OSS初の統合運用管理ツール「Hinemos」
現在、企業システムの運用管理に注目が集まっており、関連セミナーも多く開催されています。その大半は商用製品を利用して運用管理をするというもので、OSSは管理対象として扱われています。NTTデータではそれを一歩すすめ、OSSで運用管理を行うことを提案したいと思います。

NTTデータ
基盤システム事業本部
オープンソース開発センタ
技術開発担当
西川 治氏
OSSで運用管理を行う場合でも、管理対象はOSSだけでなく商用製品を含むことができます。企業のシステム全体の統合運用管理が可能なOSSとして、NTTデータでは「Hinemos」を提供します。「Hinemos」は、リポジトリ機能、監視管理機能、性能管理機能、ジョブ管理機能、一括制御機能を持っています。これらの機能は、既存のOSSで単独提供されているものもあります。しかしそれらのOSSを利用した場合、機能ごとに個別にOSSを取り入れる手間がかかります。この点、「Hinemos」は必要となる機能を統合的に提供するため、個別導入の手間や、個別の操作に慣れる必要などがありません。既存OSSで提供されていない機能も提供されます。さらに、設定やデータの参照などがリッチクライアントの画面で行えるため、プログラマなど熟練した専任スタッフを用意できない場合でも導入しやすいという特徴があります。
開発にあたっては、Eclipse・JBoss・PostgreSQL・OpenLDAPなど複数の既存OSSを活用し開発効率を向上させています。インストールパッケージを用意することで導入を容易にしています。提供は「SourceForge.jp」(http://sourceforge.jp/projects/hinemos/)において行っており、PDF形式のマニュアルや、Flash形式でのオフラインデモも提供しています。メーリングリストもありますので技術的な質問などお寄せください。また、開発も皆さんと協力して進めていきたいと考えております。
エンタープライズOSS〜企業による企業用途のための企業が使えるレベルのOSS
私たちは「Hinemos」をエンタープライズOSSだと認識しています。エンタープライズOSSには、3つの視点があると考えられます。第1に、企業で使えるレベルのOSSという視点です。このレベルには、機能、品質、サポート等が含まれます。第2に、企業の業務用途向けとして作られているOSSという視点です。この2つの視点をあわせて考えた場合、OSSは大きく個人用途でありサポート等のレベルが低いものと、個人用途ではあるがサポート等のレベルが高いもの、業務用途ではあるがサポート等のレベルが低いものと、業務用途でありサポート等のレベルが高いものという4つの分野に分類することができます。「Hinemos」は、業務用途でありサポート等のレベルが高い分野に位置することを目標としています。
第3の視点は、企業が提供するOSSという視点です。OSSの提供には、既存OSSの開発に参加する方法と、OSSを新たに開発し提供する方法があります。全ての企業は、優れたOSSを提供することで自社サービスと連携させたビジネスの展開やソリューション提供時のコスト削減に利用するなど、OSSを顧客やビジネスパートナ獲得の手段として活用することができます。NTTデータは既存OSSへの参加も「Hinemos」などのOSSの提供もしていますが、SIerでない企業も、自社ビジネスで提供するサービスの道具としてOSSを提供する時代に入ったと考えています。
NTTデータの提供する統合運用管理OSS「Hinemos」は、実際に運用管理の商用製品を利用してきたユーザーとしての視点と、業務システムを開発提供してきた開発側としての視点の双方をもって作られたものです。当初、IPAの受託開発としてスタートしましたが、その後も開発を続け、2006年3月末にはVer.2.0を発表しました。現在も開発は継続されており、成長途上の部分もありますが先に述べた第1、第2の視点においては機能、品質、サポートも充実し、「企業用途向けでありサポート等の品質が高いもの」の分類に入りつつあると認識しています。