IBMが、同社のPowerプロセッサの普及を進め、Intelチップに対する競争力を強化するために新たな対策を講じようとしている。同社はApple Computerから公の場で三行半を突きつけられたばかりだ。
IBMは米国時間8日、Powerプロセッサのユーザーコンソーシアムに新たに11社のメンバーが加わったことを発表した。同社はまた、「Cell」プロセッサベース搭載コンピュータを容易に構築するための仕様とソフトウェアも公開した。Cellは、近い将来登場するPowerベースのプロセッサで、IBM、東芝、ソニーの3社が共同開発したもの。さらにIBMは、医療画像分野や防衛分野の顧客を新たに獲得したことを、Power.orgコンソーシアム会長のNigel Beckが明らかにした。
IBMは、自社のウェブサイトに新しいコーナーを設け、そこでプロセッサ市場で最も成長が著しいのはPCではなく、Powerが採用されているサーバ、ゲーム機、そして携帯端末だと主張している。同社は、8日に米証券取引委員会(SEC)に提出した書類のなかで同サイトの情報を明らかにした。
Appleはこれまで、Powerプロセッサを採用する最も有名な顧客のひとつで、1994年以来IBMとMotorola(現在はFreescale Semiconductorとして分離)からPowerPCチップを調達してきた。だが、Appleが長年貶してきていたIntelのチップに2006年から移行することを発表して、状況が一変してしまった。
しかしIBMは、Appleの離脱にショックを受けていないどころか、Powerに関する計画がいかに野心的であるかを宣言することで、Intelと決着をつける準備を整えた。同社のウェブサイトには、「オープンなチップ技術を普及させ、Power Architectureを圧倒的なシェアを持つ業界標準として確立することがIBMの戦略である」と記されている。
Illuminataのアナリスト、Gordon Haffによると、Appleの離脱は、同グループと関連する「Power Everywhere」というマーケティングキャンペーンのイメージに汚点を残すという。「これで多少輝きを失うことは確かだ」(Haff)
一方で、Powerのイメージを輝かせる動きもある。Cellチップの登場は、Apple離脱の影響を打ち消すことになるはずだ。Pund-ITのアナリスト、Charles Kingは調査レポートのなかで、「Cellのハードウェアとソフトウェアの仕様を公開すれば、Power.orgに関心を持つ人間が増えると考えている」と語った。
Linux-on-Power連合への打撃
Appleの動きが、IBMのPowerプロセッサ事業に大きな打撃を与えることはないが、同社のビジネスに直接影響を及ぼす部分はほかにもいくつかある。同社は、PowerPCおよびPower5ベースのサーバでLinuxを普及させようとしているが、Appleのチップ切り替えにより、これに取り組むTerra Soft SolutionsとFedora PowerPCプロジェクトが窮地に陥る。両者はいずれもMacを使ってLinux for Powerベースのコンピュータ開発に取り組んでいる。
Terra Softでは、Yellow Dog Linuxと同OSをインストールしたMacを販売しているが、同社によるとAppleのプロセッサ切り替えを乗り切るための選択肢はいくつかあるという。同社CEOのKai Staatsによると、同社には製品をIntelチップに対応させる計画はなく、今後はIBMのJS20ブレードサーバなどで利用できる高性能コンピューティングクラスタ向けのY-HPC版Linuxを販売していくという。さらに同氏は「Power Architectureの多様性を拡大する方向ですでに作業が進んでいる」と付け加えた。