段階的導入によるスムーズな導入
エンタープライズOSSを企業が導入する場合、そのステップとしては、システム構築初期段階での検討・交渉で使う、情報系システムや社内システムで使う、基幹系システムで使う、という3段階が考えられます。特に2番目の、情報システムや社内システムで使うというステップは重要です。まずはこういった社内システムなどで導入し、OSSの利用によるコスト削減やリスクを自社における実績の観点から分析すべきでしょう。さらに各段階においても、まずは開発環境で導入する、システム化されていないところで導入する、ユーザー提供サービス以外で導入してからユーザー提供サービスでも利用する、といった形をとり、段階的に導入していくことをお勧めします。こういったステップを経ることで、自社の業務に与えるリスクを見極めつつ、効率化やコスト削減を実現していくことができます。
これらのステップを運用管理ソフトウェア導入にあてはめた場合、先ずは運用管理ソフトウェアを導入していない社内システムに導入したり、開発環境に導入する、といった段階的導入が考えられます。さらに機能の観点から当てはめると、最初の段階としてリソース使用状況などを見る性能管理機能だけを使用します。次の段階としてログの監視、情報収集といった監視機能を利用します。そして最後の段階として、ジョブ管理機能を利用した処理の自動化など、制御することに取り組むという形になります。このように業務システムの構成変更が不要なところから段階的に導入していくことをお勧めします。
こういった段階的な導入は、OSSの採用に対して機能面や安定面等に対して不安を持っている場合の解決策となります。またすでに商用製品を利用している場合の置き換え候補としたり、運用管理ソフトウェアそのものが必要かどうか検討する段階にある企業にとっても、納得しながら導入を進めることができる方法です。
OSSの持つ知的財産関連問題への対策
最後に、OSSと知的財産権関連の問題についてですが、この問題はOSS固有のものではなくソフトウェアやシステム全てにいえることと考えています。特許の問題に関してはOSSに限らず商用製品でも現実に起きています。OSSで特許の問題が発生し速やかに対応がなされた例もあります。また、商標に関しては他社の権利を侵害しないように配慮し、命名した時点で速やかに商標権を取得するべきです。ただこれは新規に名前を公開するうえでの注意点であり、NTTデータは「Hinemos」を商標登録して対応しています。著作権については、先ずはライセンスを確認すべきです。また自社がOSSを提供するときは、社外でプログラムの改変や追加プログラムの作成がなされたときの対応を決めておく必要があります。このように、事前の対策を行えばOSSであっても知的財産権関連の問題は解決できるはずです。