2005年10月にOracleがInnobaseを買収した際、MySQLの社員と顧客は衝撃を受け、不安を感じた。Innobaseは小規模ではあるが、オープンソースデータベースである「MySQL」の重要なコンポーネントを提供している企業だったからだ。
だがMySQLは現在、そうした不安を和らげるための対策に取り組んでいる。
データベース分野で短期間のうちに頭角を現したMySQLの幹部によると、同社は、Oracleが取得した技術の代替となり得るトランザクションストレージエンジンの独自開発を始めているという。
MySQLは、Oracleが引き継いだInnobaseとの契約も更新している。同契約の有効期間は10年未満だが、その間は、OracleがInnobaseの「InnoDB」ストレージエンジンを買収以前と同様の条件でアップデートしていくことになると、MySQLの最高経営責任者(CEO)であるMarten Mickos氏は話している。
Mickos氏は米国時間4月5日、「Oracleはわれわれに、以前と同様にビジネスを続け、MySQLの業務に支障は来さないことを約束してくれた。Oracleがわれわれの請負業者となるのは、むしろ好ましいことだ」と、CNET News.comに対して語った。
MySQLデータベースは、InnoDBなどのほかのストレージエンジンと連係できるようになっている。これまでのMySQLは、サードパーティが開発したエンジンに依存し、ほかのデータベースを同梱する方針を取っていた。
一方、OracleがInnoDBを買収してビジネス指向トランザクションエンジンを手に入れたことから、同社の思惑をあれこれ憶測する声が飛び交うようになった。
Oracleのこうした動きがMySQLの市場における推進力を損なうのではないか、あるいは人気の高いMySQL関連製品が消滅するのではないかという懸念が生まれたのである。
RedMonkのアナリストであるStephen O'Grady氏は、OracleがInnobaseやSleepycat Softwareを含む、MySQLと連係するオープンソースデータベースを取得したことへの直接的な対策として、MySQLはストレージエンジンの独自開発に踏み切ったと指摘している。
「こうした買収が威嚇射撃となる力を持っており、顧客に混乱をもたらすおそれがあることを考えると、MySQLの今回の決定は、同技術をコントロールしていくうえで最も長期的な効果のある最善の選択だったと言えるだろう」(O'Grady氏)
Innobaseは従業員数がわずか5人という小さな会社で、Oracleほどの大企業からすればその収益はたかがしれている。
しかし、OracleがInnobaseを手中に収めたことで、ユーザーがどのようにMySQLを利用しているのかという貴重な情報が同社に流れるようになり、顧客にとってはそれが問題になるかもしれないと、O'Grady氏は話している。
データベース大手のOracleと比べると、MySQLは非常に小規模な企業で、2005年の売上も4000万ドルに満たなかった。しかし、同社が提供しているオープンソースデータベースは、開発者に最も人気の高い製品であることが、市場調査会社Evans Dataの調べで明らかになっている。
一般的に言って、オープンソースのデータベースはOracleの主力データベース製品ほどは洗練されていないが、MySQLやIngres、EnterpriseDBといったオープンソース企業とOracleの間の競争は激化しつつある。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ