マイクロソフトが1月17日に発表したデザインツール「Microsoft Expression Studio」は、同社のウェブプラットフォーム製品「Microsoft Visual Studio」と連携して使えるウェブクリエーター向けのツールだ。
次期OSの「Windows Vista」に対応したデザインツール製品は現在このExpressionのみだとして、同製品の優位性を強調するマイクロソフト。この市場ではアドビ システムズが圧倒的なシェアを握っているが、同社 デベロッパービジネス本部 業務執行役員 本部長の市橋暢哉氏は、「3年以内にシェア40%を獲得して同市場ナンバーワンになる」と強気な姿勢を見せている。その市橋氏に、Expressionを開発するに至った背景や製品の強みなどをあらためて聞いた。
--なぜデザインツールをリリースするに至ったのか、その背景を教えてください。
マイクロソフトはこれまで、ウェブのプラットフォーム製品である「Microsoft Visual Studio」を提供しており、この分野で高いシェアを握っています。しかし、ウェブのフロントエンド向けの製品は、他社の製品が使われているのが現状です。ウェブの裏側を担う製品でシェアを持っているにもかかわらず、フロント部分は他社製品で作られているという状況を何とかしたかったのです。
また、Windows Vistaが登場すれば、「Windows Presentation Foundation」(WPF)テクノロジによってフロント部分の自由度が上がります。このテクノロジを十分生かすためにも、Vista対応のデザインツールが必要だったのです。
--Vista対応のツールが現在Expressionのみという点で同製品に強みがあるとのことでしたが、他社も同様の製品を発表するでしょうね。
もちろん出すでしょうし、他社が同様の動きをすることも歓迎します。ただ、マイクロソフトはVisual Studioで高いシェアがありますから、Visual Studioと連携できるフロント製であるExpressionは有利なのです。
--ただ、そうなるとExpressionの普及はVistaの普及にも左右されてしまうのではないでしょうか。
Expressionは、Vistaのみならず現行のWindows XPにも対応しています。Vistaの能力をフル活用できるという意味なのです。
とはいえ、やはり現在のPCは使いにくいと思っている人が多いのが現状です。ユーザーが実際にVistaを体験し、より便利で使いやすいと理解すれば、普及は一気に進むでしょう。XPの数倍の速さでVistaが普及すると見ているアナリストもいます。現在デザインツール市場ではマイクロソフトが他社を追いかけている状況ですが、Vistaの普及と共に徐々にトップに追いつき、3年後のシェア逆転を狙います。
--Expressionは、ブラウザを使わないウェブアプリケーションのデザインも可能だということですが、ブラウザを使わないウェブアプリケーションというものは必要なのでしょうか。
ブラウザの中でできることは限られていますからね。ブラウザの枠からアプリケーションを開放することで、よりよい価値が提供できます。例えばウェザーニューズの提供するガジェットでは3D表示の天気予報を見ることができますが、ユーザーがわざわざウェザーニューズのサイトに行かなくとも、ガジェットだけで天気予報がチェックできるようになります。
BtoBのアプリケーションにおいては、ブラウザのバージョンアップなどを気にすることなく同じアプリケーションを使い続けることができるという点でも、ウェブアプリケーションは利用価値があります。クライアント・サーバ環境でも提供できるアプリケーションはありますが、ウェブアプリケーションにすることで、クライアント管理の手間も省けるのです。