PC業界とモバイルコンピューティング業界の各企業が集まって、グラフィックスプロセッサ上のコンピューティング標準を策定しようとしている。両業界はまず、Appleの「OpenCL」技術から評価を開始する。
すでに「OpenGL」などの有名な標準を管理している業界コンソーシアムのKhronos Groupは米国時間6月16日、Compute Working Groupの発足を発表した。ソフトウェア開発者がグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)の性能を十分に引き出せるような業界標準を策定するのが目的だという。
Compute Working Groupの設立メンバーには、馴染みのある会社名が数多く並んでおり、プロセッサ業界のAMD、NVIDIA、Intel、モバイル業界のARM、Motorola、Samsung、さらにTexas Instruments(TI)やAppleなどが参加している。
GPUはおそらく、次々と続編が登場するPC向けシューティングゲームでリアルな3Dグラフィックスのレンダリングを受け持つことで最もよく知られるが、新たな役割も担いつつある。「Windows Vista」をはじめとする最近のOSは、PCに対してより高いグラフィックス性能を要求する傾向にあり、科学コミュニティのプログラマーたちも、GPUの能力を活用してある種のアプリケーションを実行することに興味を示している。
GPUは、特定のタスクを受け持って、それをいくつかに細分化し、複数のプロセッサコアを使って超高速で処理できるという長所がある。しかし、一般ユーザーのPCやMacでさまざまなソフトウェアを並行処理する場合には、この長所は生かせない。これまでは一般に、さまざまなソフトウェアを並行処理する際に複数のプロセッサコアを活用できるようなプログラミングがなされていなかったからだ。
こうした並行処理を実現するため、NVIDIAやAMD、Intelなどの企業はいずれも、科学コンピューティング業界以外のソフトウェア開発者でもGPUの独特な長所を利用しやすくなるよう、技術開発に取り組んできた。
しかし、この業界で繰り返されてきたように、この技術についても各社が独自の実装形式を開発してきた。NVIDIAは「CUDA」を、AMDは「Stream Computing」をそれぞれ開発しており、Intelの「Larrabee」プロジェクトはまだ実際にはリリースされていない。
Appleは2008年6月第2週の「Worldwide Developers Conference」(WWDC)で、次期「Mac OS X」(開発コード名「Snow Leopard」)を発表した際、この新OSがOpenCLと呼ばれる技術を搭載し、ソフトウェア開発者がグラフィックスプロセッサに容易にアクセスできるようにする、と述べた。Khronos GroupはOpenCLを標準の候補として評価する予定だが、たとえ標準が策定されたとしても、すべての企業がそれに従うという保証はない。
その理由は、Compute Working Groupの設立メンバーに入っていない大手企業、つまりMicrosoftの存在だ。もしMicrosoftが、次期「Windows」および「Windows Mobile」の実装で、Khronos Groupが策定した標準を選ばなかった場合、チップメーカー各社がMicrosoftと別の道を進むことは困難になるだろう。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ