Googleは、クラウドコンピューティングの有効性を信じて疑わない。クラウドコンピューティングとは、PCではなくインターネットにあるコンピュータアプリケーションやデータを利用する形態を指す。しかし、ネットワークがアクセス不能に陥る場合もある。現在のGmailのようなウェブアプリケーションは、ネットワークにアクセスできなければ、実質的に利用不可能になってしまう。
しかし、オフラインでも利用可能になれば、その問題は回避できる。典型例としては、多忙な企業幹部が飛行機で移動中に利用する場合だ。Googleは、Google Appsなどのサービスを企業顧客に訴求するという野望を抱いているが、Gmailがオフラインでも利用可能になれば、一歩前進することになる。GmailのGoogle Appsの一部に含まれている。
GmailのプロダクトマネージャーであるTodd Jackson氏は、「企業からこのような機能を望む声が高まっている」と語る。
企業顧客にメールサービスを売り込むということは、一般に、メール製品として圧倒的なシェアを誇るMicrosoftのサーバソフトウェア「Exchange」やPC向けソフトウェア「Outlook」からの移行を企業に求めることを意味する。GoogleとMicrosoftはそれぞれ違う路線を歩み出したが、両社はかつてないほど近いライバル関係にある。また、それぞれ莫大な利益を生み出す事業を抱え、他の市場に進出するための資金は潤沢だ。
さらに、Google Appsユーザーは「間もなく」Gmail以外にもう1つの主要アプリケーションもオフラインで利用可能になる。それは、「Google Calendar」である。ただ、当初は新たなエントリは作成できない。Googleによると、企業や組織の管理者が「New Features」オプションを有効にすることで、その組織の従業員がGoogle Calendarにアクセス可能になるという。
たしかに、これらの新機能が利用可能になれば、企業顧客はGmailにより魅力を感じるだろう。しかし、多くの企業にとってより大きな問題は、Gmailが依然としてベータ版であるということだ、と調査会社GartnerのアナリストであるDavid Smith氏は指摘する。
Smith氏は、「企業にとって、それは最大の障害の1つだ」とし、さらに「どんなに性能が優れていても、ベンダーがベータ版と呼ぶ製品を実環境で利用する企業を見つけるのは容易ではない」と語った。Googleは、Google Appsのサービスレベル契約で99.9%の稼働率を公約している。Google Appsには、Gmail、Google Calendar、Google Docsなどのアプリケーションが含まれている。