ヤフーとあおぞら銀行は1月20日、インターネットバンキング業務を開始することで基本合意に達したと発表した。ヤフーの代表取締役である井上雅博氏は「双方が有する銀行とネットのノウハウや人材を相互に活用していくことで、日本のインターネット専業銀行としてトップを目指す」と語った。
インターネット関連の大手企業では、楽天とライブドアが証券業に参入するなど金融業界へ進出する動きがある。特にヤフーをライバル視するライブドアは、将来的に銀行業へ参入したい意向を公言しているが、先を越された形になった。
今回合意したネットバンキング業務は、あおぞら銀行の子会社であるあおぞら信託銀行とヤフーが共同で行うが、同時にヤフーは同信託銀行に資本参加する。あおぞら信託銀行が発行する普通株式と普通株式に転換できる無議決権株式をヤフーが取得する。無議決権株式をすべて普通株式に転換すれば、ヤフーはあおぞら信託銀行の議決権の66.6%を握り(転換しない場合の議決権は14.9%)、連結対象子会社として傘下に収めることとなる。
現時点では基本合意に至っただけで、普通株にすべて転換する正式な決断や時期はいまのところ未定だ。また、議決権の66.6%を握ってヤフーが主要株主になった場合は金融庁から認可を受けなければならない。
あおぞら銀行はネットバンキングへの参入を目指してこれまで検討を続けてきたが、「後発ながら質の高いサービスを提供するためには、ネットのトップ企業であるヤフーと組むことがベストだと判断した」(広報)と言う。
あおぞら銀行とヤフーは、ネットオークション代金の決済にクレジットカードを利用できる「Yahoo! かんたん決済」(旧Yahoo! ペイメント)を運営するネットトラスト社(ヤフーが60%出資)の事業において、2002年8月ごろから協力関係にあったそうだ。また、あおぞら銀行には以前ソフトバンクが出資していたことからも近しい関係にあった。共同でネットバンキング業務を行うことについては、昨年からより具体的に話し合われてきた。2003年にソフトバンクが保有株式のすべてを米投資ファンドのサーベラスに売却し、あおぞら銀行の株主ではなくなったあとも、ヤフーとは良好な関係を続けてきたと言えるだろう。
この一方で、ヤフーがみずからネット銀行業務に乗り出すのはなぜだろうか。広報では「ヤフーはインターネットユーザーが便利と考えて満足してもらえるサービスは、すべて手がけようとしている会社。今回の場合、そのためには資本参加、あるいは傘下に収めてみずから取り組むのがベストだと判断した」と答えている。
今後は、2005年3月末までに最終合意書を締結して詳細な内容を決定し、2006年前半にはインターネットバンキング業務を開始する予定になっている。なお、今後のあおぞら信託銀行はインターネットを活用した個人向け決済サービスと消費者向けローンが主な業務になるが、既存の信託業務については従来同様の業務を継続する。