北米に浸透するOSS需要
OSS(Open Source Software)の開発には世界中のベンダーや技術者が自発的に参加しており、優れたソフトウェアは利用が進むことで更なる改良が重ねられています。システム構築に良く利用される「定番」のOSSについては、組織的かつ継続的な技術開発に加えて、ロードマップや商用目的で使用するためのサポートサービスも提供されている状況です。

NEC
OSS推進センター・グループマネージャー
高橋 千恵子氏
北米における2005年度の統計によると、大手メーカーを含む米国企業の60〜70%がOSSを利用しており、ベンチャーキャピタリストの投資拡大や、OSSに関するISV(Independent Software Vendor)市場の出現といった、新たなビジネス環境を作り出すまでに至っています。これによりソフトウェア使用許諾収入が減少しているため、今後は“モノを売る”というビジネスモデルから、サービスベースの収入モデルに変遷していくと予想されるのです。
また業界動向としては、OSSの急増がソフトウェア選択肢を広げることによるソフトウェア開発自体の複雑化、既にビジネスを確立しているプレーヤーからのサービス提供物の拡大、ソフトウェア・スタックや知的財産立証、ITプロフェッショナル・サービスといった新興専業OSSサービス会社の出現などが挙げられます。
現在ではLinux+OSSミドルウェアからOSSアプリケーションへの拡大や、業務アプリケーションまでを含めたOSSスタックSuite化の進展が市場動向に表れはじめています。また、ソフトウェアビジネスを築いた人々とOSSコミュニティが結びつつあり、OSSへのシフトが急激に加速する可能性も出てきました。OSS需要が一般化された市場ではコードを読める能力が大前提となるため、今後は日本においてもOSS文化に対応できるプログラマーの育成が必要になるといえるでしょう。
OSSミドルウェアサポートサービスを強化
一方、国内におけるLinuxビジネス推移に目を向けると、エンタープライズLinux市場は年率25%の勢いで急激に拡大、SIサービス/サポート/プラットフォームの各領域で大幅に増加しています。また、Linux/OSSの導入状況も、現在では官公庁や公共などの業種に限らず利用されている傾向があります。そこで、NECグループでは1800サイトを越える多くの導入実績とノウハウを活かし、基幹業務のシステム構築事例を拡大している状況です。
このような背景から、NECでは「OSSミドルウェアサポートサービス」の強化を実施しました。OSSミドルウェアサポートサービスは2004年に発表したものですが、基幹業務での利用拡大に備えるため、対象となるOSSを追加し、21種類の構築サービスと11種類の保守サポートサービスを提供しています。従来のLinuxに加えてWindows/Solaris/HP-UXをサポート対象OSとして提供するほか、JBossやSamba+OpenLDAPの教育サービスを充実させています。
さらに、JavaがOSSミドルウェアによるシステム構築の基盤技術と位置付け、2006年9月末よりJavaサポート提供を開始する予定です。まずは、技術に関する問い合わせへの対応や障害事例・解決策情報の提供を行う「基本レベル」からのサポート開始ですが、2006年末から「アドバンストレベル」、2007年上旬からは「クリティカルレベル」へと発展、充実のサポートラインアップでシステムの安定稼動に貢献していく予定です。