NECは4月25日、ディスクを搭載しないクライアントから企業情報システムを利用するシンクライアント環境を構築するSIサービス「クライアント統合ソリューション」の受注を始めた。価格は、クライアント数100台規模で2000万円から。SIサービスで使うミドルウエアとクライアント機は6月末から順次出荷する。
同SIサービスは、シンクライアント環境を構築するサービス。シンクライアントは、ディスクを備えないクライアントであっても、ディスクを備えるPCと同等の仕事ができるようにしたシステム構成を指す。シンクライアントの代表的な目的は、ソフト配布やインベントリ管理といったクライアント管理にかかる運用コストを削減することや、クライアントPCから情報が漏えいする事故を防止するセキュリティ対策などである。
同SIサービスでは主に3種類のシステム構築例を想定する。価格が安い順に、(1)「仮想PC方式」、(2)「画面転送方式」、(3)「ネットブート方式」、である。仮想PC方式と画面転送方式の2つはともに、サーバ側でクライアントPCのOSと業務アプリケーションを動作させる。エンドユーザーは専用端末や専用端末ソフトを使ってサーバ上で動作するOSを遠隔操作する。サーバと専用端末の間は画面情報のやり取りをする。
一方のネットブート方式は、クライアントPC上でOSと業務アプリケーションを動作させる形態だ。クライアントPCはローカルディスクを搭載しないが、電源起動時にサーバ上にあるディスクを遠隔マウントして、あたかもローカルディスクから起動するかのようにサーバのディスクからOSを起動する。
3方式の詳細は以下の通り。
(1)画面情報を転送する方式の1つである仮想PC方式は、サーバ側ミドルウェアにNECが開発したPC仮想化ソフト「VirtualPCCenter」を用いる。画面情報プロトコルは、Windows XPの画面情報を転送してOSを遠隔操作する標準プロトコルであるRDP(Remote Desktop Protocol)を標準で使う。エンドユーザーは、RDPを使えるWindows機や画面情報専用端末を使う。
PC仮想化ソフトのVirtualPCCenterは、サーバ上に仮想PCを作り、CPU処理能力など仮想PCが消費するシステム資源を管理するソフトである。1台のサーバ上で複数の仮想PCを動作させられるほか、1つの仮想PCを複数のサーバ間で動的に移動させる運用が可能である。
ただし、サーバ仮想化のように複数サーバの資源を同時に使って負荷を分散するのではなく、負荷が高くなったサーバから負荷の低いサーバへ仮想PCを移動させて負荷を均等化する。仮想PCのサーバ間での移動は、仮想PCの使用中に自動的に実施可能なため、エンドユーザーは自分が使っているPC環境がサーバ間で移動したことに気付くことはない。
(2)画面情報を転送するもう1つの方法である画面転送方式は、サーバ側ミドルウェアに米Citrix Systemsが開発した画面操作ソフト「MetaFrame」を用いる。MetaFrameが使う画面情報プロトコルはICA(Independent Computing Architecture)。エンドユーザーは、画面情報専用端末や各種OSなど、ICAクライアントが動作する環境からMetaFrameサーバ上のOSを遠隔操作する。ICAクライアントはWindows版のほか、Javaアプレット版なども存在し、各種の環境下で動作する。
MetaFrameの最大の特徴は、稼動環境が豊富である点と、必要とするネットワーク帯域が数10Kバイト程度と小さい点である。帯域を必要としない点は特に重要で、遠隔拠点を複数抱える企業が、本社のデータセンターにシステム資源を集約し、遠隔拠点を安価なネットワーク回線でつなぐといった事例で実績がある。なお、元々、Windows NTの画面情報操作機能は米Citrix Systemsが技術供与したものである。
画面転送方式ではまた、MetaFrameによるWindows環境の画面情報に加え、UnixやLinux環境向けには米Sun Microsystemsが出荷する画面情報端末システム「Sun Ray」の導入も実施する。
(3)クライアント機がサーバ上にあるディスクをローカルストレージであるかのように使うネットブート方式は、サーバ側に設置するミドルウェアとして、組み込みソフト技術などを提供する米Ardenceが開発したOSブート制御ソフト「Ardence」を用いる。クライアントPC側には、PC用のBIOSソフトウェアやネットワーク・カード(NIC)がPXE(Pre-boot eXecution Environment)機能を備えていれば、ほかに何の仕掛けも必要ない。単純にディスクを外したPCをクライアントとして利用できる。
クライアントの電源を入れてから動作するまでの流れは以下の通り。PXE対応のNICがPXEのブート処理を実行する。DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)経由でIPアドレスなどの情報を取得し、TFTP(Trivial File Transfer Protocol)経由でArdenceのブート処理をダウンロードする。ブート処理では、ディスクI/O割り込みであるINT13 ExtentionをArdenceのサーバにリダイレクトするよう設定する。これにより、ローカルディスクと変わりなくArdenceのサーバ上にあるディスクをCドライブと認識し、OSを起動できるようになる。
SIサービスで用いるミドルウェアとクライアント機の価格と出荷時期は以下の通り。
新たに出荷するミドルウェア2種の出荷時期は、以下の通り。仮想PC方式のためにNECが開発したVirtualPCCenterは8月末に出荷する。ネットブート方式で用いるArdenceは6月末に出荷する。いずれも価格は未定である。なお、画面情報端末ソフトのMetaFrameはすでにライセンスの販売を実施しており、各種SIサービスで利用中である。
NECはまた、ミドルウェアに加えて、シンクライアントとして使うためのハードウェア2種類を用意した。1つは、画面情報の表示と操作に特化した専用機「TC-Station」である。7月末に5万5000円で出荷する。TC-Stationは、仮想PC方式(RDP)や画面転送方式(ICA)の専用端末として使える。もう1つはディスクを搭載しないクライアントPC「Express5800/51Lc」を6月末出荷する。価格はCPUにCeleron Dを搭載したモデルが6万9800円で、Pentium 4搭載機が8万9800円である。ネットブート方式で使える。
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