産自動車:BI導入事例】連結対象の36社からの情報を元に車種別損益管理を実現
- iPhoneをビジネスで活用する時代へ〜ビジネス&モバイルのミライ〜
- 企業コスト削減の傾向と対策 〜最新アプローチのトレンド〜
- HP LeftHandが仮想化環境の構築の効率を向上させた3社の事例集
- 中堅企業におけるテクノロジーと成長
企画特集
-
企業ITシステムの企画、構築、運用のイロハ
戦略的なITシステムのために、今考えるべきポイント -
大丈夫?あなたの会社のセキュリティ対策
中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティを考える -
電力に"ふた"をする独自の省エネ機能とは!?
動的に電力割り当ても可能なHPの最新鋭ブレードに迫る -
100万円で実現!中小企業の情報漏えい対策
中小企業の課題!?セキュリティ管理者不在でも大丈夫 -
グリー、3人のエンジニアが語る仕事への想い
連載第2話、元SIerに聞くリニューアルと開発の舞台裏 -
【最終警告】パンデミック対策特集
サービス品質を保証するためのリスクマネジメントとは -
マネジメントの「コラム」と「コネタ」
今日のキーパーソンは誰? -
高まるiSCSIストレージへの注目度
ストレージシステムの4つの課題とiSCSI導入のメリット -
―エン・ジャパン厳選求人☆毎週更新―
ハンゲームの社長が語る・人材とサービスの在り方 -
急増するオンライン犯罪への解決策!
オンラインサービス保護ソリューション -
容量制限によるメール消去は一切無し!
全てを保存するメールセキュリティSaaSが登場 -
J-SOX法制定により内部統制の整備が急務に
重要性高まるActive Directoryの課題と対処法を公開中
ZDNet Japan イベント
- 開催日:2009年11月26日(木)
- イベント一覧へ»
-
3.Composer概要
Intel Parallel Studioの一部であり、並列プログラムを実装するために役... -
4. Inspector概要
Intel Parallel Studioの一部であり、順次および並列プログラムでメモリ...
新着企業動向
-
モバイルデータデバイスとサービスの小売トレンド
データリソース -
ポイントは、『シンプル&セキュア』、限れたリソースで効果的にセキュリティを高める方法
ミラポイントジャパン -
事例のご紹介 Vol.14 | 情報インフラの全体最適化
EMCジャパン -
WisePointシリーズ
ファルコンシステムコンサルティング - 企業動向一覧へ»
