2009年1月20日、Barack Obama氏が米国第44代大統領に就任した。この歴史的な瞬間を見守っていたのは、ワシントンの連邦議事堂前に集まった200万人を超える大観衆だけではない。世界中のきわめて大勢の人々もまた、インターネット越しに生中継の動画配信映像を、固唾を飲んで見守っていたのだ。
コンテンツ配信網(CDN)サービス最大手のアカマイ日本法人代表取締役社長である小俣修一氏によると、歴史的な出来事となったこの就任演説の模様は「歴史的なインターネットストリーミング配信量も記録した」とのこと。従来、どんなに配信量の多かった動画配信でもせいぜい1Tbps程度のデータ配信量だったが、今回は2Tbpsを超えたのだ。
これまでもインターネット動画配信は行われてきたが、その多くは専用プレイヤーを用いてPCディスプレイ中のほんの小さな画面に映し出していたに過ぎない。一方、TVでは高精細度(HD)映像は当たり前になりつつある。「インターネット配信でもHD映像をフルスクリーンで」という環境が本格化するのは、2009年だと小俣氏は言う。
HD映像のストリーミング配信にまつわる3つの課題
インターネットでHD映像をストレスなくフルスクリーンで見られるようにするには、3つの要件の克服が必要だ。
その1つがHD映像コンテンツそのものの管理やシンジケーションコントロールなどの新たな機能の実装だ。HD映像はお金の取れる素材であり、それを用いてビジネスを成立させるにはペーパービューや広告モデルなどの仕組みがいる。それには、新たな管理機能が必要となるのだ。
2つ目は、より使いやすく、誰もが簡単に操作できる視聴環境の提供だ。多くの人々が映像を見られるようにするには、PC操作に慣れていない人でも簡単に扱えなければならない。
そして3つ目が、TVと同じ感覚で見られるレスポンスと品質。現状の動画配信の多くは、映像を切り替えるたびにローディングが行われ開始まで待たされる。また、帯域が確保できずしばしばコマ送り映像になる。高画質を維持したまま、TVでチャンネルを切り替えるような高レスポンスも必要となる。