Advanced Micro Devices(AMD)が発売を予定している「AMD FireStream 9170」プロセッサは、研究者や科学者が多大な費用をかけずにすぐれた処理能力を利用できる手段となるかもしれない。
AMDは、米国時間11月10日から開催されるスーパーコンピュータの展示会「SC07」でFireStream 9170を展示する予定であり、11月初め、同社幹部が「ストリームコンピューティング」の展望を語った。FireStream 9170は、高い処理能力を必要とするコンピューティングアプリケーションが、グラフィックプロセッサの持つすぐれた並列処理機能を利用できるように設計されている。
プロセッサの世界ではここ数年、並列処理が大きなトレンドとなっている。並列処理とは、すべてのデータを単一の経路にできるだけ速く流して演算処理しようとするのではなく、経路を複数にして、データが複数の出口に流れるようにするというすぐれた方法だ。こうすれば、プロセッサがより低速で動作できるようになるため、発熱も抑えられる。
グラフィックプロセッシングユニット(GPU)は、すでに何年もこの方式を採用している。NVIDIAやAMDのATI部門が発売している処理能力の高い単体グラフィックプロセッサでは、かなり前から並列処理を考慮した設計がなされている。実験施設や研究機関のユーザーの中には、このような処理能力を積極的に利用したがる人々がいるのは確かだ。ただし、グラフィックプロセッサには特別なプログラミング技術が必要となる。
AMDは、プログラミングが簡単なPC用プロセッサと処理能力がすぐれたグラフィックプロセッサとの間を、FireStream 9170によって橋渡ししようとしている。AMDの技術担当バイスプレジデントを務めるRobert Feldstein氏は、FireStream 9170について、通常出荷されるプロセッサに積んでいるよりはるかに多くのメモリを積んだ、高性能のグラフィックプロセッサとして考えてほしいと語った。
性能は間違いないだろう。FireStream 9170は、本質的にはATIが開発した高性能単体グラフィックプロセッサの1つで、大容量のメモリと、単精度より明らかにすぐれた倍精度の浮動小数点演算ユニットを内蔵した豪華な構成だ。現在、最も高性能のATI製グラフィックプロセッサでもメモリは512MBだが、FireStream 9170には2GBのメモリが搭載される。
ただし、プログラミングの点ではまだ多少厄介な点がある。プログラミングにはソフトウェア開発ツールが必要となるだろうし、一部のコードを移植するだけにしてFireStream 9170で動作するようにしたいと誰でも考えるだろう。
「数千行を超えるレガシーコードを丸ごと移植しようとするような研究者はいない。コードにはGPU上で快適に動作すると(研究者が)わかっている特定のアルゴリズムがある。(パフォーマンスを)1桁上げるといったことのためにコードを変更する心配はしなくていい」と、AMDのストリームコンピューティング担当ディレクター、Patricia Harrell氏は語った。
FireStream 9170の発売は早くても2008年の第1四半期となる。これは、AMDがホリデーシーズンに向け、一般ユーザーが利用できるPC向けの単体グラフィックプロセッサを優先しているためだ。価格は1999ドルを予定している。一見高価なようだが、このプロセッサは既存のワークステーションやサーバに追加することで、必要とするパフォーマンスの大幅な向上を実現できる。わずか数行のコードのためだけに高価なサーバを購入する必要はない。
最終的に、AMDはこうした技術をPCやサーバのプロセッサに直接組み込みたいと考えている。同社はすでに、「Fusion」プロジェクトの一環として、グラフィックプロセッサとPC用プロセッサを統合する計画を打ち出している。ただし、同社の強力なストリームコンピューティング技術をPC用プロセッサに統合するための具体的スケジュールは、まだ明らかにされていない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ